5月29日 紅白戦10
俺は、汗を拭いながら、ランニングをしていた。もう、こんな時間かぁ。時刻は、17時を過ぎようとしていた。
ー5月20日ー
開始49分にして、ようやく待望の得点をあげた。辰巳と肩を組みながら、真ん中まで戻っていく。ずっと欲しかった1点目がこのタイミングで出たのは最高だった。沢田が望んでいた通りのゲームプランになっていく。そして、ゲーム再開しようとした時、中沢が動いた。ここまで、試合に出ていない6人の選手を一気に変えようとしているみたいだった。
しかし、チームの中心選手である相田、野木、富山、川上たちは変える予定はないみたいだった。中沢も試合に出るみたいだった。向こうのベンチを見ていると、そこには、工藤の姿もあった。アイツ、きていたのか。驚きと興奮が入り乱れていた。中沢は、どうやら、1トップで起用されるみたいだ。すると、俺は、沢田に呼ばれていることに気がついた。
俺 「どうした?」
沢田「ここからの戦術だ」
汗を拭きながら、沢田の話に耳を傾けた。
俺 「決まってるのか?」
まさか、1点をとった後も想定しているなんて。やっぱり、コイツには勝てねぇな。
沢田「ああ。もう、シンプルだ。中沢が人数をかけて攻めたあとのカウンターだ。チャンスは少ないけど、これで決めろよ?」
カウンターか。カウンターはいいけど、その分、攻められるということだからリスクも出てくる。そんな戦術で大丈夫なのだろうか?俺は、とても心配だった。もっと、人数をかけて攻めた方がいいんじゃないだろうか?
俺 「この作戦で大丈夫なのか?」
沢田「不安か?」
俺の気持ちを見透かすように話しかけてくる。
俺 「ああ、不安だろ。1点負けてるんだぜ?」
沢田「だから、やるんだよ」
よく意味がわからなかった。
俺 「えっ、どういうこと?」
沢田「負けてるからこそるんだよ」
俺 「なんで?」
理解不能だった。
沢田「お前、向こうは、後1点決めたいっていうのが本音だろ?」
選手がセンターラインへ続々と戻っていく。
俺 「どうして?」
疑問を投げかけた。
沢田「得点したのは、井川と福谷だけだろ?他の選手も得点を決めたいっていうのが本音だと思うぜ」
沢田の言う通りだ。同時に、試合再開の笛が鳴ってしまった。
俺 「おっしゃあ!!!」
沢田「行ってこい!」
沢田は、俺の背中を叩き、優しく送りこんでくれた。




