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さよなら、麻衣ちゃんってこと!

 先輩と五人の取り巻きに囲まれて東校舎へ向かう。


 「平気な顔してるじゃねえか。

 そっちの方がいいぜ。

 もう少し経ったらな。

 あたしの前で、ずっと涙出させてやる」


 先輩の意地悪い声。

 そしてもうひとつの声がかぶさった。

 麻衣ちゃんの送ってきた手紙の文章・・・

 麻衣ちゃんの声が、ぼくの頭の中を駆け巡る。


<健ちゃん


 青涼高校に不合格になったこと。

梅花高校へ入学のこと、健ちゃんのお母さんから聞きました。

 色々と話したいこと、たくさんある。

 いまさら、なにを言ってもムダだと分かってる。

 でも何度でも言わせて。


 「ごめんなさい」


 言い訳になるけど、健ちゃんが梅華高校受けたと、健ちゃんのお母さんから聞いたとき、すぐにでも会いに行くつもりだった。


 「悪い予感だけど当たっているるあの子、青涼高校に入るつもりない」


と、お母さんが言っていた。

 青涼高校はわたしのいた高校。

 健ちゃんが、そんなふうになったのは、わたしのことを考えるのが辛いからだと分かってる。

 だってわたし、健ちゃんの幼馴染で一番近い人間だったもの。

 すぐ休暇を取って東京に行くつもりだった。

 でも警察庁特別捜査部で対応しなければならない事件が発生した。

 きちんと申請はあげていたけど、立場上、予定通り休むのが難しくなった。


 「明日行く。必ず行く」


って考えているうちに、青涼高校の受験日になってしまった。

 どうせ東京に行けないのなら、すぐに手紙送るべきだったと後悔してる。

 だけど直接会って話さなければならないという思いだった。

 健ちゃんとしっかり向き合いたかった。

 それだけは信じてください。

 今度、東京へ行ったときは、きっと健ちゃんの家に行きます。

 お願いだから会って下さい。

 今後のことで相談したいことがあるの。

 絶対会ってね!

 TDLのパスポート、持っていく。

 取り合えず学用品送るから必ず使ってね。


                             大黒麻衣


 追伸


 何度でも言うから!電話番号教えて欲しい。                        >


 麻衣ちゃんのこと・・・

 ずっと好きだった・・・

 本当のこと言ったら・・・

 ぼく、麻衣ちゃんに、昔みたいに頭なでてもらいたかったんだって思う。

 ずっと麻衣ちゃんの胸の中で泣いていたかったんだって思う。

 ぼくって弱虫だったから、友だちにいじめられたって、麻衣ちゃんのとこに泣いて帰ったらそれでよかったんだ。

 でもぼく、もう麻衣ちゃんのとこには帰らない。

 どんなに辛くたって、自分が心に決めた女性ひとのところに行く。

 その女性ひとがぼくのこと、認めてくれるまで決してあきらめないんだ。


 手紙と一緒に送ってきたふたりの思い出。スマホからプリントした写真。


 <削除なんてしてないよ。

 ふたりで一緒に過ごした楽しい思い出だから・・・>


 麻衣ちゃんからのメモ。

 写真もメモもカバンの中にしまってある。

 たぶんずっと手元に置いておくつもり。

 一番大好きだった女性ひとだったんだから・・・


 「着いたぜ。東校舎だ!一階は吹奏楽部とかの部室があるから玄関からは入れない。非常用階段から入る。

 日下君!」


 首をギュッと絞められた。


 「細い首だな。すぐ骨が折れちまうな」


 手が離れる。


 「そのうちにナ!

 待ってろよ。優等生の日下健君!」


            

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