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4 神父様

また、幾日かが過ぎてしまった。そして、日記を書くのを忘れてしまった。私は日記を書くのに向いていないのかもしれない。この幾日というのは、なんの代わり映えもしなかった。であるから、何日経ったのかすらもうわからない。昨日を思い浮かべても、今日を思い浮かべても同じなのだから時間がわからないというわけだ。


ぜっさん嵐の中にいる。2日前から日の目を見ていない。大部屋にずっといる。暇だった。こうずっといると、神父様といえど流石に話題が尽きてくるのか、黙っている。部屋の空気は鬱々としている。


食料は、後20日持つらしい。予定通り進んでいれば、三日後に陸につくらしい。どんな陸地につくのかは全くわからないが、楽しい旅になると良いなとやはり思う。ただ、こんな嵐程度でなびく私達であると、もうだめだろか。すぐにやられてしまいそうだ。


日記を思い出せたのは、船が嵐で揺れたときに転び、胸ポケットに痛みを感じたからだ。体の重要部分の近くにしまっているはずなのに忘れるとは、、ひどいものだ。紙と筆は適当なところから仕入れている。


しかし、改めてわかる。こう日記に記してみると、私が何もやっていないという事実に。陸に付き、行動をする際にはチームワークが必要だ。だから、仲良くなっていなければならない。だが、私はただじっと黙って、立ったり座ったりしているだけだ。


よし、こんな暇なのだ。なんとかして皆に話しかけ、親しくなっておこうかと思う。


どうやら私はひつを取ると勇気が湧いてくる人間のようだ。まぁ、それは良い。ああ、良いことだろう。さて、最初は誰に話しかけるか。同じ村のやつが良いかな。神父様以外とは、同じ村のやつでもそう話さない。今のうちに親しくなっていないと、足手まといだと切られてしまうかもしれない。



近くにいたのは、素晴らしいエリック。目をつぶって佇んでいる。怖いから後回しにしよう。


ミコを見かけた。目をつぶって座っている。邪魔してはいけないし恥ずかしいから後にしよう。

ケンとクリスに会った。ひそひそ喋っている。間が悪いようだ。後にしよう。



とすると、最初に話しかけるのは神父様であろうか。竜兄は船の操縦をしているし、火兵衛は怖い。


神父様は、なにかの書をじっと呼んでいた。話しかけては悪いかと思ったが、勇気を持って話しかけた。


「神父様、こんにちは」


神父様は、一息ついてから答えた。

「おお、書太郎か。こんにちは。お前も読をやっているのか」


読、なんのことか分からなかった。神父様は右手をもち上げて、書を示した。ああ、読書のことか。


「書太郎、いつのまにそんな技を覚えた?」


神父様にしては、珍しく驚いている。左手の指の先は、私の手を向いていた。私の手は、一人でにこの日記を書いている。と書きながら聞いているのは、失礼だろうか。


ふむ、私はどうやら動きながら書くことができるらしい。まぁ、そんな事、なんの役にも立たないが。伝えるように書くのは苦手だ。


「いや、なんでも無い。お前に自分を攻める無用の種を与えた。忘れろ」



「それで、何用か」

神父様は、ゆっくりとおおらかに私と対面した。何故か私は萎縮してしまい、次の言葉は敬語になった。今は教えを受けているわけではないのに。


「ただ、仲良くなりたいなぁ、と思いまして、、」


「何故に」


「暇ですから、でしょうか」


少し間をおいて、

「であるならば、私以外が良いだろう」


それはなぜかと、私が考える前にその理由を神父様は言った。


「暇ですから、でしょうか」



「私は、お前のことを十分に知っている。お前も私のことを知っているだろう。であるなら、私とお前は親しい真柄だと言える」



「しかし旅は長くなる。他にも親しいモノを作っておいたほうが良い。現にお前は暇だと言ったな。それならば、他のものも暇をしている今が絶好の機会だと言えよう」


「お前の悪い癖だが、挑戦をしない。意気地がない。私に「仲良くなりたい」などと言ったのは、他の者にそう話しかけるのが怖かったからであろう。私とお前とは親しい真柄であるというのに。分かっているぞ。お前とは親しい真柄であるからな」


「ココは神父らしく、方向を指し示そう。ケンとクリスに話しかけろ。それが良い」



「私は、現地の言葉を覚えるために書を読む。では、健闘を祈る」


「ありがとうございました」

神父様のお説教は比較的早く終わり、私は開放された。おせっかいで優しいお方だ。勉強熱心でもある。私の尊敬する人第一位だ。

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