6月18日 理由
「じゃあ、今から説明していく!まずは、俺、宝来、工藤。俺も含めて、正直この試合に出る予定はなかった。」えっ?どういうことだ?沢田の言っていることがわからない。少し間を置いてから、再び話し出した。「試合に出る予定はなかったけど、淮南高校の選手に言われてしまった。お前らは終わっていると」。何の話だ?誰に言われたんだ?次々と疑問が湧いてくる。「悔しくないか?そんなことを言われて。俺は、そう言われて悔しかった。だから、絶対に"聖淮戦"は、絶対に勝ちたいと」。それは、俺たちも一緒だった。
勝ちたい想いは、ずっとあった。「そうなった時、俺たちが出て勝っても負けても意味がないと」。なぜ、そうなる?別にお前らが出なくても勝ちは勝ちだろ。今の沢田の発言には納得がいかなかった。「たしかに、お前たちの中には、俺たちが出ても出なくても勝てばいいだろ?と思うやつはいるかもしれない」。俺の心の中を見透かされるように返された。「けどな、聖徳高校サッカー部は、1年も含めた42人全員でやるんだ。誰一人かけちゃいけない。そこを理解してほしい」。
俺たちのカリスマである沢田がここまで言うなんて意外だった。突っ立って話を聞いている宝来や工藤もどこか真剣だった。「だから、今年は、ベンチメンバー全員で勝とうと思っている。ベンチ入りした22人全員出場予定だ」。まさか、沢田がそんなことを考えているなんて。なんとなく、わかってきた。全員を変えるとなった時、誰がベンチに残っているかも重要だった。そうなれば、必要な選手を最初から使わず、途中起用もあるだろう。もしかしたら、最初から最後まで試合に出続ける選手も少ないのかもしれない。
「だが、試合はそんなに甘くない。ノコノコと戻ってきた俺たちが試合に出て勝てるほど甘くないと思っている」。これは、沢田の本音なのか?それとも俺たちに合わせたメッセージなのか?自分の中で気になってしまっていた。「だからこそ、明日のキャプテンマークは、このチームを誰よりも引っ張ってきた唐沢に任せることにした」。えっ?驚きで上手く言葉が出てこない。みんな一斉に俺の方を向いた。俺自身も話を聞いてないから今起きていることすらよくわかっていなかった。こんなに堂々としていると、俺がつけたキャプテンマークもかすんでしまう。それぐらい理解してくれよと、沢田に突っ込むので精一杯だったのだ。




