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7月3日 聖淮戦XV

 明日、キャプテンの沢田は夏の抽選会に行く。もし、ここで負けたらもう終わり。最後の夏が始まろうとしていた。


 ー6月19日ー


 新しくグラウンドに入った山岸、中川、若井、相田は走り回っていた。後半25分くらいまでずっとベンチにいたことの鬱憤をはらすようだった。それに、刺激されるように他の選手たちも動いていた。一番最初から試合に出続けているのは、もう俺を含めた4人しか残っていなかった。山岸は、サイドを行き来しながら、ボールを中に入れていた。ここで1点決めたら、まだやれると思う。ただ、ここで点がとれないと厳しさはさらに増す。後半35分。そろそろ、チャンスがくる。俺は、そう信じた。すると、中央にいいボールが入った。

 二つのユニフォームがひしめく中、ボールは中盤にいる中沢がさばく。そして、すぐさま斜め前にいる山﨑へとボールは転がっていく。山﨑は、長い黒髪がなびく。山﨑は、周囲を見渡しながら、どうするか考えていた。近くにパスを受け取れる選手はいない。もっと真ん中まで入ってこないと。すると淮南高校のディフェンダーの選手が迫ってくる。山﨑は、そのディフェンスを振り切り、真ん中へと入ってくる。俺のところにくる。なんとなくそう思った。山﨑に合わせて、俺も位置取りを変える。俺の方に向かってボールが転がってくる。ディフェンダーの隙を突いて、前に出た。ここからなら、シュートが打てる。しかし、シュートが入る確率は、かなり少ないのも事実。アイツは、どこにいるんだ。ボールをもちながら、視線を変える。あんなところにいるじゃねぇか。

 ボールが俺の足元から離れていく。ボールの向かう先は、フリーになった宝来だった。PK戦に負けてから、自信もやる気も全て吸い取られた。自分がやってきた今までの努力がなんだったのかが問いたくなるような気分にさせられた。ボールをもらった宝来は、左足で強く蹴る。ボールはあっという間にゴールポストへと向かっていくのだった。ゴールキーパーは、まったく動かない。まるで、何が起きたかわからないような一瞬のシュート。決めて当然と言わんばかりのシュートだった。宝来に不満をもつ者は多い。それでも、みんなが宝来のもとへと駆け寄る。ベンチからは、沢田や工藤たちが。宝来からしたら、当たり前のゴールなのかもしれないけど、俺たちにとっては貴重な3点目だった。よし、これでいける。俺は思ったよりも冷静だ。ベンチを見ると、残り2人。ラスト10分ほど。歓喜の姿を見ながら、最後に二人を投入することに決めたのだった。

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