6月3日 無言
中沢「沢田!」
沢田「どうした?」
少し機嫌が悪そうな中沢といつと通りノーテンキな沢田が話を始めようとしていた。
中沢「宝来、今日も帰るって」
沢田「そうかぁ、、、」
ノーテンキな沢田は、さらりとかわした。
中沢「いいのか?ほっといて」
沢田「明日、話すから落ち着けって」
少し苛立ちをしていた中沢に気づいていた。
中沢「わかってるよ」
沢田「そんなに嫌か?」
ボールをカゴに入れながら、二人の様子を眺める。
中沢「嫌とか、そういうのじゃねぇよ」
沢田「だったら、なんだよ?」
中沢「俺たちは、本気なんだよ」
少し、強い口調になった。
沢田「ん?」
それでも、沢田は表情も態度も変えない。
中沢「お前らが戻ってくるまで、ずっと待ってたんだよ」
全然、納得いっていない中沢。
沢田「それはありがとうだな。ハハハ」
なんか、嫌な感じがする。二人の会話を聞いていて思った。このままだと、またケンカするんじゃないかと。
中沢「笑ってる場合かよ。お前、本気でやる気あんのか?」
俺は、前かがみになり、中沢の様子を見つめた。
沢田「怒んなよ。俺たち、そういう中じゃねぇだろ?」
なだめるように中沢の方を向いた。
中沢「工藤も宝来もお前も。やる気ないんだったら、来なくてもいいんだぜ?」
自然と体が前に一歩を踏み出していた。
俺 「おい、中沢。落ち着けって」
沢田の少し前に立ち、中沢を止める。
沢田「唐沢、いいよ。別に」
それでも、沢田は落ち着いている様子だった。相変わらず、動じない男だ。
沢田「中沢、お前の言う通りだよ。俺たちは、少し勝手すぎたかもな?」
中沢の方をチラリと見たが、どういう風に思ったのかはわからなかった。
中沢「‥‥」
俺は、少し前に出て、二人を見守った。
沢田「お前の言う通り、ちゃんといたお前たちに悪いよな?」
こうなると、俺は何も言えなくなる。
中沢「‥‥」
まだ、無言を貫いていた。
沢田「でもな、一日たりとも、お前たちのことを忘れたことはない。それは、これからもだ」
ドラマのセリフのように告げ、中沢の肩をたたいた。
沢田「明日、必ず決着つけるから、待っててくれ。じゃあな」
沢田は、ゆっくり部室へと歩いていった。




