先輩ってご機嫌ななめってこと!
松下さんたち帰ってった。
三十分くらいして、先輩が戻ってきた。
ぼく、痛めつけられたのが分からないよう制服の汚れを払ってあった。
先輩、不機嫌に黙ったまま、宿題引ったくった。
「面倒なんだよな、君!
校則がどうとか、学校ではスマホ見られないとか、ややこしいこと言って!」
先輩、ぼくの顔のぞきこむ。
「あたしの機嫌とろうって一生懸命の日下君!」
体中が痛い。だけど先輩に気づかれたらいけない。
もともと松下さんたちのこと、嫌ってるみたいだし・・・
「『好き』
とか嘘言っても、あたし機嫌よくならねえよ。
スマホ使ってくれない?
大事なこと、すぐ連絡できるから!
あたしサ。聞きたくないんだ!
『校内では使用禁止でーーーーす。使えませーーーーん』
なんてサ」
先輩ったら、ぼくの前でくねくね体動かしてる。
すみません!これってぼくのマネなんでしょうか?
「こんなこと言ってサ。あたし怒らせたいんかな」
「ぼく、こんなこと言ってません!」
「なにっ!」
「だって!言葉なんか伸ばしてません!
『使用禁止です。校内では使えません』
って言いました」
急に襟首つかまれた。
「一度しか言わねえ!機嫌直してやる!殴るの半分に減らしてやる!
スマホで連絡とるんだ!」
「三時間目の休憩時間と昼の休憩時間。先輩のクラス尋ねます。
予定聞きに・・・」
「そっか!」
襟元強く引っ張られた。
「日下君。そういうつもりか!
一年が二年のクラスのあたりうろついてたら、ぜったい先コーのヤローに目つけられる!
ジワジワ、あたしを追い詰めたいわけか。
さすが優等生だよ」
「クラスメイトの人、ぼくのところによこすの止めてほしいんです。
それだけです。だからぼく・・・」
「なんでイヤなんだ!」
「先輩のやってることってイジメです!」
汗がどっと噴出した。涙が流れ落ちた。
「そうだよ。イジメてんだよ。
昔、あたしもイジメられてたんだ!
弱けりゃイジメられる。
強けりゃイジメる。
世の中ってそういうもんなんだよ。
優等生の日下君によく教えてやるよ」
頬が鳴った。
痛みが続いた。
そして火花と閃光!
よろけたぼくって、そのまま・・・
先輩に足ひっかけられて倒れてた。
こんどこそ我慢できなかった。
松下さんたちに痛めつけられたところ、死にそうなくらい痛い!
松下さんがぼくのこと、「弱虫」って言った。
先輩もそう思ってる!
だってぼく・・・
体の痛み我慢できなくてワーワー大声出して泣いた。
これで今日、二度目。
ぼくってホントに「弱虫」なんだな。
先輩、屋上のドアに向かって歩き出す。
ドアが開いた。
安田さん!
ぼくと目が合った。ハッとした顔。
こちらに急ぎ足。
「おい」
先輩ったら、超不機嫌に安田さんに声かける。
「お前に美柳と一緒にやってもらうことがある」
「サキさん。なんですか?」
「そこにいる怪しい少年を・・・」
先輩がぼくの方見る。
大きな目が一瞬白くなった。
一番怖いっていわれる瞬間。
「死ぬまでぶちのめすんだ」
先輩って、そう言って口元直角にして笑ったんだ。
「サキさん」
安田さんの泣き出しそうな声。
「忘れるなよ。今度な・・・
美柳んとこ行くぞ」
ドアのところで立ち止まる。
ぼくのこと見て、もう一度楽しそうに笑った。
「覚えときなよ。優等生の日下君!
あたし人の命のことなんて、なんとも思わねえ。
日下君の細い首、締めることだってサ」
先輩・・・ぼく、なんて答えたらいいの?
「君の命取ったらサ。
君、優等生って思われてるから、あたしの一方的な『リンチ』とか『いじめ』ってことになる。
ちょっと不起訴とか起訴猶予、ムリみたいだからナ」
先輩、背中向ける。
「安田!
お前、あたしらの仕事に勝手に手を出してるヤツのこと知ってんだろう。
変態親父や男狂いのババアとかの弱み握って金もらう仕事でサ。
あたしら以外のヤツがナ。
代わりに金とか宝石とかいろいろ貰ってんだぞ。カード使わせてもらってんだ。
お前、アッタマこないのか。
責任者は美柳だが、お前をアシスタントとして、あいつにつけたと思ったけどな。
お前、美柳助けたくないんか?
勝手にやってるヤツ分かってんだろう」
「松下ですか?」
「優等生ってヤツは相手にしにくいな。
下手すりゃ、こっちがやられる。
日下君!」
ドアを開けながらもう一度、こっちを見る。
「君だってそう思うよな」
ドアが閉まった。




