6月8日 PK戦Ⅳ
いつものように、ドリブルを進めていく。しかし、全然気が入らない。なんだろう?この感じ?PK戦が終わってから、どこか気合が入らない自分がいたのだった。俺は、必死にボールを蹴り、自分が変わることを願っていた。
ー6月5日ー
PK戦は、中盤。2対2。俺は、この日3度目のボールセットを行った。なんだか、ゴールを守る宝来に止められそうな気がしてきた。ヤバいな、このまままでは。俺は、ゆっくりボールをセットし宝来の方を見つめた。宝来は、何かを考えているようだ。ここから、3本目。そろそろミスがでてもおかしくない。丁寧に蹴ることを考えた。
宝来は、先より少し右に寄っている。これは、何かのサインだろうか?動揺するな、動揺を。なんとか、心を落ち着かせて中沢が笛を鳴らしてくれるのを待った。右に寄ってるなら、素直に左を狙うべきだろうか?それともあえて右を狙うべきか。完全に、宝来ペースになっている気がした。そんなことを考えていると、大きな笛がなった。
俺は、素直に左を狙うことにした。ボールを蹴った瞬間、自分が間違えていることに気がついた。勢いよく蹴り出したボールは、ゴールポスト付近に飛んでいく。しかし、そこには、宝来がいたのだった。俺は、唇を噛み締めた。宝来は、大きくダイブし、目一杯、手を伸ばした。今のアイツは、これまでとは違う。キボールは、見事に手を伸ばしたところへ飛んでいく。
宝来の気合いにボールが負けたみたいだった。ゴールに吸い込まれることはなかった。ボールが止められた瞬間、サッカー部から大きな声が聞こえたようだった。これで、宝来有利に変わってしまった。攻守交代。宝来は、俺の方に近づいてくる。"大丈夫か?"もはや、嫌味にしか聞こえない。"うるせぇ"とだけ返し、ゴールネットのところまで戻っていく。
今度は、宝来がキッカーになる。ゴールを外してしまったから、ここをなんとか止めるしかない。どっちに蹴ってくるだろうか?俺は、どちらかに寄らず、蹴った方へと動くことに決めた。中沢の笛と同時に、宝来はボールを蹴り出した。まさか!!ほとんど助走がなかった。ボールは、外れるか入るかの微妙なところへ飛んでいく。左も右にも寄っていなかったから、かろうじて届きそうだ。横っ飛びになり、名一杯、右手を伸ばしたが、指に当たりそのまま、ネットへ吸い込まれていった。




