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6月9日 PK戦Ⅴ

 走る間に、大きな風でユニフォームが揺れていくのがわかった。必死に走りながら、考えた。今の俺は、誰からの信頼も得られない人間だということを受け入れるしかなかった。そこから、変わるしかない。沢田の姿を見て、そう悟ったのだった。


 ー6月5日ー


 "悪いな、唐沢。許してくれよ"。このナメられている感じ。無性に腹が立つ。無視しながら、戻っていく。俺たちは、攻守交代のため、すれ違う。宝来のシュートが決まり、2対3。俺がここで外したら。そんなことが脳内をよぎってしまう。俺は、中沢からもらったボールを地面に置いた。

 宝来は、左に寄っている。どっちに寄ろうが、ゴールポストぎりぎりであれば、届かないはず。俺は、右上の角を狙うことにした。俺は、勢いよく助走をつけ、そのまま走り出すぐ。右上、右上!!心の中で唱える。そして、俺が蹴ったボールは想定通り、右上へ飛んでいく。この位置であれば届かないだろう。

 宝来の手には当たらなかった。しかし、ゴールネットを揺らすことばできなかったのだ。ゴールポストに当たったボールは、ゆっくりとこっちの方に戻ってくる。俺たちを見守る生徒から大きなため息が聞こえてきた。次の宝来のターンでゴールを決めれば、俺の負けが確定する。俺は、なんとか止める方法を考えた。

 左だろうか、右だろうか。頭の中で必死に考える。当たり前だが、答えは出ない。しかし、どちらかに飛んでその方向にボールがくれば、まだチャンスはある。諦めないように、必死に言い聞かせた。キッカーの宝来は、悠々とボールをセットした。そして、勝ちを確信したかのように、俺の方を見て、ニヤリと笑う。なんだ、この違和感は。俺は、どうすればいいか余計わからなくなっていた。

 宝来は、何かを考える様に、中沢が笛を鳴らしてもすぐに蹴らない。まるで、俺たちの視線を集まるかのように、時間をかけているみたいだった。そして、ボールを蹴った。えっ、、、、、、。次の瞬間、俺は、宝来の偉大さを痛感してしまった。クソ。こんなのあるか?宝来が蹴ったボールは、ど真ん中だった。こんな場面で真ん中を蹴れるなんて、どんなメンタルしてるんだ。俺は、後悔した。ここで、ど真ん中を蹴ってくるのが宝来だと言うことを。副キャプテンなのに、チームのことを何一つわかっていない。だから、コイツらから信頼されないのか。自分の実力を認めざるをえなかった。

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