6月11日 PK戦Ⅶ
俺は、19日の"聖淮戦"に向けて、調整を続けていた。これまでの人生、ずっと順風満帆というわけではなかった。それでも、前に進むしかなかった。それは、沢田や宝来たちにいつも教えられてきたことだった。
ー6月5日ー
俺が負けてから、宝来vs沢田というよくわからない展開になっていた。俺は、わけもわからず二人の様子を眺めるしかない。二人のPK戦は、またしても中沢がとりまとめているみたいだった。問題児にキャプテン。とりまとめるのも一苦労だな。先攻は、沢田で始まった。
このチームのエースでキャプテン。沢田は、どんな姿を俺たちに見してくれるのだろう?中沢は、大きく笛をふいた。こんな大きな音がなっていたんだ。自分が蹴る時は、全然気が付かなかった。長袖の腕をめくり、今からいきますと言わんばかりに右手をあげた。
沢田は、助走をつけボールを蹴り出した。ボールは、見事ゴールネットの中に吸い込まれていった。キーパーの宝来は、まったく動けなかったみたいだ。
悔しそうに沢田の方を見るので精一杯の様だ。ゴールした瞬間、沢田は、辰巳たちのところに行き、ハイタッチをしだした。これが、沢田亮二か。俺は、自分との違いに唖然としてしまっていた。先ほどまでの宝来は、どこに行ったのだろうか?、あんな落ちこんだ宝来は久しぶりに見た。キッカーは、沢田から宝来へと変わっていく。異様なムードに包まれたサッカー部のコート。さっきまでの静けさから一転、お祭り騒ぎみたいになっていた。
宝来は、さっきまでの余裕がなくなっているように感じる。ゆっくりボールをセットし、中沢が笛を吹くのを待っていた。宝来の1本目。大きな笛が鳴った瞬間、走り出した。宝来が蹴ったボールは、キレイに右端へと飛んでいく。しかし、沢田は動かない。諦めたか?コーン。ボールは、ゴールポストに命中し、ゴールの外へと外れてしまっていた。
さっきまでの俺との戦いで手にした流れはどこにいってしまったのだろうか?1本目が終わり、沢田がリードした展開となった。沢田は、余裕の表情を見せながら、攻守交代。まるで、自分が勝つかの様な雰囲気を醸し出していた。明らかに、最初の俺との時と違う。これが、沢田なのか。宝来も、必死に余裕の表情を見せようとしていたが、どこか違う。今、アイツは、どんな気持ちなのだろうか?そして、中沢の笛とともに2本目が始まった。




