6月4日 交渉
今日が、今後のサッカー部の運命を変えるなんて今は、思いもしなかった。昨日の沢田が話してた通り、宝来との話し合いに、沢田が6組に向かっていた。掃除が終わった中沢、辰巳、俺は、少し離れたところから、二人を見守っていた。
沢田「で、どうするんだ?」
宝来「何がだよ」
沢田「練習に決まってるだろ。お前もサッカーしたいだろ?」
宝来「は?」
いきなり、立ち上がり沢田の胸ぐらをつかんだ。すると、宝来の席の近くにいた井上と畠が立ち上がり、止めようとしていた。
井上「もうやめとけって」
宝来「うるせぇ、どけ。はやく」
宝来のスイッチが完全に入っていた。このままだと、宝来は、戻ってこない気がする。勇気をふりしぼり、俺は前に出ることにした。
俺 「で、どうしてほしいの?」
中沢の横から、少し前に出て、宝来の方を向いた。俺の方を向くと、イラだった顔を見せた。ここに居続けたら、殴られるんじゃないかとすら思っている。
宝来「だから、今日の練習は行かねぇって言ってんだろ」
俺は、ここでひけない。昨日、中沢が沢田に言っていたように、俺たちは勝つために全力で練習している。そうじゃないヤツらがいるなら、、、、、、、。
俺 「行かねぇのは、お前の勝手だからいいけど、"聖淮戦"は、スタメンから外すっていうだけだからいいんじゃね?」
俺の発言で、宝来の顔色が変わる。さっきまでの表情よりもさらに険しくなる。もう、元には戻れない。それでも、仕方がねぇ。俺は、言ったことに後悔はない。
宝来「なんで、そうなるんだよ。ふざけんなよ」
沢田から俺の方に狙いを変えた。少し前を出てきたとこを井上たちに抑えられる。
唐沢「そんなにキレるなよ」
言わなくてもいい一言だった。"おい!!"近くにいた、中沢は、俺を制すように声をかけた。
宝来「てめぇ、こっちこいや」
宝来のボルテージは、最高潮に達しているようだった。
井上「だから、やめろって」
近くにいた、井上が必死に止める。俺は、宝来が来るなら受けて立とうと思っていた。すると、前の方にいた、沢田が立ち上がった。
沢田「宝来!!」
宝来「あ?」
キャプテンの沢田は、俺の前に来た。
沢田「もう、時間ねぇから。来るか来ないかは、勝手にしろ」
宝来「俺は行かねぇからな」
沢田は、呆れた様子で帰ろうとしていた。
沢田「なんで、そんなに行きたくねぇんだ?」
宝来「ここにいる奴は、いいとしても、他の奴らのレベルが低いんだよ。やってられるかよ」
宝来の言うこともわからなくはない。天才のレベルに達しているサッカー部ではなかった。
沢田「じゃあ、勝負でもするか?」
宝来「何の?」
どういうことだ?
沢田「PKだろ」
宝来「上等だ。誰とやるんだ?」
宝来は、どこかテンションが上がっているみたいだった。
沢田「誰がいいんだ?」
宝来「誰でもいい。お前らで勝手に決めろ。じゃあ、明日の部活でな」
俺の前を、宝来は通っていったのだった。




