先輩がカッコいいって言ったこと!
ゴリラそっくりの人が顔真っ赤。
「てめえ!よくも猿脇さんのことを!」
後ろの男子が叫ぶ!
「バカヤロー。だれが『猿脇』だ!
『宮脇』!
宮脇五郎だ!」
ゴリラ・・・じゃなく宮脇さんの絶叫。
少し離れて腕組みしたブレザーの男の人。
スキンヘッドに眼鏡かけてる。
「俺は白鳥高校を代表するロックバンド、『ギャオス』のエレキギター担当。
ネイチャー・ハラ・アートンだ。
間違えるな」
なんか長い名前のスキンヘッドの男の人の大声!
そのときだった。
「君らぼくに余計な時間を使わせるな」
明るくさわやかな声が聞こえた。
ほかの生徒が、あわてて左右に散る。
ブレザーで長身。髪を無造作に分けた男の人。
ニコニコ笑いながらぼくに近づいてきた。
笑ってるけど、目は冷たい。
ぼくのすぐ前で立ち止まる。左右にがっしりしたブレザーの男性。同じ白鳥高校の生徒に違いない。
松下さん。ぼくのこと、バカにしたように見下ろしている。
「白鳥高校二年。生徒会長の松下信也だ」
イケメンっていうんだろうって思う。
だけどイケメンって、こんな傲慢な態度取るんだろうか?
「国内では東大などの名門校、そして国外でも名門校に留学したければ白鳥に来る。
梅華に来る人間は人生の敗北者だ。
粗大ゴミなんだよ。君は!」
松下さん、胸を張る。
「君のような粗大ゴミなんかとぼくが話をするなんてありえない。
君もそう思うだろう!」
突然、屋上に現れてさんざん悪口。ちょっとひどい。
「そうだ。ゴミ!」
「相手にしてやるだけ、ありがたく思え!」
一斉に罵声!
別にぼくって、なにも頼んでないのに・・・
「ぼくはアメリカの名門、カリフオルニアレーズン大学への入学をめざしている。
だが君も知ってるように、白鳥の学年NO1で生徒会長のぼくでもだ!」
別にそこまで知らないのに・・・
「合格率10%というデータが出た。
この大学への入学は、日本という小さな世界に留まらず、世界へ羽ばたく大きなチャンスを運んでくる。
日本でも大企業の社長の息子は必ず、カリフォルニアレーズン大学への入学をめざしているといわれる。
試験でなく、推薦での入学を狙うなら金が必要だ。
ぼくも同じだ。
だがぼくの親父が社長をしている三好カンパニーでは、金庫が少し小さい。
金が必要なんだ」
三好カンパニーの名前って聞いたことある。あんな有名な会社でも、社長の息子がカリフォルニアレーズン大学へ入学するお金を用意するのが難しいなんて・・・
松下さんがじっとぼくのこと見る。
極端な上から目線。
ぼくのこと、バカにしきってる。
「君にアルバイトさせてやる。
君に明るい学校生活を送らせてやる」
何言いたいの?
「おい!説明してやれ」
松下さんが顎を向ける。
宮脇さんがうなずく。
「お前、月影サキのパシリだろう」
冷たい口調。
なにも答えない。
「おい!なんか言えよ!」
宮脇さんの大声。
「ぼく、パシリじゃありません」
「こいつ、バカじゃないか?」
宮脇さんって顔ゆがめて笑う。
心の中、気づかれたらまずい!
「かっこうつけるな!俺たち分かってるんだから!」
ぼく、立ち上がった。
宮脇さんの顔、正目から見る。
目をしっかり大きく開く。
胸を張る。
「ぼく、先輩のパシリなんかじゃありません」
頬に痛み!
ぼく、地面に頭からぶつかってた。
「俺に逆らうのか!」
宮脇さんの怒りの叫び。
拳振り上げてる!
「ゴリ脇!」
後ろで松下さんの冷たい声。
宮脇さんが振り返る。
「松下さん。俺、ゴリ脇じゃ!」
情けない声。
「じゃあ、オランウータン脇にするか?」
「それは・・・あの・・・できればやめて・・・」
「頭が類人猿並みだな。
顔を殴ればすぐバレる。腹や胸。脚をやれと言ってんだ。
いい加減覚えたらどうだ!
アデランス・原!お前が説明しろ!」
原さんが不機嫌な顔でぼくに話す。
「君がパシリかどうかは別に、毎日、月影サキに会ってるだろう。
なんか気づいたことを色々教えてくれればいいんだ。
こいつの情報が欲しいんだ」
一万円札を投げつけてきた。
悲鳴をあげてあわてて回収し、千円札を投げてきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぼく、松下さんに宮脇さん、原さんの顔を見回した。
ぼくになにさせたいんだ。
「俺たちはな。月影サキのこと、色々知りたいんだ」
宮脇さんのイライラした口調。
「カッコいいです!」
ぼくって正直に答えたのにサ。
「ナニーーッ」
宮脇さんってひどい態度だった。
「不敵な目がカッコいいです。
ニヤッて笑う口元がカッコいいです。
スタイルだってカッコいいです」
ぼく、大声出した。
きっとハッキリ聞こえたはずなんだ。
「お前、アッタマおかしいんじゃないか。ゴミヤロー!」
「確かに頭よくないな」
宮脇さん、原さん、そして取り巻きの人たちがぼくに近づいてくる。
松下さんって、この人たちの後ろでニヤニヤ笑ってる。
「取り消せ!
月影がカッコいいとか・・・」
原さん、すごく無気味な声。
「そうだ。取り消せよ。
あのマッドキャットが、カッコいいとかな」
「取り消せ。
俺たちの言うことを聞け!」
ぼく、もっと大声出した。
「ぼくって、月影先輩の言うことしか聞きません。
あなたたちの言うこと、ぜったい聞きません!」
屋上に殺気が漂った。
ぼくに向けられてるんだ。
「こわいけど・・・」
ぼく、大きく深呼吸。
ハッキリ教えてやるんだ。
「大好きな先輩なんです!」




