5月6日 引き分け
俺は、先日の合宿中に行われた7試合のスコアを紙に書き出していた。7試合中、勝ったのは2試合。負けたのが4試合。引き分けが1試合。サッカーは、勝つことではなく負けないことが大事。これは、昔、テレビの解説者が話していた言葉だ。
まさしく、今回の合宿もそれを表すかのような試合結果だった。負けた4試合のうち、2試合でも引き分けであればもっと変わっていた。今回の試合が大会であれば、得失点差なども利用される。負けと引き分けでこれだけの差があることを実感させられた。一度負けてしまうと、負の連鎖が続いてしまう。普段しないようなミスも目立っていた。
せっかくの休みなのに完全にサッカーのモードになっていた。昨日、あれだけ沢田に言われると、何も言い返せなくなってしまう。サッカー部は、ほぼ監督がいないも同然の状況なので自分たちで考えないといけない。
エースの沢田、得点王の宝来、最も背が高い工藤。この三人が抜けることは簡単なことではない。俺たちは、アイツらが夏の大会までに帰ってくることを願って練習をするしかなかった。
まずは、5月中旬にある高山高校との練習試合が一つ目安だった。高山高校は、3年連続で県大会準優勝以上などとても強いチームだった。この試合までにチームを立て直せるかがポイントだ。現状の戦力では、守備型のチームだ。相手から奪ったボールを起点に、カウンターを起こす。
しかし、チームの中心選手が抜けていることもあり、ボールの支配率が悪い。なので、なかなかこちらのペースの試合展開にならないのが悩みだった。誰か、ボールをキープすることに長けている選手が一人でもいたら違うのだろうと思い浮かんだ。
副キャプテンの中沢、ムードメーカーの辰巳、ディフェンダーの富山たちは一生懸命やってくれている。だが、勝つためにはまだ足りない。みんなが頑張ってやってくれているのにその想いに勝てないことが苦しかった。
明日から、再び練習が再開される。練習メニューを考えるとともに、宝来と工藤もなんとかしないといけない気がしていた。工藤はまだいいが、宝来はチーム内に敵が多い。俺も好きじゃないけど、他の奴にどうやって示しをつけるかという問題もあった。試合でこなかったのは、今回の合宿が初めてだったということもあり、驚きとともに手詰まり状態だ。
とりあえず、宝来はすぐ解決しないと思ったから、工藤をなんとかすることに決めた。俺は、紙を置き、スマホを触り始めた。




