先輩ってぼくのこと大キライってこと!
長いこと、夢を見てた。
麻衣ちゃんとぼくで大阪の街を歩いてたんだ。
麻衣ちゃんがぼくに買ってくれたシャツとパンツ履いてた。
麻衣ちゃんが何度もシャツの襟やシワとかを直してくれた。麻衣ちゃんったら目を細めてぼくのこと見てた。
小学生の頃、何度もこの顔を見てた。
麻衣ちゃんのこんな顔を見たくて、麻衣ちゃんの言うこと、まるで弟みたいに、なんでも聞こうってしてたんだ。
にぎやかな街並み。
たこ焼きの店があると飛び込んで買ってきてくれる。
行儀悪いけど、ふたりで食べ歩きした。
何度も麻衣ちゃんに頭なでられてた。
いろいろ話してた。
だけどなにも声が聞こえてこない。
ただ麻衣ちゃんの笑顔だけ見てた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
現実に戻ったら、部屋の簡易ベッドの上。
おなかが重く痛む。
青く変色した腹部が見えた。
ブレザーもスクールシャツも、インナーシャツまで着てない。
下はブリーフだけ・・・
ベッドの回り。先輩に安田さんの顔が見える。
すごく恥ずかしい・・・
手足をX字型に伸ばされてた。
手首足首に手錠がはめられ、手錠の片方の輪はベッドの柵にはめられてる。
身動きできない。
手首の手錠に目を向ける。
(やっぱり・・・)
先輩、ロープだったらはどいてしまうかもしれないって言ってた 。だから手錠にしたんだ。
ベッドのそばの床。制服のブレザーやスクールシャツ、ズボン、乱雑に置かれてる。
先輩がぼくの学生服、足で踏みつけた。
「日下君」
先輩の口元、大きく曲がった。
「君みたいな人間サ。あたし大キライなわけ!」
先輩、ぼくの顔をのぞきこむ。
「子どもだろう。君サ。
背も低いし・・・
何月生まれだ!」
「三月三十一日です」
「あたし、四月三日だ。
二歳上なんだよ。あたしの方が・・・
こどもがエラそうにしやがって!
殺そうか!
初めてだけど・・・」
先輩の目が赤黒く光る。
「ぼく、先輩と一緒に勉強したいんです。
宿題だって・・・
お役に立ちたいんです」
痛っ!
頬をひっぱたかれた。
「勉強させてやるよ。
死にそうな痛みって、どんなものかサ」
先輩ったら、ぼくの学生服を靴でふみ回してる。
ブレザーやスクールシャツがホコリにまみれていく。
夢で見てた麻衣ちゃんのこと、思い出す。
母からのメール・・・
<学生服とかみんな麻衣ちゃんが買うって!
直接、学校が指定してる業者に連絡するそうだから。
一番いい服揃えるって言ってた>
「やめてください!」
大声で叫んでた。
「お願いです。
学生服にひどいことしないでください」
先輩がジーっとぼくのこと見た。
肩すくめる。
「大事なヤツに買ってもらったんか?」
すぐに返事できない。
「聞いてるぜ。大事なヤツに買ってもらったんだな・・・」
先輩に拳でおなかつつかれた。
痛っ!
「そうだナ」
「はい・・・」
先輩の口元がほとんど直角に曲がった。
「じゃあ、こうしてやるよ」
ブレザーやスクールシャツを拾い上げた。
そのまま宙に放り投げる。
先輩の手に三連フルート。
三連フルートが先輩の正面で、ぐるぐるって水車のように回転!
超高速!
フルートなんか見えない!
竜巻のような大きい渦!
ぼくの学生服が三連フルートの渦の中!
何度も宙に舞い、また渦に戻る。
宙に舞う度、ボロボロにちぎれていく。
「やめてください!」
先輩、聞いてくれない。
三連フルートの回転がゆっくりになる。
ボロボロの布切れが床に落ちた。
ブレザー、スクールシャツのボタンが転がる。
だめ・・・
もう我慢できなかった・・・
しゃくり上げて泣いちゃった。
すっごく情けないけど・・・
麻衣ちゃんの顔がハッキリ心に浮かんで・・・
どうしても涙が止まらなかったから・・・




