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6月14日 PK戦Ⅹ

 俺のロングパスは、中沢に通った。中沢は、クロスボールをあげた。沢田、宝来、工藤という3人が揃うことはまだなかったが、戻ってくるかもしれないという期待が俺たちを熱くしてくれた。その中でも、キャプテン沢田は、ほぼ毎日、練習に来ていて声を出していた。"聖淮戦"に向けて準備を続ける。淮南高校は、エースの藤森、キャプテンの林を中心としたチームだ。俺たちの個性派集団とは違い、とてもまとまったチームで有名だった。エースの藤森は、沢田と同じように中学校の時、選抜チームに入った経験があった。藤森も1年生から試合に出ていただけに、俺たちはお互いを知り尽くしているという状況だった。


 ー6月5日ー


 1、2本目とはボールのスピードは緩かったが、正確なキックだった。PKは、入れて当たり前のように見えるが、意外と難しい。沢田が蹴ったボールは、キレイにゴールへと吸い込まれていってしまった。3ゴールを決めた沢田は、前へと歩き出す。ゴールを決めた余裕なのか、まっすぐ歩いていく。キーパーの宝来は、飛び込んだところから立たなかった。打ちひしがれたように、俯いていた。大丈夫だろうか、アイツは?

 宝来は、なかなか動けないみたい。これは、沢田が宝来を迎えにいくという普段なら見られない展開ではないか。なんかよくわからないけど、この続きを見ていたかった。ゴール前に来た沢田は、宝来を見た。それでも、なお、宝来は、立ち上がれない様子だった。すると、沢田は宝来のもとへ右手を差し出した。宝来は、右手をチラッと見た。握りたくないという感情が見えた。それでも、宝来は、その手を握り返したのだった。

 二人が握手をした瞬間、他のサッカー部員が走り出した。そうだ、俺たちサッカー部は、この瞬間を3年間ずっと待っていたんだ。先陣切って走り出した、原田と野木は、中沢たちとともに抱き合っていた。そこに、辰巳、富山たちも迎いえる。沢田と宝来の二人の頭はいつもより強く叩かれていた。俺は、ベンチに座りながら、みんなの様子を見ていた。まさか、こんな日が訪れるとはな。

 当然、こんなもので一致団結するわけはない。それでも、仲直りのきっかけになるのであればよかったのかもしれない。みんなの嬉しそうな笑顔が心に染みる。すると、はしゃいでいた相田や辰巳から呼ばれたのだった。迷いは一切なく、タオルとペットボトルを置き、走り出していた。

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