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「レースゲーって?」「ああ!」


複数あるコースの1つ、《高速道路》にて1人......また1人とサメの着ぐるみを着たプレイヤーが背後から迫る軽自動車に吹き飛ばされていく。


(軽自動車に轢かれてコースアウトがこれで3人、堅実なプレイで車を回避しつつゴールを狙っているのが俺合わせて2人、そして何より初っ端から軽自動車に突っ込んで行ったあげく、その衝突の反動で15メートル程離れた軽トラの荷台に着地しやがったコースアウト組の3人がしたかったのであろう技術の見本となったヤベー奴が1人って所か......)


このコースの使用上、障害物として後方から結構なスピードを出してプレイヤーを抜き去る車の方がG-ホイールよりも速度が出るため、軽トラの荷台に乗っかったヤベー奴と俺との差が開いていく。

この時点でもう1位を取るのは不可能だと判断し、残る最後のプレイヤーを引き離しにかかる。

胸の中からふつふつと湧いてくる感情をおさえながら......



結果は2位だった。




「いや、おかしいだろ!!何で6人中4人も車に突っ込むんだよ!お前らがバンバン車に突撃するからもうレースゲーじゃなくて別ゲーになってんだよ!つーかそもそも何でバイクで競い合うゲームで、荷台とはいえ車に乗れるんだよ!!それならもうバイクじゃなくて車でレースすりゃいいじゃん!!あぁもう、期待して損したぁぁぁぁ!!!」


レース後、マイルームでレース中に溜まりに溜まった不満を吐き出しながら、俺はこのゲームを始めるきっかけとなった妹の有咲(ありさ)を思い出していた。





九州最大の規模を誇る病院である『九大病院』、その中にある病室のベットで寝っ転がっている俺のもとに、有咲がお見舞いにやって来た。

いつもなら2時間程話して帰って行くのだが、今日は渡すものだけ渡したら帰るそうだ。


「それで、渡すものって何なんだ?」


「ん、はい......これ。」


そう言って渡された袋の中には、とあるゲームソフトが入っていた。


『シャークレース7(セブン)

通称シャクレ7(セブン)、10年程前に発売されたVRレースゲーム、『シャークレース』のシリーズ作品で、今作で7作品目。

プレイヤーは<G-ホイール>という専用のバイクに跨り、「サメの着ぐるみを着た状態で他のプレイヤーと対戦する」という少し特徴的な所もあるが、ドライバー視点で白熱したレースが出来るため、ハマる人はとことんハマるタイプのゲーム。と、評価されているらしい。


「えっ!?シャクレ7じゃん!!どしたの!?たしかまぁまぁ高かったと思うんだけど!」


「おじいちゃんに貰った......お年玉を使ったから。」


「おまっ、お年玉ってのは自分の為に使う物だぞ?それを、お前ってやつは...... 」


「いいの。最近のにぃには......少しつまらなさそうな色してたから......これで少しは楽しんで貰えたら......私は嬉しい。」


「有咲......ありがとう、大切にする。」


「ん、それじゃあ......私はそろそろ帰るね。」


「おう、また暇があったら一緒にゲームでもしような!」


コクリ、と頷いて病室から出ていく有咲を見ながら手を振る。

有咲の足音が遠ざかって行くのを確認した後、自然とため息がこぼれてしまう。


「はぁ......いや〜最近はやる事も無くなってきたし何か面白い物ねぇかな〜とは思っていたけど、やっぱバレてたか...... 」


有咲は、人の感情が色で視える共感覚の持ち主だ。

その『人とは違う』という特異性から昔は苦しんだりもしていたが、今となってはその共感覚にも慣れ、普通の学生生活を送っているようだ。

今回は共感覚で俺が『やる事が無い』と思っていた事に気付いていながら、ゲームを渡す直前まで気付かないふりをしてくれたのだろう。


「全く、俺には出来すぎた妹だよ......よし、有咲がせっかく心配して買ってきてくれたんだ、さっそくプレイしないとな!」






......と、意気込んでいた時期が俺にもありました。

ぶっちゃけ、聞いていた話と全然違う。

G-ホイールに乗ってドライバー視点での白熱したレース?

ハッ、バイクに乗った傍観者視点での追突事故見学の間違いでは?

多分、この評価を書いたやつは頭G-ホイールだわ......。


「ごめんな、有咲......せっかく買ってきてくれたゲームだけど、続けるのちょっとキツイかもしれねぇわ...... 」


そう言いながらロビーに戻り、一旦ログアウトしようとして......いきなり前にいたプレイヤーから話しかけられた。


「なぁ、さっきあったすげぇ試合で2位だった奴ってもしかしてお前?」


「えーと......すげぇ試合ってのが追突事故が多発してた試合なら俺だと思うが..... 」


「おっ、やっぱそうなのか!いや〜プレイヤーネーム見てそうじゃないかと思ったんだが正解だったみたいだな!」


そう言って、声質からして20歳くらいの青年はニカッと笑った。

ボクっ娘のセリフを書き続ける自信が無かったので話しかけてきたプレイヤーをボクっ娘から青年に変更しました。

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