6月21日 聖淮戦Ⅲ
俺たちは、昨日から一週間の休みが与えられていた。もう、10時15分かぁ。俺は、何をするでもなく、悶々とした気持ちを抱きがながら、ベットに寝転んでいた。
ー6月19日ー
ゴールを決めた藤森は、みんなに頭を叩かれながら戻ってきた。悔しいけど仕方ない。切り替えるしか。次は、俺が一番最初にボールを触ることにした。藤森たちがゴールパフォーマンスをしている時、中沢と打ち合わせをしていた。
グラウンドの熱気は、一気に淮南高校にもっていかれているような気がした。再び、試合開始のホイッスルが鳴る。俺、辰巳、中沢とボールをつなぐ。そして、工藤へボールが渡ろうとした時、玉波がボールをカットしたのだった。また、アイツかぁ。前線に走ろうとした俺は、急いで戻ろうとした。ボールをカットした玉波が高速でドリブルで前へと進んでいく。それに伴ってか淮南高校の応援席も雷鳴のような歓声が、聞こえてくる。玉波のドリブルは、俺たちにとって不安だった。
玉波は、山根にボールを渡してすぐゴール前に走りだす。山根は、ボールをあげる。ボールの先には、またしても藤森が。止めろーーー!!俺が声を上げる前に、沢田が叫んでいる。どこにでもエースはいる。お俺が入って最も感じたことだった。聖徳で言えば、沢田、宝来、工藤。聖徳に入っていなくても、こうしてエースが俺の行き先を塞いで来るのだった。藤森は、ボールに合わせて左足を合わせた。ピッチにたつ選手たちは、藤森に釘付けだった。ボールは、渦巻くように舞い上がった。サッカーって、こんな簡単だっけな?ボールの行方を見守った。
藤森の容赦ないミドルシュートは、ゴールキーパーの川上の手をすり抜け、ネットを揺らしたのだった。グラウンドの淮南高校の選手は爆発し、藤森コールが始まった。グラウンドからは歓声と拍手に包まれ、淮南高校の強さに俺たちは、何もできていなかった。なんだこれ?あまりにも思い描いた現実と違いすぎる。キャプテンとして、これでいいのか?2点をとられた現実は、あまりにも大きすぎた。周りを見渡した。あっけに取られるキャプテン沢田、どこか違うところを見る宝来、苛立つ工藤。横を見たら、DF陣に何かを話す中沢、辰巳。その話に納得がいっていない富山や相田。ヤバい、このままいったから確実に負けてしまう。もう、悔しい思いはしたくない。あの悔しかった日々が脳裏をよぎる。まだ、開始して15分だった。




