表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/40

第5話 早くもやって来たシリアスさん

 アイバーン達が大ピンチな頃、孤児院に居るパドレーの元に、ひとりの騎士風の男がやって来る。


「パドレー様!」


「何事だ⁉︎ こんな所まで」


「ハイ、それが……」


 兵士より事情を聞くパドレー。


「何だと⁉︎ 魔石の裏取引⁉︎」


「ハイ。それがこの近くで行われるという緊急情報が入りまして、至急パドレー様にもお伝えするようにと……」


「むう……」


 対策を考えるパドレーが、アイバーン達の身を案じる。


(まさか、あの子達と出くわしたりしないだろうな?)


「分かった! 至急私も現場に向かう!」


「お願いします!」



 気を失っていたアイバーンが目を覚ます。


「ん〜。僕、どうなって……?」


「やっとお目覚め? 頼りになる王子様?」


 隣に居たジアが、嫌味っぽく言う。


「ああ〜、ジアちゃん無事だったんだね〜? 良かった〜」


「これのどこが無事なのさー⁉︎ 依然として大ピンチのままよ!」


 小さな小屋の中の柱に、ロープでくくりつけられているアイバーン達。


「はあ〜、ブレンはやられたっきり目を覚まさないし、アイ君は瞬殺されるし、何て頼りにならない男達なのかしら」


「仕方ないよ〜。だって相手は大人だもん〜」


「それにしたって、少しは抵抗してよね〜」


 アイバーン達の話し声に気付いた男が近付いて来る。


「目が覚めたか? ガキ共。それにしてもオメェ、カッコつけて出て来た割には一瞬でやられたなー? 大人をナメるからこういう目に合うんだぜ? よく覚えとけよ!」


「うん。覚えたからもう帰っていい〜?」


「帰すかっ!」


「オイ、来たぞ! 仲介人だ!」


 小屋の中に居る男達とは別に、風貌の違う別の男が小屋に入って来る。


「お待ちしてました!」


「おう。現物見せろ」


「ハイ。こちらです」


 ひとりの男がテーブルの上に置いたカバンを開くと、中には大量の魔石が入っていた。

 その魔石をいくつか手に取り、品定めをしている仲介人の男。


「フッ。中々上質だな」


「ええ。何しろ魔石の一大産出国、リーゼルから密輸した物ですからね。品質は折り紙付きです」


「いいだろう。約束の金だ」


 そう言って同じように、持って来たカバンをテーブルに置く仲介人。

 確認する、売人の男。


「確かに。今後とも、どうかご贔屓に」


「おう、また頼むぜ。じゃあな!」


「ああ、お待ちください! 実は今日は、もうひとつ買って頂きたいものがありまして」


「あん? 何だ?」


「こちら、なんですがね」


 そう言ってジアと柱を繋いでいたロープを解き、仲介人の前に連れて行く売人の男。

 ジアは後ろ手に縛られたままだった。


「イヤ! 離して! 変なとこ触んないで! チカン!」


「ジアちゃん!」


「やかましいガキだな? だが、中々可愛い顔してやがる。その手のマニアに高く売れそうだな?」


「でしょ? しかもこのガキ、なにやら怪しげな魔法まで使うんですよ」


「ほう。そいつはプレミア価値が付きそうだな。いいぜ、買い取ってやる」


「ありがとうございます!」


 ジアの頬を手で掴み、舐め回す様にジアの顔を見ている仲介人の男。


「ゔゔー、気持ち悪いー!」


「ヘッ、まだガキではあるが、見れば見る程可愛い顔してやがる。変態共に売らねえで、俺が貰ってもいいかもな」


「ハハッ、お金さえ頂ければ、後はご自由に」


「ジアちゃんを返せ‼︎」


「うるせーぞ! ガキ!」


「グフッ!」


 繋がれたままのアイバーンの腹に、蹴りを入れる男。


「アイ君⁉︎ アイ君に何すんのさ! この屑共‼︎」


 パチーン‼︎


「アウッ!」


 仲介人の男に手の甲でビンタされ、床に倒れるジア。


「テメェは俺が買ったんだ‼︎ 俺が買った以上、テメェは俺の所有物だ‼︎ 所有物が主人に逆らうんじゃねぇ‼︎」


 激しく叱責した後、ジアの腹を蹴りつける男。


「グウッ‼︎」


「‼︎」


「分かったらさっさと立て‼︎」


 ジアを掴み起こそうとした男が、辺りの只ならぬ気配を感じ取る。


「な、何だ?」


「……触るな……」


 ボソリと呟くアイバーン。


「あん? 何か言ったか? ガキ」


「……ジアちゃんに、触るな……」


「ハッ! そんな様で何が出来るってんだよ? 口だけボーヤ⁉︎」


 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら、アイバーンに近付く男。

 その時小屋の中には、猛烈な冷気が漂っていた。


「オイ! 何だか寒くねーか?」


「ああ、俺もさっきから急に寒くなって……オイ! 足下見ろ‼︎」


「何いっ⁉︎ 何だこりゃあ⁉︎」


 既に小屋の床一面に氷が張り、男達の足をも凍りつかせ始めていた。


「氷魔法⁉︎ いつの間に⁉︎ あのガキか⁉︎」


 倒れているジアを見る男達。


「いや、女のガキは気を失ったままだ!」


「じゃあ一体誰が⁉︎ ま、まさか⁉︎」


 男達がアイバーンの方を見ると、先程アイバーンの腹を蹴りつけた男が、全身を氷に覆われ固まっていた。


「あのガキだああ‼︎」


「ヤ、ヤベェ‼︎ あいつヤベェぞ‼︎」


「ここに居たら氷漬けにされちまう! 逃げろー‼︎」


 だが、アイバーンの近くに居た者程、既に動く事すら出来ずにいた。


「う、動け……カハッ!」


「た、助け……」


 男達が次々に凍り付いて行く中、辛うじて動ける仲介人の男が、魔石の入ったバッグとジアを抱えて逃げようとする。


「じ、冗談じゃねえ‼︎ こんなとこであんなガキにやられて死んでたまるかー‼︎」


「汚い手で……ジアに触るなああああー‼︎」


「かっ!」


 アイバーンが叫んだ瞬間、小屋の中に居たアイバーン、ブレン、ジア以外の全ての人間が、物言わぬ氷の彫刻となった。

 



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ