5月2日 苦行
苦しい。なんで、こんなに苦しいんだ。あんだけ、頑張ったのにこのザマかよ。センスとやらとは無縁の俺は天を仰いだ。努力すればなんとかなるとか言うじゃねえかよ。くそ!
もつれた足を手で叩きながら、前を向いた。
すると、ディフェンスの富山が倒れて、笛が鳴った。俺は、この隙を狙って、近くに置いてあるペットボトルをとり、水分を補給した。この合宿中いろんなことを考えていた。沢田のこと、宝来のこと、そして工藤のこと。いろいろ想いは、あってもそれが結果としてついてこない。今が生きていく中で、最も苦しいのかもしれない。
自分のふがいなさで招いた結果といえば、それまでかもしれない。部活をやらなければ、こんな苦しい想いもせずにすんだのかもしれない。後悔が頭に浮かぶ。"悠太、もっと右だ"。監督からの指示が飛んできた。
合宿中とはいえ、疲れはピークに達していた。サッカー部副キャプテンとして、この合宿中の4試合すべてフル出場をしていた。残り7分。思い通りに動かない足と闘いながらの試合だった。
今日は、岐阜県の山木高校との練習試合だ。序盤から、中沢と辰巳のシュートでゴールを決めて、試合を有利に進めていたが、後半、中沢のミスから大きく試合展開が変わる。サイド攻撃にディフェンス陣がついていけない。そして、山木高校の新山の高速クロスに対応できなかったのだ。
もののわずか、15分で3点をとられて逆転してしまったのだった。さらに後半にも2発とられ、残り3分で2対5と3点を追う状況だった。他の選手も、スタミナがなくなっており、全然走れていない。エースの沢田、攻撃の中心である宝来がいないとやっぱり、こういう試合展開になるのか。自分が腹立たしかった。俺は、ボールを要求するために両手を挙げ、手招きのポーズを何度も見せた。
しかし、なかなかボールは来ない。走ってるものの、オーバーしたパスやラインギリギリのパスしかこない。なんとか、なんねぇのかよ。普段、パサーである辰巳がワントップをしていることもあり、なかなかいいボールがこなかった。ピピッー。ホイッスルとともに、俺は顔に手を当てた。
【聖徳高校】
辰巳慎之介 FW
中沢初登 FW
井川直木 FW
山﨑研治 MF
山岸町 MF
唐沢悠太 MF
原田透 DF
野木斗真 DF
富山琉 DF
相田成都 DF
川上郡 GW




