先輩って残酷だってこと!
音もなくドアが開く。
横山さん!
「来たな!」
横山さんが先輩のところまで来る。
先輩に色々なものを渡す。
裁縫針セットCと書かれた箱。
箱の中に十センチくらいの裁縫用の針が十本。
角氷のたくさん入った銀色の氷入れ。氷をつかむハサミ。
そして外国の煙草が三箱。
先輩ったら、こちらに目を向けたまま、横山さんに話しかける。
「お前を、名前だけ演劇部に入れたワケ分かってんな
なんでも芝居で使うからで済む。
大澤も演劇部だが、あいつも忙しいから、これからはお前に頼むからな‼︎
煙草、王さんが用意しといてくれただろう‼︎」
そういえば先輩も名前だけは吹奏楽部だって話。フルート持ってる口実なんだ‼︎ちゃんと部活やればいいのにって思う。
「お前らに勉強させてやる。
捕まえたヤツが、言うこと聞かないときの方法だ。見てろ」
先輩が裁縫用の針を指でつまむ。
「やっ、やめて!」
思わず大声!
思いっきりひっぱたかれた。
「てめえの大切なもん、入れてやるよ」
ボロボロになったスクールシャツの切れっ端。
丸めて口に突っ込まれた。
「動くと死ぬからナ」
先輩がぼくのこと見下ろす。
先輩の白くて細い指がぼくの方に下りてくる。
鈍い光。
猿轡の奥で叫んでた。
「やめてください」
指先が胸のあたり。
一瞬、皮膚にしびれ。
気持ち悪さ。
痛み。
涙が流れる。
先輩が指先を自分の顔に持っていった。
裁縫の針をじっと見つめてる。
「血が出ねえように、軽くつっつくんだ。
失敗して少しくらい血が出てもかまわねえけどな。
こいつを繰り返すんだ。
だれでも頭おかしくなって、言うこと聞く。
心臓の弱いヤツならサ」
ぼくの顔、じっと見てる。
「死ぬナ!」
頭、こづかれた。
「日下君!どうする?死ぬんだってサ」
鼻も強くひねられた。
「そんときはサ。
王さんに手伝ってもらわなきゃね。
海とか山に運ぶんだよ」
何度も顔殴られた。
「もうひとつの方法だ。
お前ら、この煙草、一本ずつくわえて火をつけろ。
フツーじや吸えない高級品だ。
感謝しろ!
あたしにナ」
安田さんと横山さん、煙草をくわえる。
煙が流れる。
「よーし。その煙草の先を、こいつの皮膚に押しつけろ。
腹とか胸とか、皮膚の柔らかいとこだ」
安田さんと横山さん、煙草をくわえたまま、その場に立ち尽くしている。
目を大きく見開いてる。
「その後だ。
煙草押しつけたおんなじ場所に氷を乗せろ。
こいつは苦しいぜ。
陳さんが言ってたナ。
針。それから煙草と氷の連続攻撃。
我慢できたヤツはいねえ。
みんな言うこと聞くってナ」
先輩がベッドの近くに置いてある椅子に座った。
足を組む。
マシュマロみたいに白くてふっくらした太腿が丸見え。
「見ててやる。手を抜くなよ
これから一時間。
うまくやったら今夜はお前らの歓迎会だからナ。
それまであたし、楽しませろ」
先輩、ふたりのこと、見回す。
安田さんが下向く。
「イヤです・・・」
細くて小さな声。
「なんて言った?聞こえねえぞ」
安田さん、ブルブル震えてる。
「オイ!顔上げねえか」
安田さん、こっそりぼくの方を見た。
ぼくらの目がピッタリ合った。
「イヤです」
「オイ!笑えねえジョークだぞ」
安田さん、しっかり顔上げた。
「うち、歓迎会なんていりません。
日下君に優しくしてください」




