6月22日 聖淮戦Ⅳ
このまま寝ていても仕方がない。切り替えるためにも、俺は外に出ることにした。
ー6月19日ー
まだ15分なのに2点を先制される苦しい展開。何もかも上手くいかない。
俺 「おい、沢田」
沢田「どうした?」
腰に手を当てた沢田はいつものように返事をしてきた。それが無性に腹が立っていた。
俺 「もっと真剣に走れや」
沢田「え?」
あっけにとられるように俺の方を向く。
俺 「もっと、走れよ。足痛いのか?」
沢田「いや、そんなことはない」
すぐさま否定した。なんだよ、コイツ。
俺 「だったら、ちゃんとやれよ」
沢田「ああ」
言い返してくることはなかった。もっと、闘争心むき出しになれよ。やらせない気持ちでいっぱいだった。
中沢「おい、落ち着けよ」
俺と沢田が揉めてるのに気づいたのか中沢がやってきた。
俺 「うるせぇ。お前もちゃんと指示出せよ」
中沢「わかってるよ。でも、今は試合中だ」
俺と対照的だったのが中沢だ。
俺 「わかってねぇだろ。今、2点差だぞ」
中沢「おい、落ち着けって」
キャプテンマークを巻いている俺に、冷静さは関係なかった。
俺 「そんな落ち着いてられるか」
中沢「落ち着いて、やらないと冷静な判断できないだろ」
このまま冷静になってもダメな気がする。
俺 「お前、ふざけてたらすぐ下げるぞ」
中沢「おい、なんでそうなるんだよ」
ゆっくり淮南高校の選手たちももどってくる。すると、背後からやってきたのは、まさかの宝来だった。
宝来「おい!」
俺 「あ?」
少し伸びた髪が目を隠していた。
宝来「俺にボールをあずけろ」
俺 「は?お前走らないだろ」
何をいいたいのか?コイツは。
宝来「まぁ、見とけ」
俺 「信頼できるか、お前なんか」
PKをやりあった時から、コイツのことを許したことは一度もなかった。
宝来「いいから、渡せ」
中沢「宝来がここまで言ってるんだ。そうしよう」
俺 「わかったよ」
まったく理解できない。けど、これ以上なんか言っても仕方がなかった。再び、ホイッスルが鳴った。最初にボールを触った辰巳は、中沢、俺へとボールを繋いでくる。俺の周りには、まだ相手選手は来ていなかった。ゆっくり、ドリブルをしながら前へと進んでいく。どこだ、宝来は?あっ、あそこか。よくわからないけど、ボールを渡せと言ってきたアイツにロングボールを蹴り上げた。




