先輩って安田さんを許さないってこと!
先輩、大きな目を、もっと大きく開いた。
不機嫌に安田さんのこと見てる。
「てめえな。
あたしの分かる日本語しゃべれよ。
あたしはサ。
大キライな日下を痛めつけろって言ってんだ」
「大キライ」って言葉。こだまみたいに、何度も心に響き渡る。
「お前、イヤなんだな」
部屋中、ナイフのような空気!
安田さん、まだ震えてる。
横山さんったら困った顔。安田さんの肩に手を乗せてる。
物凄い音!
先輩が脚乗せてた机。
安田さんの方に倒れた。
先輩が立ち上がる。
三連フルートが振り下ろされる。
轟音。
机の脚が四本とも折れた!
轟音!
机がペシャンコになった。
三連フルートが左右上下に回転!
轟音!
机は消えていた。
大小のカケラが転がってる。
安田さん、下向いたまま。
まだ震えてる。
だけど部屋いっぱいの大声!
「日下君、今朝だって、逃げられたのに逃げなかった。
うちのことだって助けてくれた。
こんなにいい子なのに、サキさんは・・・」
「うるせえぞ・・・オイ」
先輩が舌打ち。
「日下に助けられて涙が止まらねえか。
じゃあ、永遠に止まらないようにしてやるよ」 」
先輩が横山さんに顔向ける。
「こいつを縛れ!」
横山さん、どうしたらいいか分からない。キョロキョロあたり見回してる。
だめ!
このままだと安田さんが!
ぼく、ベッドの上で思いっきり手足動かした。
ベッドが音立てる。
口にはブレザーの切れっ端を突っ込まれてるけど、なんとか先輩に伝えたい。
必死で叫んでみる。
なんて言ってるか分からないだろう。
だけどぼくがなにか話したいって分かるはず!
「ウググググググ」
先輩、こちらを見てくれた。
近づいてきて、切れっ端を口から取り出す。
ぼく、ありったけの大声で叫んだ。
「安田さんにひどいこと、やめてください」
安田さんが泣きそうな顔で、こちら見てる。
「ぼくのこと、好きなようにしてください。
安田さん!横山さん!先輩の言う通りにして!お願い!」
口にまたブレザーの切れっ端が押し込まれる。
安田さん、何か言いたそう・・・
そして先輩も・・・
先輩の大きな目が真っ白に見えた。
そして氷のように冷たく映えた。
「優等生の日下健君」
やさしい声。
「君ってかっこいいじゃん」
ベッドの脇に来て、ぼくのこと見下ろす。
「じゃあ、もっとかっこいいとこ見せてよ」
指の間に光るもの・・・
「どんなに痛くても我慢してみせろよ。
そうしたらあたし、君を専属のパシリにするからサ」
裁縫針って、こんなに光るものなの?
先輩が針を振り下ろす。
安田さんの悲鳴!
頬に激痛!
心臓が止まるような悪寒!
自分の体が氷のようになった!
すごくイヤな臭い。
さっきよりも強い。
血が思いっきり流れてるって分かる・・・
先輩が口元直角に曲げて、ぼくのこと見下ろしてる。
頭がボンヤリしてきた。
安田さんと横山さん、ぼくの方見てる。




