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第8話 ジアの脱走大作戦! その1

 激しくむせているジアを心配するアイバーン。


「大丈夫か? ジア」


「ゴホゴホッ‼︎ だ、大丈夫よ! ハチミツを一気飲みすれば治るわ!」


「いや、考えただけで気持ち悪いよ……」


「さあ! 今度こそトドメよ! ガアアッ……ア……」


 息を大きく吸い込み再び雄叫びをあげようとしたジアが、突如めまいを起こしその場で倒れてしまう。


「ジア‼︎」


 慌ててジアに駆け寄るアイバーン達。



「ん……?」


 ベッドの上で意識を取り戻すジア。


「あ、気が付いた? 大丈夫か? ジア」


 ベッドの側の椅子に座っていたアイバーンが、心配そうに尋ねる。


「ここ、は……?」


 目だけを動かして辺りを見渡し、己の状況を理解したジア。


「そっか……あたし、また気絶したんだ?」


「うん。医者が言うには身体は問題無いけど、念の為に今晩は入院しろってさ」


「ええー⁉︎ イヤよ! 病院って退屈なんだから。身体に異常が無いんなら、みんなの所に帰るわ!」


 ベッドから起き上がろうとするジアを止めるアイバーン。


「ダメだ! 入院しろって言われただろ⁉︎ 今夜一晩はガマンするんだ!」


「い〜や〜だ〜‼︎」


 もの凄い力で起き上がろうとするジアの両肩を、全体重をかけて押さえ込もうとするアイバーン。


「な、何て力だ⁉︎ ジアのどこにこれ程の力が⁉︎」


「だ、か、ら! 何とも無いって言ってるでしょおお! は、な、し、てえええー!」


「ダメだと、言ってるだろっ‼︎」


 ジアに思いっきり頭突きをするアイバーン。


「いったああーい‼︎」


 額を押さえて、ベッドの上でのたうちまわるジア。


「ア、アイ君酷い! 病人に何て事すんのさー⁉︎」


「都合の良い時だけ、病人になるな!」



 少し落ち着いて大人しくなったジア。


「試合は、どうなったのさ?」


「決着がつく前にジアが倒れたからな。今日の所は引き分けだ」


「そっか……今回は自信あったのになー」


「だがあのまま続けていれば、間違い無くジアが勝ってたよ」


「どうだか……はあー、悔しいなー。子供の頃はあたしの方が強かったのに、どんどんアイ君に置いて行かれちゃう。こんな弱い身体でさえ無かったらなー……」


「ジア……」


 目元を左腕で隠して、顔を背けるジア。


「お願いアイ君。しばらくひとりにして……」


「ジア……ひとりにしたら脱走するからダメだ」


「チッ!」


 泣いているかと思われた腕の下は、悪い顔だった。


 悪巧みをアイバーンにアッサリ見抜かれたジアが開き直る。


「ただの貧血よ! トマトジュースいっぱい飲んだら治るわよ!」


「いや、赤ければ良いって問題じゃないだろ?」


「喉乾いた! タピオカジャスミンミルクティー持って来て!」


「病院にあるかっ! そんなもん!」


「じゃあ何でもいいから飲み物持って来てー‼︎ 叫び過ぎてすんごく喉乾いたー‼︎」


 ベッドの上で手足をばたつかせながら駄々をこねるジア。


「分かった分かった! 何か持って来てやるから、暴れるんじゃない!」


「ありがとー」


「ったく……」


 立ち上がり病室から出ようとしたアイバーンが振り返り、ジアに釘を刺して行く。


「くれぐれも言っておくけど、僕が居ない間に逃げるんじゃないぞ⁉︎」


「分かってるわよー! 子供じゃあるまいしー!」


「十分子供だろっ!」


 アイバーンが出て行ったのを確認したジアが、再び悪い顔になる。


「フッフッフッ。アイ君もまだまだ子供だよね」


 物音を立てないように、そおっとベッドから降りたジアが病室からひょこっと顔を出し、左右を見てアイバーンが居ない事を確認してから部屋を抜け出す。


「どこへ行くんだ? ジア」


「キャアアアー‼︎」


 いきなり声をかけられて、悲鳴をあげるジア。

 後ろを振り返るとそこには、居なかった筈のアイバーンが腕組みをして立っていた。


「ア、アイ君⁉︎ 何で居るのさ⁉︎ ああー、ズルい! 幻術で隠れてたのね⁉︎」


「何がズルいんだ? それに、僕が居たら都合が悪いのか?」


「へっ⁉︎ あ〜いや〜。べ、別にそういう訳じゃないんだけどさ〜」


 気まずそうに思いっきり目をそらすジア。


「それで? どこへ行こうとしてるんだ?」


「お、おトイレよおトイレ! 別にいちいちアイ君に許可取らなくてもいいでしょ⁉︎」


「そうか。なら、僕も行く」


「な、何よアイ君⁉︎ 女の子のおトイレについて来るって言うの⁉︎ アイ君ってそんな趣味があったのー⁉︎」


「バ、バカッ‼︎ 当然廊下までに決まってるだろう⁉︎ ジアが逃げた時、すぐに取り押さえられる距離に居ないといけないからな」


「あたしは犯罪者かっ‼︎」


 トイレに向かうジアの後ろをついて行くアイバーン。

 トイレの手前まで来た時振り返り、バッと手を出しアイバーンを制止させるジア。


「ハイ! アイ君はここまで! いくら幼馴染でも、あたしだってもう恥ずかしいんだからね!」


 そう言って、頬を赤くしながら顔を背けるジア。


「分かったよ……じゃあトイレに行く前に、隠し持ってる魔石を渡してもらおうか? トイレの窓から飛行魔法で逃げられないようにな」


「チッ!」


 再び悪い顔になるジアであった。







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