麻衣ちゃんと昔に戻りたいってこと!
ファミレスって、夜でも人があふれてた。
麻衣ちゃんとぼく、向かい合って座ってる。
「好きなもの注文して!」
久しぶりに聞く麻衣ちゃんの声。
一緒に通学して一緒に遊びに行ってたときと変わんなかった。
ぼく口の中が痛いし、体中が痛かった。
だからサラダとジュースだけ注文した。
麻衣ちゃん、遠慮してるって思ったみたい。
メニュー指して、
「これはどう?あれは?」
って勧めてくれた。
隠せないって思ったんで、
「ごめんなさい。口の中、怪我してるから」
って正直に話した。
麻衣ちゃんの目が曇った。
「学校帰りでしょう。最初に家に行ったけどいなかった。
どうしてジャージなんか着てるの?
制服は?」
答えられない。
ぼく、下向いた。
「健ちゃん!なんか隠してるでしょ」
ぼく、ますます答えられない。
「梅華は最近、評判悪い。不良になにかされたんでしょう」
麻衣ちゃんってすごい観察力。
やっぱり警察庁の特別捜査員だから?
違うよ・・・
ぼくら幼馴染だからって思う。
「そうなんだ。なにかあったんだよね」
真剣な表情で、ぼくのこと見つめてくれる麻衣ちゃん・・・
小学生の頃、思い出した。
ぼくらって、あのときに戻ったんだろうか?
いけない!
今日、ずいぶん泣いちゃった。
でもまだ涙、残ってたんだ!
「麻衣ちゃん!」
いけない!
フツーに話そうって思った。
だけどやっぱり泣いちゃった。
「ごめんなさい。
仕事、忙しいって分かってます。
新聞やテレビで紹介してるの見ました。
麻衣ちゃんが仕事に一生懸命なんだって分かってます。
だけどお願いだから・・・
今夜一晩だけ、一緒にいて!
家に来てくれてもいいし・・・
よくないなら、ファミレスでもいいから・・・」
ぜんぶ話したら、もう我慢できなくて・・・
手で顔を覆ってた。
「ごめんなさい。
でも麻衣ちゃんと一緒にいたいんだ。
いろいろ話したい。
本当はすぐに会いたかった。
だけど迷惑かけるって思ったし・・・
なんだか近づきにくくなっちゃって・・・」
麻衣ちゃんってもう社会人なんだよね。
でもいま、ぼくが目の前に見てる表情って、昔の麻衣ちゃんと一緒だった。
いまなら麻衣ちゃんと昔に戻れる。
そう信じてた。
「ぼく・・・
本当はね。
麻衣ちゃんのこと・・・
ずっとずっと・・・」
最後まで言えなかった。
麻衣ちゃんの申し訳なさそうな声。
「ごめんね。
本当はそうするつもりで東京に来た。
ちゃんと明日休暇も取ってた。
でも明日、どうしても出勤しなきゃならない状況になって・・・」
麻衣ちゃんの声がだんだん小さくなっていく。
心の中のビデオテープが再生される。
通学路。
ぼくらふたり手をつないで歩いてた。
麻衣ちゃんが中学に入ってからだって、一緒だった。
小学校の校門まで、ぜったい手を放さなかった。
校門くぐってから、ずっと校舎まで麻衣ちゃんに手を振ってた。
麻衣ちゃんもニコニコ、手を振ってくれた。
だけど校舎に入ったら、麻衣ちゃんって、ぼくのそばにはいなくなる。
ひとりぼっちになる。
結局、ぼくらって・・・
ずっと一緒だったって思ってたけど・・・
そうじゃなかった・・・
いまとおんなじなんだ。
麻衣ちゃんには麻衣ちゃんの人生がある。
麻衣ちゃんには麻衣ちゃんの生活がある。
麻衣ちゃんには麻衣ちゃんの夢がある。
ぼくらふたり、もう離れ離れになるしかないんだ。
ぼく、フラフラ立ち上がった。
「健ちゃん!」
麻衣ちゃんの大きな声。
警察庁特別捜査部捜査員の麻衣ちゃんが目の前にいた。
グレーのスーツって、すごくかっこいい・・・
「ぼく帰る。
麻衣ちゃんも早く大阪へ帰って・・・
仕事大事だよ。
頑張って!」
「待って!まだ時間あるから!
食事しようよ」
麻衣ちゃんの声が背中で聞こえた。
ぼく、出入り口の自動ドアに向かってた。




