6月7日 PK戦Ⅲ
PK戦が明けてから、今日が2日目。俺は、宝来がいる3年5組に来ていた。宝来は、どこを探しても見つからない。今日は、来ていないのだろうか?俺は、じっくり大学の本を読みこんでいる山里を見ながら考えていた。山里が読んでいる本は、実に重たそうだった。あの本は、ページをめくってもめくっても、終わりはこないんじゃないかと思っていた。俺は、教室は諦めて、別のところを探すことに決めた。宝来がいそうなところは、どこだろうか?とりあえず、廊下を歩きながら、情報を持っていそうなサッカー部を見つける。すると、前の方から中沢や辰巳たちが歩いてくるのがわかった。
ー6月5日ー
俺と宝来のPK戦は、2対1という状況で、宝来の2本目へ。すれ違いに、"左に蹴るぞ"と忠告された。俺は、鵜呑みにしていいものかわからなかった。それでも、やや右寄りにポジションに変え、左に飛ぶ準備をしていた。これが正しいのかわからない。それでも、俺は宝来の蹴るボールを止めるしかなかった。
中沢のホイッスルと同時に、宝来は、走り出した。宝来が蹴ってボールは、左だった。左じゃねぇか、あのボケが。宝来は、ゴールポストギリギリの左に蹴ってきた。俺は、精一杯、左に飛んだ。しかし、俺の腕にボールは届かなかった。あと一歩足りない。ゴールネットに突き刺さったボールをとり、再びキッカーの位置へと戻っていく。
すると、サッカー部キャプテン沢田がやってきていることに気がついた。今頃、来たのか。アイツは。ホントにどいつもこいつも使えないやつばかりだな。俺と宝来の対決は、3本目に入っていく。ボールを持った俺は前へと歩いていく。宝来は、"そろそろ、本気で蹴るぞ?"と宣戦布告をしてきた。まだ、本気じゃないのかよ。"本気でじゃないのか?"。俺の質問に対して、即答で頷いてきた。"沢田を出すためには、お前がやられる姿を見せないとだろ?"。俺は、練習台かよ。納得がいかなかったけど、仕方がない。
俺と宝来では、サッカーのスキルに明らかに差がある。入部してすぐ試合に出てたのが、沢田と宝来。そこに、工藤が加わるという流れ。俺たちは、ずっと試合に出るアイツらを見ることしかできなかった。しかし、アイツらは本気で練習をすることはなかった。常に牽制しながら、よくわからないことを続けていた。




