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5月16日 三者三様

 サッカー漬けの毎日も悪くない。少しずつ、そう思えるようになって来た。3年生になるまでは、ずっと練習に行くのが嫌だった。別に練習が忙しいとか先輩が厳しいとかいうわけでもない。むしろ、他の野球部やソフトボール部と比べると、緩かった。

 俺が嫌だったのは、ただただ、自分が活躍できないことに嫌気がさしていたからだ。別に、他の同級生と比べて、とても下手というわけではない。副キャプテンにつくくらいだから、それなりに自信はあった。しかし、それ以上にアイツらが凄かったのだ。

 それだけ上手いのに、練習に来ないアイツらに腹が立っていた。正確に言えば、来れないのだろうけど。当時から試合に出て活躍してたアイツらが羨ましかった。特に、沢田と宝来は、フォワードなので、点を決めることが多く評価されることも多かった。一方、工藤は、得点を決めることよりもアシストでチームに活躍する方が多かった。

 昨年の、"聖淮戦"でも試合に出たのは三人だけだった。昨年度は、0対2で敗れていただけに、今年も負けるわけにはいかないと中沢たちは考えていた。先輩たちからの三人の評価は、三者三様。ある一人だけが凄いというのはないみたいだった。しかし、三人がチームから抜けてからは、まったく機能しなくなった。副キャプテンの中沢と俺は、何度も話し合いを重ねて合宿を迎えた。

 しかし、俺たちの話し合いは無駄に終わる。どれだけチームプレーでカバーしようとしても、沢田一人の能力には勝てやしやかった。それは、動きを見ていたらわかる。作りこまれたサッカーは、想定以外のことが起きた時に崩壊してしまう。しかし、沢田たちは、想定以外のことが起きたら、むしろチャンスとなってしまうのだった。

 一番早い復帰が工藤になる。帰って来て、すぐレギュラーになれるなんてチームが弱い証拠だ。最近まで、俺が工藤の役割をこなしていたんだから、俺が負けさえしなければ、もっとチーム内に競争が起きるんじゃないかと思っていた。

 最近は、2年の福井と1年の山下たちの台頭もある。下級生の頑張りがあれば、チームももっと勢いづくんじゃないかと思って明後日には、紅白戦をすることを監督に伝えた。監督は、驚いた表情をしていたが、やりたいならと承諾してくれた。どんな試合になるかはわからないし、やって意味があるのかすらわからない。それでも、今のままだと、何も変わらないんじゃないかという不安があった。

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