先輩に会いたくて涙があふれるってこと!
ぼく、毎日警視庁へ行った。先輩には会わせてはもらえなかった。
取り調べ中だから、しばらく無理ということだった。
まさか取り調べって、永遠に続くんだろうか?
思い切って職員室に、先輩の担任を尋ねることにした。
職員室に入ったら、先生方が一せいにぼくの方を見て、その後、ヒソヒソ、何事か話してた。
先輩の担任の礒部先生の机に向かう。三十代のやさしそうな女の人。話をするのは今日が初めて・・・
「すみません。サキ先輩・・・いえ、月影先輩のことで・・・」
礒部先生は面談室で待っているように言った。
先生たちって、じっとぼくのこと見ているのが分かる。
僕が部屋に入ってしばらくして、礒部先生が入って来た。脇にファイルをはさんでた。
「君、一年の日下健君ね。どうしたのかしら」
礒部先生が、椅子に座るように促した。
ぼくって座らなかった。
「月影先輩はどうなるんでしょうか」
警視庁に行っても面会できないって事情を話した。
先生は悲しげに目を伏せた。
「先生にも分からないの。何度か問い合わせもしてるけど、教えてはもらえない。
でも松山さんという警部さんが、ハッキリ言った。
ずいぶんひどいことしてるようだから徹底的に調べると・・・
本人は否定してるって言ったけど・・・」
礒部先生のため息・・
「大がかりな盗撮写真の販売業者が逮捕された件
はずかしいけど、うちの学校に、盗撮をして業者に販売してた生徒がいるの。
月影さんは、彼らから、うわまえをとっていたようなの。
月影さんに、盗撮写真を撮影していた生徒の名前を自白させると言ってた。
このままでは業者を起訴できないので、写真を販売した人間を突き止めるんだと・・・」
ぼく、下を向いた。このままだったら月影先輩と別れたまま、二度と会うことなんてできないかもしれない。
先生に見せないつもりだった。
でも、ポツン、ポツンと床を濡らしていく涙・・・
先生の目にも見えたみたい・・・
先生が、僕の肩に手を置いた。
「ありがとう。月影さんも、あなたみたいな後輩を持って幸せと思う」
先生が持ってきたファイルを開いた。
「前にアンケートをみんなに書かせたこと覚えてる。この学校について・・・」
先生が、ある頁を僕に見せてくれた。
<この学校、なんにもスキじゃない。コウハイといっしょにいるときだけ楽しい。すごーい短い時間だけど。時間が止まって、じゅぎょーなんかにならなきゃいい>
アンケート用紙には、「月影サキ」の名前があった。
すぐに腕で顔をぬぐった。
でも遅かった。
床に落ちる涙も、嗚咽も、止められなかった。
礒部先生は、僕の肩をやさしくさすってくれた。
「ごめんなさいね。先生の力不足だった。いま、本当にそう思った。君を、君を、こんなに悲しませることになって・・・月影さんも、きっと同じだと思う」
先生の声ってかすれてた。




