先輩に勇気見せたってこと!
ぼく、何度も咳込んじゃった。
「密告るか?
ワルイことしてる人がいますって!
やれよ!
優等生の日下君!」
先輩ったらうまそうに何度も煙を吐く。
「残念だな。
それくらいじゃ刑務所には入らねえし、逮捕もされねえんだ。
だけどナ。
密告ったヤツの前にすぐまた現れることはできるナ!
どうする!正義感の強い日下君!」
背筋が寒くなった。
先輩から心臓が凍るような殺気!
すっごくこわい・・・
だけど先輩にキチッと言いたいことがたくさんある。
だから勇気持たなきゃならないんだ。
麻衣ちゃん!
ぼく少しは、強くなったよね。
だから先輩の顔をまっすぐ見つめてます。
「だれにも知らせません」
「そうか?
あたしのサ。機嫌取って助かりたいんか!
悪いけどムリだな」
「知らせません。
でも先輩に煙草吸ってもらいたくありません」
先輩が黙った。
目が大きくつりあがってる。
口元から一瞬、笑みが消えた。
ぼく、ぜったい顔をそらさない。
「日下君!君ってホントに面白いこと言うね。
みんなもそう思うだろ!」
ぼく、できるだけ大声出した。
「面白いこと言いたいわけじやありません」
「そうか!あたしも話したいんだ」
すぐだった。
ぼくの体、吹っ飛んでた。
後ろに二十メートル。
仰向けに倒れてた。
胸が痛い。しばらく呼吸苦しかった。
フラフラしなから立ち上がる。
すぐ目の前に先輩の大きくゆがんだ口。
「悪いなあ。手がすべった」
フルートを左右の手で持ってた。
「手がすべらなきゃサ。君、この世からいなくなってたんだ・・・
この意味、優等生なら分かるよナ」
地面に落ちてるスクールカバン拾う。
先輩の前で汚れ払う。
先輩、またなにか言いかけた。
大澤さんが声かけてくる。
「サキさん。そろそろ・・・」
「そうか。分かった」
先輩がうなずく。
「山口、平松か。
あたしらサ。あのふたりで五百万稼ぐつもりだった。
百五十万はサ。五百万って言わねえんだよ。
残りはサ。君に払ってもらうから。
分かった?優等生君」
先輩、ぼくに背を向けた。
「先輩!ぼく、逃げたりしません!」
先輩、振り返らなかった。
「安田!横山!仕事終わったら歓迎会だ!
そのうち日下君のおごりで、改めてパーティやるからな」
この人たち全員、ぼくの前から消えた。
だけどよく考えたら全員じゃなかったんだ。




