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6月12日 PK戦Ⅷ

 少しずつメンバーが帰ってくる。俺たち、サッカー部は活気を取り戻していた。


 ー6月5日ー


 宝来と沢田のPK戦は、1本目が終わり、1対0で宝来がリードしているという展開だった。俺は、この展開を予想できなかった。さっきまでの自分がなんだか恥ずかしい。宝来と入れ替わりで沢田がやってきた。宝来とは対照的だったのが沢田だった。余裕の表情の中、どこか真剣さが漂っていた。あんな沢田は、あんまり見たことがない。ずっとサッカーしかしてきないのは沢田も同じだった。たしかに、コイツは真面目ではない。けど、いつもここぞという時に助けてくれる。それが沢田亮二という男だった。

 沢田の二本目も決まり、大きな歓声が聞こえてくる。サッカー部や生徒たちから大きな声が上がっていた。まるで、自分たちのことのように。2本目も難なくゴールを決めてしまった沢田は、宝来の方にゆっくり歩いていく。俺は、沢田の歩く姿を見つめながら、キッカーの方に行く宝来の姿もチラリと視線をおくる。

 キッカーが宝来へと変わる。ここで、流れを取り戻したい。沢田は、やや右寄りで宝来が蹴るのを待つみたいだった。中沢の笛が鳴ってから2.3秒間たってから走り出した。もしかしたら、タイミングが合わなかったのか?いつもの宝来とは違う気がした。宝来が蹴り出したボールは、沢田の遥か上。サッカーゴール上に抜けていってしまったのだ。

 苛立ちからか、宝来は俯いてしまった。またしてゴールネットを揺らすことはできず流れは完全に沢田の方にいってしまうようだった。沢田は、表情を変えずにキッカーの方へと戻っていく。これで両者2本目まで終える。2点差のまま沢田の3本目に入る。ここで、沢田が決めてしまうと、宝来の負けが確定してしまう。どうするんだ、宝来は?

 運命の3本目。キーパーの宝来は、俺から見て右の位置に大きくポジションをとったみたいだ。俺との試合でやったやり方かぁ。沢田は、右利きだから、左へとカーブはかけやすいのか。勝手に二人のPKを想像した。宝来としては、一二の三で左に飛びこむという作戦なのだろう。ここで、あえて右に蹴るという沢田はあるのか?

 中沢の笛とともに助走をし始めた。すると、右手をゴールポストに向けた。どういうこと?すると生徒たちから声が上がった。横から見ていた俺たちにはわかんなかったけど、どうやら右に蹴るという宣誓みたいだ。周りからは、大きな声援が上がった。相変わらず、そういうことが好きなやつだ。

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