4話「リーザ VS ユリア」
バトル回です。少し短めかもです。ユリアは書いていて楽しいキャラです。
○ 月・第5層・草原
対峙しているリーザとユリア。
お互いの距離は離れている。
ユリア、何かを思い出したように。
ユリア「あっ、自己紹介、忘れてた」
リーザ、緊張は解かない。
ユリア「私の名前はねぇー、ユリアっていうの。よろしくね、リーザお姉さん」
リーザ「私の名前は知っているんだ。私はあなたの名前は知らなかったけど」
ユリア「私は物知りだからー!」
リーザ「そう」
と、ユリアを注視。
リーザ(M)「この子、隙がない……」
ユリア「えへへー。あんまり驚かないんだねー。じゃあ、これは聞いたら驚くと思うなー」
と、少し間をおいて。笑顔で。
ユリア「ナンバーは3(さん)だよ」
リーザ、驚きを隠せない表情。
ユリア、ハンマーの持ち手にあるスイッチを押し、ブーストを吹かす。
そのブーストを利用し、一気にリーザとの間合いを詰める。
スピードを維持したまま。ハンマーをリーザに向かって振り下ろす。
リーザ「っ!」
ハンマーを大剣で受け止める。
しかし衝撃に耐え切れず、大剣もろとも吹っ飛ぶ。
何本もの木をなぎ倒していく。
リーザ、大きな岩に背中からぶつかり、止まる。
リーザの視界、少し乱れる(その際、岩埃が舞っている)が元に戻る。
視界の四隅に数字などが見える。
ユリア、ゆっくりと歩いてくる。
リーザ「くっ……」
と、大剣を支えにし、瓦礫の中からフラフラと立ち上がる。
かなりのダメージを受けているよう。両膝部分が少しショートしているのが分かる。
宙に浮いている野球ボールサイズの機械が、遠くからリーザたちの様子を見ている。
その機械は監視カメラのような機構だ。
○ 大型戦艦アスモデウス・司令官室
椅子に座り、目の前の透過型ディスプレーを見ているエーデル。
映っている映像はリーザとユリアの闘い。
リーザが大剣を支えに立ち上がろうとし、
ユリアがゆっくりとリーザに近づいているのが見える。
エーデル「……」
神妙な顔つき。
自動扉が開かれる。
霧江「(司令官室に入りながら)はぁ……。ユリアさん、どこに行ったのでしょう」
エーデル「(透過型ディスプレーを指さしながら)ここにいるぞ」
霧江「(驚き)えっ!」
と、急いでエーデルの横に。ディスプレーを見て。
霧江「いつの間に……」
エーデル「さぁ」
霧江「ここはどこですか?」
エーデル「アビス・ルナ第5層」
霧江「居住区じゃないですか!」
エーデル「そうだな」
霧江「……。この映像はどうやって?」
エーデル「ん? ああ、こっそりとユーリカを尾けてもらっていた(手で野球ボールサイズを表わし)。こんな機械で。なんとなく読めたんでな」
霧江「……。わたしが追いかけなくてもよかったのでは……?」
エーデル「命令はしていないぞ(ニヤッと笑う)」
霧江「はぁ……。とりあえず止めてきます」
と、エーデルのそばから離れようとし、
エーデル「まぁ、待て」
霧江、立ち止まり、振り返る。
霧江「でも、早く止めないと……。民間人に被害が出る前に」
エーデル「大丈夫だ。距離は離れている。それともなんだ? ナンバーツー様はこの現場まで行くのに、そんなに時間がかかるのか? (ニヤッと笑う)」
霧江「(ちょっとムッとした表情になり)わたしをなめないで下さい」
エーデル「だろう? なに、ちょっと確認したいこともあるんでな」
霧江、エーデルの横に。ディスプレーを見る。
霧江「確認したいことですか?」
エーデル「ああ」
○ 月・第5層・草原
ユリア、リーザにハンマーを何回も振り下ろす。そのスピードは速い。
リーザ、ひたすら大剣でユリアの攻撃を受け止める。防戦一方。
ユリア、リーザから距離を取り、ハンマーを下ろす。
ユリア「(不機嫌な表情になり)お姉さん、なんで本気出さないの?」
リーザ、大剣を構えたまま。
リーザ「……受け止めるので精いっぱいなだけだよ」
ユリア「わたしをなめてるの?」
リーザ「本当だよ」
ユリア「ふーん」
と、今までよりもさらに速いスピードでリーザに接近する。
一瞬で、リーザの目の前に。
リーザ「!?」
ユリア「これでも本気を出さない?」
と、ハンマーのブーストを吹かす。足下からリーザの顔面をめがけて狙う。
リーザ「コードB!」
リーザの体がチーターのように変形。ハンマーは空をかすめる。
ユリアの体は隙だらけに。
ユリア「(うれしそうな表情で)あは!」
リーザ、変形したまま後ろに一蹴りで飛び、ユリアから距離を取る。
と、変形を解除し、人型に戻る。
ユリア「(不機嫌な表情に戻り)なんで……?」
○ 大型戦艦アスモデウス・司令官室
霧江「(ディスプレーを見ながら)今のは……なんで反撃しなかったのでしょう? チャンスだったのに」
エーデル「(ディスプレーを凝視し)……やはり、やはりそうなんだな……」
霧江、エーデルを見て。
霧江「司令官……?」
○ 月・第5層・草原
ユリア「なんで、なんで、なんで、なんで、なんで! なんで、本気を出さないの!」
と、ブーストを吹かしたハンマーをリーザに何回も振り下ろす。
リーザ「くっ……」
大剣で受け止めている。大剣に少しずつヒビが入っていく。
リーザの両足がハンマーの衝撃により、地面に少しずつ沈んでいく。
○ 大型戦艦アスモデウス・司令官室
エーデル「(ディスプレーを見ながら)怜」
霧江、エーデルを見ながら。
霧江「はい」
エーデル「分かったか? わたしが確認したいこと」
少しの間。霧江、何かに気づいたように。
霧江「……まさか……」
エーデル「そのまさかだ」
○ 月・第5層・草原
ひたすらユリアの攻撃を大剣で受け止めているリーザ。その表情は必死と焦り。
○ 大型戦艦アスモデウス・司令官室
エーデル「(ディスプレーを見ながら)リーザ、彼女は人の姿をしたものには攻撃できないんだ」
○ 月・第5層・草原
ひたすらブーストを吹かしたハンマーを、リーザの大剣に振り下ろすユリア。
その攻撃に大剣を盾にし、ひたすら耐えるリーザ。
その間にもリーザの体は地面に少しずつ沈んでいく。
大剣の亀裂がひどくなっている。今にも折れそう。
リーザ「くっ……」
ユリア、一瞬ハンマーを振り下ろすのをやめ、力を込める。
怒りの表情からニッコリと笑い、
ユリア「これで終わりだね!!」
ハンマーを思いっきり振り下ろす!
大剣を盾にするリーザ。
ハンマーに当たり、大剣が粉々になる。
ハンマーはそのままリーザの頭に向かって降りかかってくる。
リーザ「!?――」
と、覚悟を決めたように目を瞑る。
一瞬の間。ゆっくりと目を開けるリーザ。リーザとユリアの間。そこに霧江がいる。かがんだ状態。
両手にM60に似た銃を持っている。
一丁の銃口はリーザの頭に。もう一丁の銃口はユリアの頭に。
リーザに向けている方は引き金に手をかけていない。
ユリアに向けている方は引き金に手をかけている。
ユリアのハンマーは霧江の頭ギリギリのところで止まっている。
霧江「(地面のほうを見たまま)これ以上続けるなら撃ちます」
ユリア、少しムッとした表情に。視線が引き金に手をかけている箇所に。
観念した表情になる。
ユリア「はいはい。分かりましたよーっと」
と、ハンマーを背負う。
霧江、引き金に手をかけたまま。ユリアを見る。
霧江「ついてきてもらいますよ」
ユリア「はいはーい」
霧江、リーザを見る。
霧江「あなたもですよ。リーザ・パーシヴァル」
リーザ「ああ……はい……」
○ 大型戦艦アスモデウス・司令官室
リーザとユリアが並んで立っている。その前にはエーデルも立っている。
エーデルの横には霧江が立っていて、後ろ手を組んでいる。
エーデルがリーザたちをたしなめている様子。
リーザはエーデルの目を見据えて、反省している様子。
ユリアは満面の笑みである。
霧江、リーザをジッと見る。
霧江(M)「さっきの話……」
○ (回想)大型戦艦アスモデウス・司令官室
エーデル「(ディスプレーを見ながら)リーザ、彼女は人の姿をしたものには攻撃できないんだ」
霧江「それは――」
エーデル「正確には精巧な人の姿をしたものとなるのかな」
霧江「私たちサイボーグのような……ですか?」
エーデル「その通りだ。だが彼女はどうやら人の姿をしているもの自体が苦手らしい」
霧江、黙って聞いている。
エーデル「過去のVR空間上での戦闘でも、面白い結果が出ている」
霧江「面白い結果?」
エーデル「(うなずき)人型の機械と相対した時、リーザは数秒だけ反応が遅れるんだ」
霧江、少し考えるように。
霧江「リーザ・パーシヴァルは人型の機械には多少の抵抗があり、より人の姿に近い何かにはかなりの抵抗があると」
エーデル「まあ、そういうことだろうな」
霧江、ハッとして。
霧江「ユリアを彼女の元へ行かせたのは、それを確認するため……?」
エーデル「(微笑し)そうだ。大正解」
と、椅子から立ち上がり、背後にある窓のそばへ。外を見る。
外には青空(人工)が広がっている。
エーデル「まあ、私たちと同じぐらい精巧な人の姿をしたものは、人間以外にはいないだろうけどな」
と、遠くを見る。
霧江、そんなエーデルを見ている。
○ 大型戦艦アスモデウス・司令官室
霧江、エーデルを見ている。
霧江(M)「私たちと同じぐらい人間に似ているもの……。他にいたりするんでしょうか……。もしいたならその時は……」
と、リーザを見て。
霧江(M)「……。まあ、考えすぎでしょうか……」
○ 地球・とある場所・広場
天井に穴が空き、太陽の光が差し込んでいる広場。1本の大木がある。
そのそばにはノア(見た目は17歳)。笑顔で小鳥と遊んでいる。
小鳥の種類はスズメやセキセイインコ、オウムなどさまざま。
ノアの髪型はセミロングで、色はシルバー。服装は白色。中肉中背。
手足と頭が出せる部分に穴が空いているだけの簡素な服を着ている。
カインの声「マスター」
ノア「(小鳥と戯れながら)なんだい?」
カイン「皆、そろいました」
ノア「そう。ありがとう」
と、カインに振り返る。小鳥たちが飛んでいく。
ノア「じゃあ、行こうか」
と、カインとともに広場から出ていく。
○ 同・同・王座の間
奥から出てくるノアとカイン。ノアの目の前には王座。
ノアから見て右側に男が2人、左側に女が3人。直列に並んでいる。
ノアの横にいたカイン、男側の列に並ぶ。
ノア「そんなにかしこまらなくてもいいのに」
と、王座に座る。
カイン「我々なりのけじめです」
ノア「(フフフと笑い)じゃあ、定期報告を始めようか」
第4話(終)