5月25日 紅白戦6
沢田の復帰は、いつになるのか。早くグラウンドで練習する日が来るのが待ち遠しかった。
ー5月20日ー
入江の話を聞いた後、俺は驚いてしまった。まさか、沢田が試合を見ていたからだ。あまりにも、試合に集中していたから、沢田のことは目に入っていなかった。
沢田「いいじゃない、楽しそうで」
俺 「こっちは、必死なんだよ」
楽観的だった沢田は、どこか思い出に浸っているようでもあった。
沢田「それは、いいことじゃないか」
俺 「そうか?」
試合は、開始して36分になる。中沢のチームも、沢田が来ていることに気がついたみたいだ。自分たちのチームの絶対的エース。誰もがコイツの復帰を待ち望んでいる。制服ということもあり、まだ完治していないんだろうと思っていた。それでも、グラウンドに顔を出すのは、2ヶ月ぶりぐらいだろうか?相手チームの中沢は、試合そっちのけで俺たちの方を見るくらいだった。中沢や辰巳は、同じ4組のクラスメイト。
普段から話すらしいけど、大事な話はしないらしい。他者を寄せつけない一匹狼のような存在は、宝来よりも凄かった。沢田は、サッカーだけじゃなく勉強への熱量も高い。沢田が狙っている大学は、日本一と言われる東京の大学。常に、模試の成績でも上位だし、今年の4月からの二ヶ月ですでに偏差値を10ほど上げているらしい。もともと、勉強しなかったから低かったけど、本気を出せば佐々木やBIG3などとは比較にならないくらいの潜在能力があったのだ。
初めて、沢田のことを知ったのは高校1年のオリエンテーション合宿の時だった。みんなが彼のところに集まるから何者なのかということを相田に聞いたのが知ったきっかけだった。当時から、彼女もいたし勉強もよくできると噂が流れていた。そして、その合宿の時、初めてサッカー部に入るということ聞かされたのだった。聞くところによると、中学校では、県代表戦選手に選ばれたとかでとても上手いと聞いていた。それは、一緒にプレーして気がついた。彼は、天才だったのだ。
沢田「お前も試合出るんだろ?」
俺 「ああ。監督変わってくれよ」
俺が伝えたいことを沢田はなんとなく理解したようだった。
沢田「いいぜ」
沢田は、ゆっくりと歩いていく。
よくわからないけど、とりあえずアップすることにした。残り23分。俺の出場時間は、ごく僅かだ。




