6月6日 PK戦II
昨日の今日で、よくわからない。とりあえず、何が起こったのか一日経っても整理がついていない俺は、辰巳や中沢たちと話し合っていた。
ー6月5日ー
俺が先攻。宝来が後攻かぁ。"ピピッー"。審判の中沢が吹いた笛は、とても大きかった。俺は、どうするか迷っていた。勝つ以外のことは考えないし、今他のことを考えても仕方がなかった。それでも、緊張せずにはいられなかった。とりあえず、どちらに蹴るかを考えた。ゴールキーパーの宝来は大きく感じる。これまでの人生の中で、守ったことのないポジションだろう。それなのに、どうしても宝来が凄く感じてしまう。これが劣等感なのだろう。勝手に頭の中で考えてしまっていた。
俺は、ゆっくりと3.4歩ほど下がった。いつもとは思えないグラウンドの静けさだ。みんなが俺たちの注目の対決を見ている。自分のタイミングで勢いよく走り出した。あっ、、、、、。俺は、ボールの左側を蹴ったが、キーパーの宝来は、全く動かなかった。ボールを蹴った瞬間、ゴールに入るのがわかった。しかし、なんとも言えない。嬉しさは微塵も感じなかった。中沢の声かけとともに、俺たちは攻守交代をした。すると、ゆっくり宝来が歩いてくる。
"どうだ?"俺とすれ違い様に、声をかけてきたのは、宝来だった。俺は、何も言えなかった。正直、宝来が何を考えているかは、今の俺には、わからなかった。俺は、手袋をつけて、中沢の笛が鳴るまで待っていた。とりあえず、左に飛び込むことだけを決めた。キッカーの宝来は、中沢の笛の合図と同時に蹴り出した。とりあえず、飛び込むことだけは決めていたものの、ボールはど真ん中に来たのだった。
相変わらず、なめてやがるな。コイツは。1本目の対決が終わって、1対1というスコアだった。"次も、左に蹴ってこい"。は?。俺は、軽く返事を返したが、宝来は何も気にしていないみたいだった。何がしたいんだろう、宝来は。どこに蹴るかは迷ったが、とりあえず、コイツの言う通り、左に蹴ることにした。俺は、さっきと同様、ゆっくりとボールをセットしていく。そして、やや左側から助走をとることにした。
キーパーの宝来は、相変わらず余裕そうだった。中沢の笛が鳴り、俺は、宝来の指示通り左側にぶち込んだ。しかし、宝来は、1本目同様全く動かなかった。何がしたいんだ?俺は、やる気のなさに驚いてしまっていた。これが、アイツのペースなのか?




