5月5日 電話
動画からは、俺の推しのアイドルが映し出されていた。あぁ、可愛いな。俺は、スマホを触りながら癒されていた。画面が急にグレーになっていく。なんだ、、、、、、。画面には、沢田亮二の文字が。苛立ちの気持ちを抑えて、タップした。
俺 「もしもし」
沢田「もしもしー」
わずか2コールで出てしまった。
俺 「沢田か。どうした?」
沢田「元気か?」
俺 「元気じゃねえよ」
今日も沢田は、元気そうな声だった。
沢田「いや、合宿疲れてたって聞いたから」
俺 「誰から聞いたんだよ?」
沢田は、今、どこからかけてきてるんだろう?
沢田「そんなん一人しかいねぇだろ」
俺 「誰だよ、それ」
沢田「ハハハ」
ちょうど、合宿が終わった頃にかけてくるあたり、計算高い。
俺 「そっちはどーなんだ?」
沢田「まぁ、ぼちぼちだ。"聖淮戦"までには間に合わせる」
風の音が聞こえる。もしかしたら、外からかけてるんだろうか?
俺 「そうか。早く戻ってこいよ」
沢田「ああ。それより、宝来と工藤は?」
俺 「いや、全くだ」
自分が怪我をしているのに、チームの心配する余裕があるなんて。コイツには勝てねぇな。
沢田「全然来てないんか?」
俺 「ああ」
コイツがいない間、チームを任されたというのに何もできていない。
沢田「まぁ、宝来はいずれ来るとして工藤だな。問題は」
俺 「いや、宝来も来るかわかんねーぜ」
沢田「大丈夫だって。アイツはサッカー好きだから」
沢田と宝来の間には、俺たちが見えない何かがあった。
俺 「工藤は?」
沢田「もう謹慎処分の期間は終わったんだろ?」
俺 「ああ」
沢田「だったら、なんで来てねぇんだ?」
工藤。コイツの消息は、誰が知ってるんだろうか?GW前もあまり学校に来てないのは聞いていなかった。
俺 「俺が聞きたいよ」
沢田「早いところ、手をうたねぇーとやめるぞ、アイツ」
俺 「‥‥。そう言われてもなぁ」
たしかに、あいつならやめそうだ。
沢田「なんとかしろ、副キャプテン」
俺 「なんとかならないから困ってるんだよ」
ただ、宝来と違って工藤ならまだ俺でもできるかもしれない。
沢田「全部一人でやろうとするなよ。誰かに助けを求めろ」
聖徳高校サッカー部は、キャプテン沢田亮二。副キャプテンに、中沢初登、工藤明弥、俺で構成されていた。




