親子の再開
平和の為に戦った二人は、評価や利益より大切な物を知っている。
「■■■、気に入ったか?」
「うん!」
桜の木の前に二人の親子がいた。
「ごめんな、家にいれなくて。」
娘は首を横にふった。
「うんうんお父さんはヒーローだから皆を守らないと!」
娘は父親野手を握った。
「また桜、見に来ようね!」
「ああ、約束だ。」
目が覚めるとベットの中にいた。
目元に違和感を感じる。
「あれ?なんで私、泣いて…?」
涙を流していた。
悲しい夢でも見たのだろうか?
全く思い出せない。
何か大切な事のように思う。
残されたのはさびしさだけだった。
「アレックス=ワトソン、年齢35、元軍人、5年間戦場の最前線で戦い続け英雄とまで呼ばれた。しかし十年前に娘が失踪、妻がガンでなくなり、軍を引退し、娘を探すため旅に出る。…娘さんと会いたいのでしょう?でしたら私と契約をs」
「宗教勧誘なら他を当たれ」
旅の道中奇妙な女に話しかけられた。フードを被り顔は見えない、そんせいでより胡散臭さがひきだされる。
「まあ今信じてもらわなくてもそうち信じていただけますよ。」
「は?」
言語が解らんのか?こいつ。
「私は東の国の牢獄にいます。一番警備が厳重な所ですので、お願いしますね。」
何を言ってるのか解らない。今現在この女は目の前にいるのだが?
「まあ、貴方は嫌でも私を探すことになりますけど」
気が付くと見知らぬ町にいた。
それもただの町ではなく1000
年ほど前のヨーロッパの様だ。
レンガ作りの町が並ぶ。
「嘘だろ?…」
これは夢だ。早く起きないと。
近くに合った八百屋の柱にづつきをする。なんどもなんどもぶつける。
「なにやってるんですか?!」
八百屋の主人を無視し、ひたすら続ける。
周囲の目なんて関係ない。
頭から血が流れ、柱にヒビが入ってもひたすら続けた。
どうせ夢だ。
「ユメダユメダユメダユメダ」
「ちょっと君?」
「んだよ?」
肩を叩かれ振り替える。
そこには鎧を身に付けた兵士が数人いた。
広々として、高級品の並ぶ部屋。
ここは西の国の王が勤める城だ。
今日は魔王を倒した記念日で魔王を倒した英雄達が褒美をもらっている。
英雄達が財や権力を願うなか、私の番が迫っていた。
「国が平和ならそれでいい。」と言いたいとこだが、正直言えば私もこの日を待ちわびていた。
私の番が来て王の前に膝をつく。
「願いは?」
なんの迷いもなく答える。
「普通の生活をさせて下さい」
制服を着て、学校の教室の机に座り授業を受ける。
願いは叶えられ、普通の学生として生活を許された。
自分の身分をかくし、なんとかやっている。
今日も何時ものように学校へ向かい、自分の席に座って友人、ランと何気ない会話をしていた。
「この学校、出るらしいよ。」
「出るってなにが?」
「亡霊」
そんな話をしていたら教室の扉があいた。
「おはよう、クソガキども。相変わらず時間も読めねえようだな、ここは動物園か?」
挨拶と罵倒をしながら担任の先生が教室に入ってきた。
「朝から不機嫌だな。先生!肩でも揉もうか?」
と生徒達は罵倒されたにも関わらず笑っている。
なんやかんだ面倒見のよい性格から生徒からなつかれている。
彼もまた、魔王を倒した英雄の一人だ。
「魔力零のアサシン」名は白夜、茶色の瞳が印象的な彼が教師になったのは私と同じだと思う。
魔王殺しの英雄のほとんどは幼少期から戦い方を叩き込まれる。
平凡な生活は夢のまた夢だ。
普通を願う気持ちは分かるし、実際に私もその道を選んだ。
「このクラスの三割が居残りかかってんぞ?どうゆうつもりだ?」
「予想以上ですよ。貴方は」
「…」
「どんなに優秀なアサシンでも最短で一週間掛かる道のりを数時間で来るなんて。」
「…」
「これで同じ牢屋に入ってなければ最高なんですけどね。」
「…うるせえ」
私の切り札である男は牢屋に入った私と仲良く並んで監獄生活を始めようとしている。
「どうやったら一日で無期懲役になるんですかね?」
「兵士を何人か殺した。」
「…」
駄目だ。この人に期待した私がバカだった。
「なあ、俺の娘を知ってるといったな?」
「はい、知ってますよ」
投げやりに答えると男は真剣な表情でこちらを見た。
「目を見て答えろ。」
さっきまで死んでいた目から殺意に似たなにかを感じる。
言われた通り目を見る。
ミカと同じ赤い瞳が目に入った。
「はい、知っています。」
「そうか…合わせろ」
「え?」
アレックスはその場に突然倒れこみ腹を抱えた。
「うぁあああ!誰か?!助けてくれっ!?」
悲鳴をあげ続けていると警備兵が駆けつけてきた。
なるほど、演技か。適当に合わせよう。
「うるせえぞ!」
「うがぁあああ!助けてくれ!」
「助けてください。このままじゃ彼が…」
警備兵は舌打ちして、牢屋のカギを開けなかに入る。
アレックスに警備兵が手を伸ばした瞬間、アレックスが動いた。
一瞬だった。警備兵の口をふさぎながら、ナイフを奪い、首を切り裂いた。
辺り一面に血が撒き散らされる。
見込んだ通り彼は実力者だ。
さすがミカの父親だなと実感する。
ありふれた方法だが上手く行ったのはこの男の演技力と戦闘技術の賜物だろう。
「逃げるぞ。ついてこい。」
「待って下さい。これ持っていかなくてもいいんですか?」
兵士が使っていた剣を指差す。
今は、持ちを物をとられている状態だ。武器は、多い方がいいと思うが。
「馴れない物は使わない方がいい。そんな理由で死んでたら話にならん。さっさといくぞ。」
「なら、少し待ってください。」
「急げ時間がない。」
地面に手をつけ、指で星をかく、地面には指で書いた通りの星が浮き上がり光を放つ。
それと同時に頭のなかに周囲の情報が入ってきた。
「お前!?なにやってんだ?!」
「魔術ですよ。敵の場所、確認しました。」
ただ驚くアレックス。
当然だ。目の前で魔術を見るのは初めて、なおかつ魔術が空想状の世界の人間だ。
「こんなもん使えんなら自力で脱獄出来たんじゃねえか?」
「戦闘、苦手なんですよ。魔術が使えても、か弱い女なんですよ私。」
昼休みが終わり、机に座ると違和感を感じた。
引き出しを見ると、新聞の切れ端と、封筒が入っている。
勉強開始のチャイムが鳴り、入ってきたのは白夜先生でわなく白髪頭の教頭先生だった。
「白夜先生は、体調不良で早退した。昼からは自習だ。」
「えー」と一同、がっかりしてしまっている。
白夜先生の担当は保険体育と体育だ。
今日は保険体育だったのだが、カインズ先生の人気もありやたら生徒達のテンションは下がってしまっている。
自習の時間こっそり新聞の切れ端を見てみると、そこにはデカデカと「英雄の裏切り、魔術師リンカは魔王と繋がっていた。」とかかれている。
嘘だ。ありえないリンカに限ってそんなことはあるはずがない。
リンカは私と同じく魔王を倒した英雄の一人だ。
私にとっては姉のような存在で、時間があれば何時も話していた戦友だった。
今は東の国の家族と暮らしているはずだったのに、新聞によると無期懲役になっているらしい。
助けに行こうかと考えていたときもうひとつの物を思い出した。
封筒を見てみると中央にデカデカと「開けろ、周りに見せるな」とかかれている。
周りに見つからないよう、封筒を開けると一枚の手紙が入っていた。
手紙には「リンカの件は俺が片付ける。お前は首を突っ込むな。」と雑な怒りを込めたような字で書かれていた。
白夜先生からすれば大事な戦友で、なおかつ初めて出来た友人であるリンカがこんな状況に有るのが許せないんだろう。
思えば腕が折れようが、血をはこうが応急措置さえ受けようとせずに全線に立ち続けた人だ。
気分が悪いからと早退するはずがない。
白夜先生らしい判断だが私に相談ぐらいしてほしかったな。
「どうなってんだ?ここ。」
新聞を見た瞬間、仮病で学校を休みミカが着いてこないよう、手紙を置いてわざわざ半日かけて東の国間できたわけだが。
到着するないなや兵士達が忙しそうにあちこち誰かを探すように走り回っている。
入国の手続きもやたら時間がかかった。
まぁいいか、ひとまず情報収集から始めよう。
とりあえず一般公開された情報からてにいれようと提示番を探し歩き回りやっと見つけたと思えば人だかりが出来ていた。
「なんの騒ぎだ?」
適当に人だかりのおっさんに聞いてみると
「脱獄したんだとさ。ほれあの男と女だよ。」
と教えてくれた。
おっさんが指差した方を見るとリンカの似顔絵と中年男、だいたい三十代の赤い目をした男の似顔絵が張り出されていた。
「なにやってんだアイツ…」わざわざ自力で脱獄して探す手間をかけさせやがって…。
何か手がかりはないかと隣のおっさんの似顔絵を見る。
「ん?このおっさん誰かににてるような…?」
敵の位置がわかれば、あとはそれを避けるだけだがちんたらしてると兵士を殺して脱獄したのがばれてしまう。
できるだけ早く、ばれないように静かに進んでいた。
「出口はあちらですよ?もしかして方向音痴なんですか?」
「黙って着いてこい。」
牢屋かれでるないなや出口とは全く別の方向に進んでいた。
間違えてるのかと指摘してみたがどうやら違うらしい。
進んでいくうちひとつの扉の前で立ち止まった。
アレックスは迷わず扉を開ける。
「やっぱりな。」
「ここって!?」
そこにはあらゆる武器や財宝が入っていた。
そのなかに私が使っていた杖やまほうしょがある。
どうやらここに捕らえられている囚人の持ち物はここに保管されているらしい。
「よくわかりましたね。」
「牢屋までの通路でやたら怪しい部屋があって気になってたんだ。‥なあ?この国の人間てのはみんなバカなのか?普通囚人と武器、同じ施設に置かないよな?」
「予算不足なんですよこの国。」
「…五分後に出るから自分のもんをさっさとまとめろ。」
装備を整え扉の前でアレックスを急かす。
「まだですか?置いていきますよ?」
装備は一通り揃っていた。
黒いブーツに黒のローブ、どちらも紫のラインが入っている。
おまけに杖もあるから、正直一人でも逃げ出せるがここまできて置き去りにするのはかわいそうだ。
アレックスはハンドガンを腰のホルスターに入れ、窓の前にたった。
アレックスの服装は、黒スーツでビシッと決めて、いかにも仕事のできるボディーガードってかんじだ。
「誰がそっから出ると言った?」
「うそですよね?」
「嘘だと思うか?」
アレックスは窓を開け、窓の縁に足をかけた。
それから町を飛び回った。屋根から屋根へとジャンプで移動しているわけだが軽量化の魔術を使っている私はともかくアレックスは自力で飛んでいる。
人間離れしすぎでわないか?
さっきから2、3メートルを軽々と飛んでいる。
「宛はあてのか?」
「はい、東の国ならかくまってくれると思いますが。」
東の国は魔王退治のさい装備を整え、あらゆる面でサポートしてくれた国だ。
それなりに信用はできる。
「娘は?」
「そこにいますよ。今は普通の学園生活を楽しんでいると思いますが。」
「そうか…」
懐かしく感じる。
魔王退治の旅を共にした仲間達、皆は楽しくやっているだろうか。
「あの壁どうする?」
アレックスが言っているのはこのか国を覆う巨大な城壁だろう。
警備も厳重でそう簡単には外へ出れないだろう。
「なっ?!」
足を踏み外してしまった。
頭から地面に真っかさまで落ちていく。
軽量化していてもこの高さじゃあただではすまない。
地面が迫ってくる。身構えて目をつむる。
だがいつまでたっても地面につかない。
恐る恐る目を開けると地面から数cmのところで体が止まっていた。
よく目を凝らしてみてみると身体中に糸が巻き付いている。
「やっと見つけたぞ。手間かけさせやがって。」
そこにはかつて共に戦った英雄、「魔力零のアサシン」白夜が立っていた。
手から糸が伸びている。
「ありがとう。相変わらず目が死んでるね!」
「お前も同じ目に合わしてやろうか?」
「あはは、ギャグも相変わらず寒い。」
白夜が舌打ちしたのと同時に身体中の糸が外れ地面に落ちる。
「痛っ、何すんの?こっちは嫁入り前の乙女だよ?」
砂をはたき落とす。
「来てくれてありがとね。」
白夜、彼とは長い付き合いと言うわけではない。普段から無表情で愛想がないと言われている。
だが優しいいちめんもある人物だ。
今回誰よりも早く助けに来てくれたのは素直に嬉しい。
「お前は俺の一番大事な人間だ。死なれちゃ困る。」
「え!?本当に?」
顔色変えず普通に言ってしまうから達が悪い。
今一番大事な人間だと言ってくれたのは嬉しいが、何だろう?感情が伝わってこない。
「さっさといくぞ。」
「待って。助っ人が居るから。」
「あのおっさんか?」
「貴方の教え子のお父さんにおっさんは悪いと思いますけど。」
「動くな。」
リンカが裏路地に落ちたため慌てて来てみれば、妙な男とリンカがいた。
幸いリンカは無傷で男と話している。
「動くな。」
男の頭上に銃口を突きつける。
その瞬間感じた。この男は俺と同じ、もしくはそれ以上に人を殺している。
証拠はない、だが確信が持てた。この男はただ者ではない。
「ああわかった。」
男はゆっくりと手を上げる。
抵抗しようものなら迷わず撃つ、でなきゃこちらが殺られる。
緊迫した空気をこはしたのはリンカの一言だった。
「待ってアレックス、その人味方だよ?」
「先生、いじめは無いですよね?」
「ええ、もしあったとしても自分が許しません。たとえ上級国民でも徹底的にしばきます。」
安心できるけど安心できない気がする。
「それは安心ですね!うちの娘もよろしくお願いします。」
駄目だ。この男たちはスパルタ教育上がりの世代だ。
私の考えとは明らかに異なる鬼畜どもだ。
今私たちは、白夜が寝泊まりしている宿にいる。
ここなら兵士の目も気にしなくてすむ。
この部屋は狭くベットがスペースのほとんどをとっている。
ベットの向かい側には机と椅子が二つあり、カインズとアレックスが腰かけている。
私はベットに座り二人の会話を聞いているがかなりの違和感がある。
会話内容は、担任の先生と保護者の会話だ。
さっきまで殺意むき出しだった二人が嘘のように笑顔で会話している。
そこまでは問題ないが、問題は両者目が死んでいることだ。
一言一言に感情がこもっていない気がする。
「ところで、娘の成績はどうですか?」
家庭訪問で有りがちな質問とその後の重い空気、何故か私も押し潰されそうなほど重い。
「実技は校内トップです。」
「そうですか」
ひとまず安心した。
自分にとって妹のような存在であるミカが校内トップだとはとてもうれしい情報だ。
「筆記の方は?」
「…」
妙に重い空気がその場を支配した。
「校内最下位です。…」
「どうしよう…」
学校に教科書を忘れてしまった。
置き勉が白夜先生に見つかったら間違いなく殺される。どうにかして、持ちか要らないと。
学校まできたのはいいが校門は閉まっていた。
当然だ。とっくに日は沈み、夜の10時を過ぎている。
諦めようか迷ったが、いつ戻ってくるかわからない状況だ。
もし明日なら間違いなく見つかる。そして殺される。
「なにやってんだ?」
そこには軍服を着た警備兵がいた。
「あなたは!?」
「全く、世界の英雄が忘れ物とはな。」
「全く、魔王軍最強の男が警備兵に転職してるとは思いませんでした。」
警備兵に事情を説明するとすんなりと校門を開け、同行するのを条件に中へいれてくれた。
警備兵の男はかつて倒した魔王の部下再強と言われた魔王軍総帥、「黒い死神」クロだ。
相変わらず目が死んでいる。
なんでこの小説の男キャラは皆目が死んでいるんだ?
「念のため言っとくが俺は今の生活を気に入っている。お前に危害を加えるつもりはない。」
「気に入ってるわりには目の光が昔より減ってるんですけど?」
「…」
そんな会話をしているうちに教室に着いた。
自分の机を見るとしっかりノートと教科書が入っている。
取り出そうとした矢先背後から殺気を感じた。
横へ跳ね攻撃を交わす。
危うく真っ二つだった。
振り替えると自分の身長ほどの大鎌を振りかざしたクロがいる。
地面に手を付き、魔力を放つ、地面から日本刀が生えるように表れた。それを手に取る。
「誰ですか?」
剣先を向けるのはクロ、ではなく、クロが見ている方向。
そこにはうちの学校で昔使われた制服を着た生徒がいた。
「そいつは生徒じゃねえ、亡霊だよく見てみろ。」
言われた通り見てみると目はなく、口もなく、顔のあらゆる器官に穴が開いている。否、そもそもない。
「どうして…」
うちの学校じゃいじめなんて見たことも聞いたこともない。
そもそもいじめがあれば、白夜先生が半殺しにする。
「昔、いじめにあってた生徒だろ。さっさとお前が浄化してやれ、俺にはそんな能力ない。」
「分かりました。」
悲鳴に似た雄叫びを上げる亡霊に対し一気に距離を詰めていく、亡霊の体から蝿のような虫が飛ばされこちらへ向かってくる。
クロがそれを切り裂き道を開け、さらに距離を積める。
近付くにつれ亡霊の叫びが言葉として理解できるようになっていた。
「助けて」「やめて」「早く殺して」と亡霊の悲鳴、生徒の悲鳴が頭にはいる。
「よく耐えましたね。」
日本刀を降り下ろし、亡霊の胸を切り裂く。
「ありがとう。」
亡霊はもとの姿に一瞬だけ戻りそう言った。
それから煙になっていく。
「終りか」
「あなたは最初からこれが狙いでしたよね?」
今になって思い出す。
あんなに都合よく学校の鍵を持った警備兵が表れるはずがない。
「なんの事だ?それより。」
簡単に話を流したクロの質問は以外だった。
「なんで俺をあんな一瞬で信用した?殺されるとおもはなかったのか?」
「亡霊の気配は薄々きずいてましたし、それに貴方とは」
「殺り合う理由がない。」
「よく言えますね。銃口を思いっきり向けてたくせに。」
アレックスと白夜が敵対してないか念のため質問すると即答で答えられた。
確かに殺し合う必要はないが、こんなに早く警戒を解けるものなのか?理解できない。
「相手の心境は目を見りゃ解る。」
「お前は知らんのか?魔術は出来ても心理学が出来ないんじゃ宝の持ち具されだ。」
やたら罵倒される。
「私は軍隊所属じゃないんで」
「軍隊じゃない常識だ。」
「あなた方の常識を押し付けないでもらえます?」
「この国からどおやって出る?」
難しい質問だ。
こちらには顔が国中にひろがつている脱獄犯が二人いる。
少なくとも厳重な警備のある門を普通に通れない。
「考えがある。」
白夜が不適に笑った。
作戦を聞いた私は愕然とする。
「正気ですか?!」
居間から会議室に向かっていた。
護衛の兵士、六名にかこまれる形で廊下を歩く。
会議の内容は、に「西の国」との戦争を再開するか否か。
私は参戦するつもりだ。
魔王を倒した今、協力関係を取る必要はないし、魔王による被害は増税でたてなおりつつある。
対して敵国である「西の国」は未だ兵士も装備もまだまだ問題が多い。
攻めるなら今しかないだろう。
「なっ?!」
突然、護衛していた内の四人の兵士が宙に浮かんだ。
苦しそうに首を押さえている。
まるで何かで吊るされているようだ。
残った二人の兵士が剣を抜きこちらに向けてきた。
「貴様ら!何をしてるのか解っているのか?」
国の長である私に手を出せば確実にこの国その物が敵になる。
しかし兵士はひるまず、兜を外した。
「一国の王なんだろ?敵が多い役職なんだから護衛の顔ぐらい覚えとくんだったな。」
そこには兵士の変装した「魔力零のアサシン」白夜と指名手配中のアレックスがいた。
「本当にやるなんて…」
「嘘だと思ったか?」
白夜がが提案した作戦、それは王の暗殺。
国中が王が死んだ事で混乱してるすきに出るというもの。
アレックスと白夜は王宮へ忍び込み見事、王を暗殺した。
「本当に大丈夫なんですか?」
「この世界には俺らを見つけ出せる科学がない。カモだ。」
「顔さえ隠せりゃこっちのもんだ。」
「殺さなくても…」
「国民の金で贅沢三昧しているクズだぞ?存在価値はないと思うが?」
不安しかない。
下手すれば王を殺した犯人を逃がさないために門を閉鎖される危険もある。
今は兵士達があちこち走り回っている状態だ。
王を殺した犯人を探しているのだろう。
国中が混乱してる。
作戦通りだがさすがに無理がありそうだ。
「安心しろ。門の検査はカモだ。現に俺はナイフを没収されただけで糸は取られなかった。」とのことだ。
いよいよ門を通るときが着た。
白夜とアレックスは、兵士の変装をして、私は囚人の変装、といっても適当にボロボロの服を着ただけだ。
白夜が警備兵に確認を取る。
「この囚人を移動させるんで通ってもいよいですか?」
と偽装した資料を見せる。
王を殺したついでに過去の資料 をパクり、それをもとに作ったものだ。
かなりの完成度があるがこんなのでうまく行くはずが
「良いぞ通れ。」
…
その後の問題はなく脱出できた。
「だからいっただろ?カモだって。」
「白夜先生は、明日まで休むそうなので今日は投影魔術の授業を行います。教科書は必要ないので安心してください。」
白夜先生が来ない、そして投影魔術の授業になった事で生徒のテンションはがくさがしだった。
私は嫌いじゃない。
好きでもないが。
ひとまず昨日の件はクロとの内密にすると言うことで保留だ。
クロとは敵対する理由は無いためこれからは友好関係を取ると話し合った。
「えーとりあえず今日は皆さんが一番すきな花を手のひらサイズで投影することを目標にします。」
黒板にデカデカと「花の投影」とかいていく。
投影魔術、担当の女教師は手のひらに乗せるようにして手のひらサイズの桜の木を投影した。
先生の手のひらで桜が咲き、花弁が落ちていく。
桜の木何てひさしぶりに見たな。
あれ?何時だっけ?
「えーこの花は桜と言ってとある島国を代表する花です。」
おかしい。私は島国何て行ったことはないはずだ。
少なくとも旅や学生生活では見ることはない花のはずなのに何故?どこで見たんだ?
これは気のせいじゃない。
間違いなくどこかで見たと確信できる。
確かとても大事な誰かと見た。
いったい誰と?
机の上に資料を並べて情報を整理する。
学校の亡霊はミカの協力のおかげで対処できたが問題はなぜ亡霊が表れたのか。
亡霊の姿は生徒と思われる。
だが制服のデザインはひとつ前の物だ。
現在使われている制服は、5年前に採用されたもの。
少なくともあの亡霊は5年前からいたと言うことになるが、校内は管理人が定期的に見回りをしているはずだ。
五年間も噂にすらならなかったのか?ありえない。
恐らく誰かが何かしらの目的で作り出したと推理しているがなぜ複数ある学校であの学校なのか、他と違うとこは「魔王殺しの英雄」が二人いる事だ。
資料の中で一つのロゴを見る。
赤い目をした骸骨が紫の王冠を被っている物だ。
これは魔王が使っていたものなのだが、最近は魔王教徒を名乗るテロリストが使っている。
国中がこのテロリストにより恐怖に落とし入れられているのが現状だ。
奴らは魔王が世界を救う存在だと、魔王を神として崇めているやつらだ。
「魔王殺しの英雄」が憎いはずだ。
白夜やミカがいる学校で不可解な事件。
勘が正しければ亡霊事件は魔王教徒が関係している可能性が高い。
「魔王様よぅ、あんたが恐れてた事が起きちまってるぞ…」
ため息をつき、資料をまとめた。
「そんな?!魔王は倒したばずですよね?!」
白夜が馬車を手配しているという村が見えたと思えば村の中央に魔王の旗が立てられていた。
「あれは魔王じゃない。クソッタレの魔王教徒のクズどもだ。」
白夜から柄にもない怒りを感じる。
「見てくる。待ってろ。」
カインズは、村へ向かった。
彼の実力なら問題ないだろう。
「なあ?魔王ってなんなんだ?」
「そうですね。教えておきます。」
かつて「東の国」と「西の国」は二百年にもわたる戦争を続けていた。
戦争は終わる気配はなくより激しくなっていく。
魔王軍が表れ第三勢力として「西の国」、「東の国」と敵対した。
数は少ないものの、一人一人が強者揃いだった魔王軍は、あっという間に「西の国」、「東の国」を追い詰めた。
容赦なく殺し、奪い、壊し尽くす魔王軍は、降参すらうけいれなかった。
このままじゃ不味いと考えた両国は、休戦し魔王を倒すために強者を揃えた部隊を結成、見事、魔王を打ち破る。
この際結成された部隊は現在「魔王殺しの英雄」として伝説になっている。
そのほとんどが引退しバラバラになって生活をしている。
「って訳で私や白夜、ミカは、魔王殺しの英雄ってわけですよ。」
「何で英雄のお前が牢屋に入れられてんだ?」
正直よくわからない。
悪いことをした覚えもなく、ただ祖国で普通に暮らしたいと思っただけだったのに。
「よくわかりません。いきなり魔王軍のスパイとか言われて捕まりました。」
「どこの世界もゴミばっかだな。」
村へ忍び込み、人を探す。
気配をけし、物陰に隠れながら移動して中央まで着た。
「魔王様万歳」「魔王様万歳」「魔王様万歳」「魔王様万歳」
そこには黒い布に体を包んだ。魔王教徒の姿があった。
こいつらはあちこちでテロ行為を行うクズどもだ。
魔王教徒どもは旗の前に膝をつき祈りを捧げている。
気味が悪い。
村長であろう老人が頭から血をながし、十字架に縛り付けられ旗にならべている。
村長はピクリとも動かない。
すでに死んでいる。
生け贄のつもりか?
村中を見て回ると村の教会の前に子供達が倒れていた。
脈を確認した。
ダメだ死んでいる。
あのグズどもは子供まで殺すのか。
背後から身に覚えのある殺意を感じる。
「なあ?これはあの薄気味悪い信者どもが殺ったのか?」
そこには殺気をまとったアレックスが立っていた。
「ああ、生け贄のつもりなんだろ。」
「馬車は?」
「無事だったが、やつらが邪魔だ。」
「問題ない。皆殺しだ。」
軍人時代、護衛していた村が襲撃を受け子供が大勢殺された事がある。
敵の兵士は皆殺しにしたが、結局俺は守れなかった自分が嫌いになった。
その時見た光景が、この世界にもある。
それも戦争による物ではなくテロリストによるにがってな反抗だ。
許せるはずがない。
「数は?」
「四十」
「蹴散らすぞ。」
(あーあーこちらリンカ。馬車は任せてください。)
「な?!」
どこからか、リンカの声が聞こえる。
離れた安全地帯に置いてきたはずだ。
周囲を探したがみつからない。やはりここにはいない。
(魔術で話しかけてるので安心してください。)
便利すぎやしないか?魔術というのは。
(敵には五人ほど魔術師がいたのでご注意を。)
「なら話しは早い。便利なもの使ってイキってるやつほど簡単な罠で殺せる。」
(死なないでくださいね。)
「当たり前だ。」
向かい側にあった小屋から木のタンクを見つける。
近ずいて臭いをかく。
目当ての物だ。
「白夜、糸と遠心力使ってこのタンク飛ばせるか?」
祈りを捧げ終わり、皆移動しようと立がった瞬間、頭上に複数の影ができた。
見上げると複数のタンクが降ってきている。
「魔術を使え!撃ち落とすぞ!」
自分を含む魔術師たちは魔方陣を展開し、雷を放つ。
タンクは次々と破壊され破片や中の液体がまきちらされた。
「舐められたもんだ。こんな小細工をするくらい敵は弱いだろう。周囲に警戒しろ。」
魔王教徒たちはナイフをとり出し周囲に構えた。
「動くな。」
「な?!」
背後を取られた。
何かを背中から突き立てられている。
「質問にこたえろ。命令したってことはお前がリーダーだな?」
「こんなことして生きてかえれるとっ!?」
肩にナイフを刺された。
痛みに耐えれず、悲鳴を上げ肩を押さえる。
「さっさと答えろ。下手な真似するなよ?他の魔術師は全員殺した。」
信じられず横目で確認する。
確かに自分以外の魔術師は皆、血を流し倒れている。
「貴様あぁああああ!!」
「うるせえ。」
もう片方の肩にナイフが、差し込まれる。
だがこのままこいつの好きにはさせまいと、歯を食い縛り痛みにたえる。
「俺は良い、こいつを殺せ!」
次の瞬間、教徒達全体に炎が広がり、教徒達は悶え苦しみはじめた。
あちこちから悲鳴が聞こえる。
「バカな!?」
炎の広がりが速すぎる。
まるで油を火に注いだようにい清いよく燃えている。
油?、まさか!?
「さっきのタンクは!?」
「気ずくのが遅いんだよマヌケ。その辺のガキでも分かる事だ。」
男のごぶしが胸にめり込み、体がくの字にまがり、気が遠退いていく。
「魔王教徒って知ってる?」
久しぶりに魔王と聞いてビクッと反応する。
学校の帰りいつものように、ランと歩いて話していたが、オカルト好きなのは知っていたがまさか魔王の単語が出てくるとは思わなかった。
「いやぁ知らないねえ。」
「そうなの?最近暴れまわってるらしんだよね。」
魔王教徒の話しは聞いたことはあるが深くは知らない。
「魔王を信仰してるんだけどやることが過激すぎるんだよね」
ランが通りすがりの人と肩をぶつけてしまった。
「あっすいません。」
だが反応はなくそのままいってしまった。
「あれ?頭が…」
ランはそのまま地面にた倒れ込んだ。
「ちょ!大丈夫?」
肩を揺らすが反応がなく、肩から少量だが血が出ている。
「これって?!」
通りすがりにぶつかってしまった場所だ。
振り返ったがさっきの人影はなく代わりに紙が落ちていた。
紙には「毒はオリジナルの物だ。解毒薬は、俺がもっているものだけ、ほしけりゃ一人で、西森神社にこい。」とかかれている。
「嫌な予感してつけてみれば…」
「クロさん!」
背後からクロが現れる。
クロは紙を横目で見ると
「こいつは俺が面倒見てやる。」
とランを背負った。
「お前はソイツを倒してこい。」
ランをクロに任せ西森神社に向かう。
神社の階段に人影を見つける。目を合わせた瞬間人影は階段を上り始めた。
人影を追い階段を上る。
上り終えた瞬間、忍者刀が喉元めがけて振りかざされた。
日本刀を召還し、忍者刀を受け止め、弾き返す。
敵は軽く飛び、離れたい位置に着地する。
「あなたは!」
「クソ兄貴は元気か?」
同じくらいの年齢、綺麗な黒髪、茶色の瞳、間違いない。
白夜の妹、明花だ。
彼女とは何度か剣を交えた事がある。
兄妹揃って魔力零なのだが過酷な修行を受けたせいか、戦闘力が高い。
「なぜあなたが?」
「お前を殺せば兄貴は俺を殺しに来るだろ?」
「そんな理由であんなことをしたんですか!!」
怒りがこみ上げてくる。
「まあ、楽しもうぜ?」
こちらに走りだし、忍者刀を振りかざしてくる。
日本刀で受けとめ、刃と刃がギチギチと音をたて小刻みに震えた。
「そんなに白夜さんが憎いんですか?!」
「ああ、そうだ。アイツは俺のすべてを奪った。主も家族も皆アイツに殺された!アイツが裏切ったから!」
横腹を蹴られ、向い側の大木に叩きつけられる。
「293」
「ああ?」
「今まで殺してきた人の数です。」
「それがどうした?」
余裕のせいか、明花はゆっくり歩いて距離を積めてくる。
「私はその数を増やしたくない。」
「偽善者が」
明花の怒りが殺意に変わった。だが怯まない。
「殺さずに止めてみせます!」
生け捕りにした魔王教徒のリーダーは燃えずに残った小屋に監禁し、今情報を吐かせていた。
椅子に縛り着けあるので抵抗は出来ないだろう。
こんな連中を野放しには出来ない。
「てめえらの戦力はどれくらいだ?」
「おーおー誰かと思えば裏切り者の英雄様じゃないか!どの面下げて俺の前にたってんだ?」
裏切り者?どうゆう意味だ?
カインズは魔王殺しの英雄と聞いていた。
考えたが、歴史は得意じゃなかった。少なくとも今はカインズに裏切られる理由もないので関係ないと終息した。
「関係ねえだろ?」
一発殴る。
男は小さく呻いた。
「じゃあ、魔王様の名前を使ってこんなことしてるお前らは、魔王様に顔向けできんのか?」
「当たり前だ。魔王様は世界の終演を望んだ。それが我々の願いでもある。」
「…聞いた俺がバカだった。話を戻すぞ。魔王教徒の戦力を事細かく答えろ。」
とりあえず、もう一発殴った。
「どうした?なまってんのか?英雄が聞いて呆れるぜ。」
そこにはボロボロのミカの姿かあった。
ミカと退治したが、明らかに昔より弱くなっている。
いな、剣に殺意がない。
こいつはそもそも俺を殺そうとしていない。
さっきから逃げてばかりだ。
「なぜ攻撃してこない!?手加減のつもりか?偽善者が!なめやがって。」
忍者刀を振り上げ、日本刀を弾き飛ばす。
丸腰になったミカの首に刃をあてる。
ミカの首から少量の血が流れはじめた。
「分かったでしょ?私は貴方を殺さない。偽善かもしれないけど私は魔王を最後の犠牲者にするって決めたから。」
ここまで来て目の色一つ変えない。
気に食わねえ。
「あーそうか、このままじゃあんたもあんたの友人も死ぬけどいいのか?」
「いいえ。私を殺しても構いません、だからもうやめてください。」
「ならいい、友人と死にな、なんのやくにもたたないゴミと一緒に。」
忍者刀を押し込もうとした瞬間何かに吹き飛ばされた。
地面に手をつき何とか止まる。
ミカを見ると姿が変わっていた。
白い羽織りをみにつけ、二本の金色に輝く日本刀を持っている。
これは魔王を殺したと伝説になった姿、やっと本気を出したな。
「そーだよ!最初からこれで来れば良かったんだ!」
それから何回、何十回、何百回攻撃した。
だか、まったくてごたえがかんじられず当たらない。
ミカはノーガードで構えはなく、最低限の動きでかわし、弾いているのだが一項にこちらの攻撃が入る気がしない。
次元が違いすぎる。
そして何より恐ろしいのは感情が読み取れない。
否、そもそも感情がない。
常に無表情でその場から一切動かない。
「ならこれならどうだ?」
勢い良く右腕を上げた。
先程から攻撃しながら仕掛けた無数の糸がミカ目掛けて飛びつき、巻き付く。
だが、ミカは無表情のままなんのリアクションも取らない。
日本刀を自分めがけ振り下ろした。
目を疑う光景だ。明らかに自分自身を切ったはずのミカは無傷で巻き付いた糸のみを切り落としているのだ。
「ウソ‥だろ?」
あっけに取られていればミカはこちらへゆっくりと歩いて距離を詰めてきていた。
ミカの剣は正確な物だった。
一ふりで得物を弾かれる。
ニふりで隠し持った糸を切り落とされた。
三ふり目は首元で止待った。
無表情だったミカの顔は安心したように笑顔になりもとの姿に戻った。
「私の勝ちですね。」
刀を下ろした。
「なぜ殺さない?」
「人殺しは嫌いですから。」
「お人好しかよ。」
皮肉のつもりだったがミカは笑って答えた。
「そう思ってもらえて構いませんよ。‥それにわたしが本当に助けたかったのは貴方ですし。」
「は?」
意味がわからない。こいつからしてみればいきなり無関係の友人に毒を盛った超本人が俺だ。
助ける意味が分からない。
「戦争中、ちょっと医療をかじってたんですよ。貴方が使ったのは毒ではなく麻痺形の薬品でした。」
「そうかよ‥」
完敗だ。ミカは全部わかった上で俺のとこに来た。
これ以上俺が苦しまないように。
「俺の負けだ。好きにしてくれ。」
何をさせられても文句は言えない。
俺は敗者、ミカは勝者だ。
「家で家政婦をしてください!」
「起きろ!飯ができたぞ!」
目を擦りながら、なんとか起き上がる。
一人暮らしに馴れたせいで人から起こされる事に違和感を感じた。
階段を降りリビングを覗くとテーブルの上に二人分の朝食をエプロン姿の明花が並べていた。
卵焼き、白米、そして味噌汁。
「和食だ!ありがとうございます!」
久しぶりの和食に興奮した。
昨日食べたいものを聞かれた時、和食とリクエストしたかいがあった。
「おう」
テーブルに座り、明花が来るのを待った。
「どうした?先に食ってていいぞ?」
「いえ、時間はまだ有るので一緒に食べましょう。」
不思議そうに「分かった」と
明花が返事をした。
長く一人暮らしをしていれば寂しさを感じることは少なくない。
ちょうど居場所がなく、仕事もない友人が出来た。
「わりいな、遅くなった。」
明花はエプロンを外し向かい側の椅子に座った。
「いえ、構いませんよ。」
二人で一緒に両手のひらを合わせる。
「「いただきます。」」
こうして誰かと一緒にご飯を食べたかった。
「なあ?晩飯は何がいい?」
味噌汁をすすり答える。
「焼き魚がいいですね。」
「ミカ、昨日はごめんね!」
「いいよ、元気そうで良かった。」
何時ものように登校して来たランを見てホッとした。
ランには適当なこと言ってごまはかしてるとクロが言っていたけど、たしかに助かるでも
「いやーまさか異世界に飛ばされるとか思はなかったなー、覚えてないけど。まさか死に●りとか、ス●ホとか、盾持って●●●●●とかしてたらしいからねぇ。あっあとス●イムになったり。」
「そのへんにしとこ?ね?」
誤魔化し方が適当すぎる。よく信じたなこの子も。
「あっそういえば白夜先生、復帰するらしいね。」
「確か今日からだよね。」
教室はこの話しで持ちきりだ。
そうこうしているうちに教室のドアが開いた。
「悪い、休んですまなかった。」
病み上がり感を出すためマスクを付けた白夜先生が入室した。
「大丈夫そうだね。」
「うん」
仮病はひとまずバレてなさそうだ。
「お前らに良い知らせがある。魔王教会とか言うクソテロリツトが近くの店を爆破しやがった影響でしばらく休校だ。」
教師が休校を良い知らせとか言っちゃだめだろ。
だが生徒たちは喜び、幸せを分かち合っている。
不謹慎だろ。
「休校の課題あるから取りに来い。」
課題を配り終わり、休校期間中の注意事項を話して今日は終わった。
「礼」「「ありがとうございました。」」
教室に生徒たちの声が鳴り響く。
「ラン、ごめん先に帰ってて用事があるから。」
白夜先生にリンカの行方を聞かないと、それに明花の話も‥
「良いよ。じゃあね。」
自分と白夜先生以外帰ったのを確認し白夜先生の肩を軽く叩いた。
「リンカは大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。今はこの国で事情聴取を受けている。」
「そうですか‥良かった。」
ひとまず安心し胸をなでおろす。
「解ってると思うがあいつは無実だ。あいつが起こしたと言われる事件は全部作られた物だった。事情聴取つっても形だけですぐどう匿うか話し合われるだろ。」
「ありがとうございます。」
頭を下げた。
「なんでお前が礼を言う?」
「リンカは姉みたいな物なので。」
「‥そうか、まだ話がある。お前の‥」
「どうしました?」
話すかどうか悩んでいるように見える。
「いや、何でもない忘れろ。」
白夜は背を向け歩き始めた。
「あの待ってください私も話が」
「明花の事だろ?お前に任せる。アイツは男として育てられたせいで辛くても強がっちまう。そんなときは無理にでも話を聞いてやれ。」
「知ってたんですね。」
「‥ああ、だが今更兄貴ズラ出来る立場じゃない。無責任だがお前なら安心して頼める。」
白夜先生は「魔力零のアサシン」と呼ばれるのと同時に「裏切りの英雄」とも呼ばれている。
由来は仲間、主君である魔王、家族を裏切ったからだ。
彼が抱えている物は戦争が終わった今、より重く辛いものに変わったことだろう。
白夜先生の背中は何処か寂しく見えた。
学校を後にし、町中を歩いていた。
早く帰れるのは良いがやる事がない。
何して時間を潰そうか悩みながら歩いていた。
「なっ?!」
いきなり路地裏へ引っ張りこまれた。
壁に叩きつけられ男3人に囲まれた。
「美人だな」
「こいつは楽しめそうだ。」
男たちはナイフをこちらに向けゆっくりと手を伸ばしてくる。
「楽しませろよ、お嬢ちゃん。」
どうする?どうやって逃げるべきだ?何時ものように刀を‥だめだ。そんなことしたら身元がバレてしまう。
英雄なんて事がバレればもう学校に通えない。
「その子に触るな。」
黒いスーツを着た男が現れ男達の前に立ちはだかった。
スーツの男は大体三十代の中年で筋肉質、私と同じ赤い目をしている。
そして、『魔王』とそっくりな顔つきだ。
「何だてめえ?」
「こっちの台詞だゴミ共が、死ぬ覚悟できてんだろうな?」
スーツの男は三人組の一番手前の男の腹を殴り、痛みに思わずうずくまったところを肘打ちで地面に叩きつけた。
残りの二人も反撃の機会を与えることはない。ナイフを持つ手を捻り、足を蹴り上げた。
蹴りあげられた男は空中で1回転して地面に叩きつけられた。
残りの一人は「悪かった。許してくれ。」と頭を下け許しを乞う。
男に対しスーツの男は「失せろ」と一言、男達はそそくさとその場から逃げるようその場をあとにした。
スーツの男もその場をあとにしようとしている。
「待ってください。お時間ありますか?」
「わざわざ気を使わなくても良いんだぞ?」
「いえいえ貴方は恩人ですから。」
スーツの男に礼をしたいからと取り合えず近くの喫茶店に誘った。
スーツの男は「気にしなくて良い」と断ろうとしていたが何とか押し切る事ができた。
「あっ私ミカと言います。よかったらお名前を。」
「‥俺はアレックス。」
「さっきはほんとにありがとうございました。」
「だから良いって。」
アレックスさんを見ているとなぜか懐かしい気分になった。
なぜ『魔王』とそっくりなのか疑問に思ったが少なくともこの人は『魔王』とは違う。
よく分からないがこの人と一緒にいたい。もっとこの人を知りたいと思っている自分がいる。
「仕事は何してるんですか?」
少しの沈黙のあとに答えた。
「‥‥無職」
「え?あっすいません。」
重い空気にしてしまった。
あれだけ格闘技術を持っているので軍人や冒険者だと思ったが。
「色々あってここにきた流れものなんだ。‥仕事はその‥今探してる。」
「そうだったんですか!じゃあこの町を案内しますよ!」
それからはアレックスさんとあちこちを回った。
観光地の時計塔、行きつけの服屋、奇麗な湖、博物館、市場に行くと魚を選ぶ明花と明花にバレないように曲がり角で頭だけを出し見守る白夜が目に入った。
何やってんだ?あの人は‥
楽しい時間はあっという間に過ぎ夕方になっていた。
「済まないな。こんなおっさんに付き合わせて。」
「いえこちらからお願いしたことですし。」
気づけばアレックスさんよりはしゃいでしまっていた。
「なあ?中央教会はどこにあるんだ?」
「ここです。」
ミカに頼み中央教会まで案内してもらった。
ミカと過ごした時間は楽しいものだった。
昔を思い出させてくれる。
「すいません。そろそろ」
「ああ、今日はありがとな。」
先に帰ってくれたほうが好都合だ。
これから聞かれたくない話をする。
「また遊びに行きませんか?合わせたい人も居ますし。」
「ああ」
ミカは笑顔で喜んだ。
「良かった。また会いましょう。」
手を振りながら帰って行くミカを見送り、協会に入った。
「来ましたか‥」
木製の固定されて椅子がずらりと並び、その正面には大きな十字架と奇麗な虹色に輝くステンドガラスがある。
そして十字架の前には一人のシスターが立っていた。
シスターはかなりの年寄のようで腰を曲げ杖をついている。
顔はしわくちゃで体全体が細く今にも倒れそうだ。
「わしを殺してもらって構わんぞ。わしはそれだけの事をしたんだ。」
どう言う訳か俺が何者なのか解っているらしい。
「あんたがミカをこの世界に呼んだ人間で間違いないな?」
「ああそうだ。一人の少女の人生を狂わせたのはわしじゃよ。神に許しを乞うても許されるものではないのは解っている。」
シスターは殺される覚悟ができているらしい。
だが、今の俺には関係ない話だ。
「少し前の俺なら迷わず殺してるだろうよ。だが今はあんたに感謝している。」
シスターは少し驚いた様子だった。
「さっき娘とあってきたんだ。■■■は、ミカは楽しそうにくらしている。過去に自由を奪われ、辛い訓練を受け、戦わされたと聞いてこの世界を滅ぼしてやろうと何度も考えたが‥今のアイツは幸せそうに見えた。その幸せを壊すのは親として最低だ。」
さっき見たミカの笑顔は本物だ。
今は少なくとも家族より仕事を優先する父親と居るより幸せなのかもしれない。
「俺は影からあの子を守ろうと思う。これ以上あの子が何も背負わないように。それが俺の唯一出来る親としての務めだ。‥婆さんありがとな。」
教会を出ようと背を向けたときシスターが言った。
「あの子の近くに住めてあの子を守って稼げる仕事を紹介させてくれ。」
「あっアレックスさん!宿、見つかったんですね!お隣なんてきぐうです!」
「あっ、ああ奇遇だな。」
新居が決まるとミカが、挨拶しに来た。
当然だミカが言った通り隣だから。
シスターはミカが住んでいるという家の隣の家を買い取り譲ってくれた。
流石に申し訳ないと断ろうとしたがついつい押し負けてしまった。
「その制服!警備兵に就職できたんですね!似合ってますよ!」
「ああ、ありがとな。」
シスターがこねがあるからと勧めてくれた仕事だ。
確かにこれなら堂々と武器を持てるし町を守る=ミカを守ることに繋がり給料もでる。一石二鳥だ。
にしてもシスターって何者なんだ?
「おすそ分け、持ってきたぜ。」
「あっきたきた。アレックスさん、こちらは明花さん。同居してます。」
一人の青年が入ってきた。
青年はショートヘア、茶色の瞳、体は細いがよく鍛えられていて引き締まっている。
‥今、同居してると言ったのか?
「あんたがアレックスかよろしくな!」
「あ、ああよろしく。」
「これ家で作った肉じゃがだ。」
小さめの鍋を受け取る。
「ありがとう。‥にしてもうそうゆう年頃か‥」
悪いやつじゃなさそうだ。
だが、彼氏まではゆるせる。ミカも17歳、異性の付き合いはあってもおかしくない年頃だ。
だが、同居はまた別の話だ。
「同居とかあんまり良くないと思うけどなぁ?」
ミカが最近懐いていたアレックスという男は話には聞いていた通り強そうだ。
ボディービルダーとまでは行かないものの体はよく鍛えられていて強いオーラを感じる。
鍋を渡すと体をじろじろ見てきた。
決してエロい目ではない。
睨みつけるように殺意を乗せた目でだ。
それはまるで敵の戦闘力を図るように。
見終わったアレックスは今度は殺意を乗せたままの目で目を合わせてこう言った。
「同居とかよくないと思うけどなぁ?」
その瞬間体が凍りついた。
この男の底しれぬ殺意、何者なんだ?!
加えて俺の目を見るこの男の目、人をを疑っているときのクソ兄貴(白夜)にそっくりだ。
まずい、気を抜いたら殺られる!
早く質問に答えないと、質問は「同居とかあんまり良くないと思うけどなぁ?」だった。
まさか?!ミカの寝込みを襲おうとしていると勘違いしているのか!?
まさかこの男は相手の目を見ることで相手の過去を見ることが出来る魔眼持ちだとでも言うのか?!
となると俺がミカを殺そうとした過去が見られた事になる。
どうにか誤解を解かなければ殺られる!
そうだ!ここはあえて堂々と答えることで私は更生したぞ!ともう同じ過ちは起こさないぞ!とこちらの意思を強く伝える事で誤解を解けるかもしれない。
「私は行き場を失ったとこをミカさんに拾われた身。恩人の寝込みを襲うなどあろうはずがございません!」
できるだけ強い声で答えた。
寝込みを襲うだと?!
否定はしている。だがそれなら逆に堂々と襲っていると言うのか!?
クソ、埒が明かねえ!
「あんた何歳だ?」
「19です。」
「もしもの事があれば責任取れるのか?おお?」
答えを間違ったのか!?
アレックスの殺意が更に増大した。
「責任取れるのか?」だと?!
どう言うことだ?
恐怖で思考がまとまらねえ!
このままじゃ殺られる!
「あなたに渡した肉じゃがの隠し味のように、ミカさんを影から支えようと思っています。」
ダメだ。自分でも何言ってるのか分からない。
「そうか‥そこまで言うなら明花に任せられるな。」
えっ?今のでいいの?
アレックスの殺意が少しずつ収まっていく。
やったぞ!やってやった!生きて帰れるぞ!
「じゃあ俺はこれで‥」
できるだけ長居したくない。
さり気なく背を向け帰ろうとした時だった。
アレックスは俺のほうをベロリと舐め、何かを確信したのか殺意を爆発させた。
「この味は嘘をついている味だ!!」
このタイミングでジョ●ョネタだと?!
そしてどうやっているんだ!?ゴゴゴゴと効果音が実体化している!?
どうなってるんだ?この小説は。
アレックスはともかくなぜ異世界人の明花がジョ●ョを知っているんだ?
そしてあのゴゴゴゴの効果音はどうやって居るんだ?
「ミカ!この男と別れなさい!」
男?今明花のこと男って言った?!
さっきから会話がおかしいと思っていたらそんな勘違いをしていたのか!?
だがそんなの関係ない。
「だが断る。」
足元からゴゴゴゴが出てきた。
「おい!アレックス、俺は男だぞ?」
警備兵事務所に置いてあった自分の荷物をダンボールにまとめる。
「特殊部隊に移動するんだろ?クロ、元気でな。」
「ああアレックス。‥」
なぜか珍しくニヤニヤ不気味に笑う昨日までのバディに別れを告げる。
「また飲みに行こう。」
「ああ、‥そういやお前の新しいバディは美人らしいぞ。」
「見た目は関係ねえよ。」
「じゃあな。」
「ああ」
こいつとのやり取りもしばらく無くなるだろう。
ポストを確認するとアレックス宛の封筒が入っていた。
「また間違えたのかよ。」
家が隣同士だからかよく間違われる。
アレックスは誤解が解けると俺に謝罪し友好的に接してくれた。
何とか仲良くやっていけそうだ。
封筒を取り出しアレックスの家のポストに入れようとした時、封筒に書かれた名前が目に入った。
「夕雨討」、見覚えがある名前だ。
「何で師匠の名前が!?」
「これからこの事務所で働くことになった夕雨討と言うものだよ。よろしくね。」
隣の席に新しく座ったバディはクロが言っていたとおり美人で、赤髪のポニーテールがよく似合う。
奇麗な青い瞳をした女だ。
「ああ、よろしく頼む。」
かなり複雑な心境になった。
当然だ。
夕雨討は死んだ妻とそっくりだからだ。
近い内に次、投稿したいと思います。