紳士とは(哲学)
「......それで、どちらさま?」
「おっ、そういや自己紹介がまだだったな。俺は『ジェントル』、ジェントルさんと読んでくれてもいいぜ?」
「おいおい、紳士っぽさの欠片もねぇ喋り方してんのにジェントルさんとか何の冗談だよ、世の中の紳士に喧嘩売ってんの?買うよ?俺紳士じゃないけど。あっ、ちなみに俺は『ヒロト』、よろしく。」
「おう、よろしく......って、酷くない!?紳士っぽくないのは知ってるけど初対面でそこまで言う!?!?」
もちろん、俺も誰彼構わず初対面で煽り散らかしたりなんてしない。
ただ、有咲から貰った大切なゲームで訳の分からない負け方をし、フラストレーションが溜まった状態でログアウト前に口調と名前が合ってない惚けた顔してる奴に話しかけられれば......少し当たってしまうのも仕方ない。そう、仕方ないのだ。
「おいおい、男なら細かい事は気にすんな。それよりジェントル(笑)、俺に何か用でもあったのか?」
「コイツ......!人の名前を鼻で笑いながら言いやがって......!!しょうがねぇ、対戦でボコってどちらが上かハッキリさせてやるよ!」
「おもしれぇ、ちょうど変な負け方してストレス溜まってたところなんだよ......相手にしてやらぁ!あっ、コースは高速道路以外でお願い。」
「まぁ、あんな負け方したら高速道路やりたく無くなるのは分かるが......追突荷台バグを対戦でまともに成功させてんの『arima』くらいだぞ。」
「えっ!?そうなの!?じゃあ、このゲームがおかしいんじゃなくてあの時1位だった奴がおかしいだけなの!?!?」
「そういう事だ。あいつはたまに発生する災害みたいなものだからな。詳しいことは......俺に勝てたら教えてやるよ!!」
『プレイヤー、ジェントルから対戦が申し込まれました。モード:1 or 1、コース:ランダム。この対戦を受諾しますか?』
『Yes or No』
急に目の前に表示された画面に少し驚きながら、迷いなくYesを押す。
『対戦が受諾されました。両プレイヤーを対戦フィールドに転送します。』
対戦前のピリついた空気、少しうるさいエンジン音、そして俺が被ってる少し生臭さいコバンザメの着ぐるみ......
「やっぱシャクレ7特有のこの雰囲気はたまらねぇな......レースするの2回目だけど。」
「いや、ベテランっぽい事言っておいて2回目って普通に初心者じゃねぇか!つーかお前初心者だったの!?!?」
ジェントルとかいうチョウザメの着ぐるみが何か騒いでいる。全く、レース前くらい静かに出来ないのだろうか......そんなんだからジェントル(笑)なんて呼ばれるのだろう。
というか、何気に初めて見るコースだ。
「見た感じ人通りの多い都会コースって所か。」
「そう、このコースは高速道路と違い障害物となる車の速度こそ遅くなっているが、その代わり轢いたらG-ホイールの速度が落ちるペナルティが発生する人間が歩道からいきなり飛び出してくる。初心者なら轢く回数5人以下なら上出来って所だ。」
「わざわざコース説明してくれるなんて余裕じゃねぇか............これで負けたら赤っ恥ですね^^」
「高速道路でのレースを見てたからおめぇが結構上手いことは知ってるけどよ......このレースが2回目とか言ってる初心者に負ける程俺も鈍ってねぇ。少し情報を渡したところで結果は変わんねぇのさ!」
「残念だが......運が絡まないゲームで負けるつもりはねぇ。叩き潰してやんよ。」
そしてレーススタート前のカウントダウンが開始され......
シャクレ7全国ランキング8位『ジェントル』vs 初心者の戦いが今、始まる。
少し短いのは許してください、何でもしますから。