5月23日 紅白戦4
紅白戦から3日が過ぎようとしていた。オフを満喫する間もなく、キャプテンの沢田に会いに来ていた。沢田とオフの日に会うなんて久しぶりだ。たしか、1年の時に数人で集まった以来だった。いつも人気の沢田に俺が会うなんて考えられなかった。スマホを見ながら沢田の到着を待つことにした。
ー5月20日ー
試合は、25分が過ぎて0対1で、白組がリードしていた。俺が、戦術を伝えている間に、グラウンドから大きな声が聞こえてきた。どうやら、2点目が入ったみたいだった。大きな雄叫びを上げているのは、井川だった。井川は、右手を挙げながら、ベンチへ向かって走り出していた。
2点目を取られた紅組の選手たちは、1点目の時以上に気落ちしているのがわかった。しかけるなら、今しかない。俺は、1トップの常田に変えて、菊川を入れることにした。菊川を入れることによって、1トップの1列目を下げ、福井、早坂、菊川の1列目を作ることにした。そして、2列目には、辰巳、山下、川口、原田の4人が入る。最後の3列目に、青木、風上、木下。
GWに中川がいるという布陣に変わった。
メンバー変更を告げた時、中沢は、俺の方をちらりと見る。2点リードしているということもあり、余裕の表情だ。俺は、残りのメンバー表を見ながら変更をどうするか考えていた。
残りは、後5人。ベンチに帰ってきた常田とハイタッチを交わした。常田は、とても悔しそうな表情を見せながら、再開したグラウンド上に目をやっていた。今日の常田は、出場時間25分。シュート数は、わずか1本。とても悔いの残る試合となっていた。
紅組ボールで試合が再開した。ドリブルで辰巳は、前線に切りこんでいく。白組の選手が来た瞬間、早坂にボールを入れる。早坂は、ワンタッチで辰巳に返す。辰巳は、少しボールを持つと一気にサイドチェンジをかける。辰巳が蹴ったボールの先には、菊川がいた。ようやく、紅組の見せ場がきた。
祈るように、菊川たちを見守った。レギュラー組のディフェンスである富山、相田、野木たちがガッチリ守る。菊川は、ドリブルで抜くことは諦め、ペナルティエリアにボールを蹴ろうとしていることがわかった。しかし、その願いは叶わなかった。
菊川のセンタリングは、相田がヘディングで処理し、そのボールを白組が取る。ボールを取った白組の富山は、ロングボールを蹴ったのだった。初めてのチャンスはあっけなく終わってしまった。




