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先輩の再登場ってこと

 受験が終わったら丸山君、ぼくのこと知らん顔で受験会場を飛び出していった。

 ひとりで校門を出て自宅に向かう。

 学校の東門沿いは小さな道路。片側は、古い住宅の裏手に面している。どの家も塀に囲まれてる。

 

 グキッ


 鈍い音。  

 突然、頭に激痛。

 松の木の枝が地面に落ちた。

 なにかで折られたような傷。

 頭部にヌルヌルした感触。

 さわってみると・・・

 赤い血がベットリと右手のひらについた。

 それほど深い傷じゃないみたいだけど、やっぱり痛い‼︎


 「どうしたの?日下君」


 後ろで聞き覚えのある声。

 振り返ったら・・・

 大澤さん、美柳さん、三杉さん。

 セーラー服の少女がふたり。ぼくと同じ受験生だ。

 ひとりは名前を知ってる。

 安田さん・・・

 ぼくと目が合う。そっと下向いた。

 五人の背後に・・・

 三連フルートを右手でブラブラさせてる先輩。

 ぼくの見た風景。

 学校の塀の内側から伸びた松の木。

 天に向かって伸びた松の木の枝の無残な傷。

そうか。先輩が・・・


 「なにかあったのか?」


 ぼく、黙ったまま、先輩のこと見つめる。


 「すべり止めで受験・・・

 もう二度とここに来ることないって思ってるだろう」


 三連フルートをぼくに見せびらかす。


 「君、来なくてもサ。

 あたしらが行く。

 いま、ちょっと大事な用が入ってサ。

 すぐ行けないのが残念だよ。

 だけど必ず行くからサ」


 ぼくのこと、ギラギラした目で、ずっと見ている。

 ぼく、下向きそうになった。

 だけど勇気を見せた。

 どうしてもそうしなきゃいけないって思ったもの・・・


 「ぼく、逃げたりなんかしません」


 なぜだか分からない。

 そう言ったら涙がこぼれたんだ。

 先輩、ちょっとだけびっくりした顔。

 ほんの短い時間。

 本当にちょっとだけ・・・


 「優等生の日下君。

 君って面白いこと言うじゃん。

 なあみんな!」


 ほかの五人見回す。

 こわい顔でぼくのこと見てる。


 「日下君。残念!

 ほかのヤツ、面白くないってサ。

 君の言ったこと!」


 先輩の口元ったら大きくねじれる。


 「怒ってるんだ。残念だナ」


 先輩ったら煙草出して口にくわえる。

 安田さん、ライターで火をつける。

 煙がぼくの方に流れてきた。

 

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