6月24日 聖淮戦Ⅵ
俺は、相田とこれからのサッカー部について語り合っていた。このままじゃいけないと。もっとやれる。そのために、もっと練習しないとと伝えたのだった。
ー6月19日ー
ゴールこそ難しいが、宝来のドリブルから明らかに流れが変わった。いける、まだいける。そんなことを考えていると、中沢が駆け寄ってきた。
中沢「いいのか?まだ誰も変えなくて?」
俺 「ああ。お前と相田は、おそらく最後まで変えないから、頼むぞ」
中沢「なんだよ?それ」
俺と中沢はそれぞれ散り、相手の選手をマークする。たしかに、選手を変えるのは大事。けど、それ以上に勝たないと。そのためには、みんなの力が必要だ。とれる!相手がパスを上手くおさめることができず、こぼれたボールをとりにいく。相手選手と交錯しながら、ボールを離さない。唐沢!!!大声を出したのは、工藤だった。すぐさま工藤にボールを渡した。すると、工藤は、すぐにボールを前に進んでいく。俺も工藤に合わせるように走り出す。
工藤は、ボールを中沢に一度渡す。ワンタッチで再び工藤に回ってくる。アイツ、どうする気だ?相手選手の中に割って入るように突き進む。一気にグラウンドには熱気が広がっていく。聖徳高校の選手たちから大きな声が聞こえてくる。いける、ここからならアイツもうてる。みんな息を飲むように工藤を見ていた。
俺がエースと言わんばかり。工藤の足から放たれたのは強烈なシュートだった。空気を切り裂いてゴールへと向かっていく。なんだ、あの速さは。淮南高校のゴールキーパー島崎は必死に体を伸ばすが、さっきの沢田と一緒というわけにはいかなかった。
サッカーボールは彼の指先をかすめゴールネットへと突き刺さったのだった。しゃあー!!!!!!両手を挙げ、喜ぶ姿が。俺は、慌てて工藤のもとへ走り出した。グラウンドは一気に歓喜の渦が。中沢、辰巳、相田、富山などみんなが工藤のもとへ。俺も工藤の頭を叩いていく。よかった。コイツを出して。歓喜に沸くチームメイトの輪の中は大盛り上がりを見していた。工藤のシュートがボールがネットに収まるまてまスローモーションのように感じられた。人が決めたシュートでこんなに嬉しいのは初めてだった。ゴールを決められた島崎は、無力感とともにボールを林へと渡した。ようやく1点。この1点は、とても大きいと思っていた。まだ1点かもしれないけど、工藤が決めたことは俺たちにとって大きかった。




