第18話 諸説あり
救護室に設置されたモニターで、決勝戦を見ているジアとブレン。
「どっちが勝つかな?」
「アイバーンの強さは尋常じゃねぇからな。普通ならアイバーンの圧勝だろうが……」
「雷属性のメリア相手じゃ、氷属性のアイ君は相性が悪い……わね」
「まあ、そんな事はアイバーンの奴だって百も承知だろうからな。どう攻略するか、見ものだな」
「もしアイ君が手も足も出ずに負けたらあたし、雷属性に転職しようかしら?」
「馬鹿野郎……俺様が考えてた事、先に言うんじゃねぇよ」
ジアとブレンがバカな事を考えている頃、遂にアイバーンとメリアの決勝戦が始まる。
「やはりお前が勝ち上がって来たな、アイバーン!」
「いや……たまたまだよ。ジアの体調が万全だったなら、ここに立っていたのはジアの方だったと思うしね」
「ふむ……私はまだジアとはまともに戦った事は無いが、やはり彼女は強いのか?」
2人の様子をモニターで見ているジアとブレン。
「あいつら、何か喋ってんな?」
「何話してるのかしら? 声は聞こえないのね?」
自分の事を話しているとは知らないジア。
「ああ。ジアは元々身体が弱いから勝率的には俺の方が勝ってるけど、もしもジアの体調が常に万全だったなら、俺の方が負け越していただろうな」
「そうか……ブレンの奴は口だけだったが、ジアとも是非一度手合わせ願いたいものだな」
「あいつら、いつまで喋ってんだ?」
「闘いの前の駆け引きじゃないの?」
軽く馬鹿にされているとは知らないブレンであった。
「ともあれ、今はお前との勝負を楽しもう」
そう言った後、アイバーンの胸元をビシッと指差すメリア。
「その胸のペンダント!」
「ん? これがどうかしたのか? まさか君が勝ったらよこせ、なんて言うんじゃないだろうね?」
「フッ。その必要は無い! 何故なら……ジアが私にも作ってくれると約束してくれたからな!」
しばらく固まるアイバーン。
「……え、え〜っと……。それを聞かされて、俺はどう答えればいいんだ?」
「問題無い! ただお前に自慢したかっただけだからな!」
「そ、そうか……それは良かったな……」
「うむ! では今度こそ始めるぞ!」
メリアが胸のペンダントを引くと、三国志に出て来そうな、刃の根本に龍の装飾が施された槍が現れる。
同じ様に魔装具を具現化させるアイバーン。
「行くぞ!」
槍の柄の端を持ち、頭上で豪快に振り回すメリア。
その足元に魔方陣が現れると、槍を大きく振りかぶった後刃先を地面に叩き付けて叫ぶメリア。
「魔装‼︎」
刃先から全身に雷が走り、その雷が通過した所から鎧が装着されて行く。
「魔装‼︎」
メリアに呼応するように魔装するアイバーン。
アイバーンの重装型の鎧に対し、動き易さを重視した軽装型の鎧のメリア。
『闇に轟く轟音、天翔る光』
いきなり詠唱を始めるメリア。
メリアの無防備な行動に、驚くアイバーン。
(詠唱⁉︎ いきなり隙だらけでどういうつもりだ? 俺の攻撃を誘ってるのか? それともまさか、俺の男気でも試してるのか?)
『龍となりて、我が敵を穿て!』
《雷鳴龍‼︎》
メリアから放たれた凄まじい電撃は、アイバーンの横を一瞬にしてすり抜けて行った。
全く反応出来なかったアイバーン。
「くっ、速い……だがどういうつもりだ? 今のは明らかにわざと外しただろ?」
「ああ、その通りだ。今のが父上から授かった私の唯一無二の必殺技、雷鳴龍だ。いくら加減してあるとはいえ、まともに食らえばただでは済まない。だから悪い事は言わない、潔く降参してほしい」
「何を馬鹿な。全く闘いもせずに降参したら、全身全霊をかけて挑んで来たジアと、ついでにブレンに合わせる顔が無い」
「フッ。愚問だったな……良いだろう。次は正真正銘全力で撃つ! 見事受けきってみせろ、アイバーン!」
「まあ、受けるかどうかは俺が決めるさ」
大剣を構えるアイバーンに対し、今度は完全詠唱を始めるメリア。
『闇に轟く轟音、天翔る光』
アイバーンはその場から動かず、大剣を地面に突き刺し目をつぶる。
『巻き上がる竜巻、降り注ぐ雷雨』
メリアの周りの空間が放電を始める。
同じ様に、アイバーンの周りの空間も徐々に凍り始める。
『神が奏でし音色、天地を貫く雷よ』
メリアの全身を包んでいた電気が槍に集まり始める。
依然として目を閉じたまま動かないアイバーン。
『龍となりて、我が敵を穿て!』
《雷鳴龍‼︎》
遂に、完全詠唱の雷鳴龍が放たれる。
先程よりも遥かに巨大な電撃は龍の姿となり、アイバーンに迫る。
だが、尚も動こうとしないアイバーン。
「何をやっている⁉︎ 死ぬぞ、アイバーン‼︎」
全く動かないアイバーンに対し、思わず声をあげるメリア。
メリアの放った雷は、そのままアイバーンに直撃する。
「アイバーン‼︎」
「アイ君‼︎」
救護室に居る2人がアイバーンを心配していると、砂煙の中からアイバーンが現れる。
ダメージは負っていたが、致命傷という程では無かった。
(ほっ、無事だったかアイバーン)
アイバーンが生きていた事に、ホッと胸を撫で下ろすが同時に、アイバーンの状態を不思議に感じるメリア。
(いや待てよ? 私の完全詠唱の雷鳴龍の直撃をまともに受けて、この程度のダメージで済むはずが……? 氷の障壁を張っているようだが、氷で電撃は防げない筈……)
メリアが戸惑っていると、アイバーンの周囲の空間で、強烈な放電現象が起こり始める。
(な、何だ⁉︎ 何故放電現象が? 確かアイバーンは氷属性の技しか使えないと聞いたが、でまかせだったのか?)
次の瞬間、アイバーンから発せられた雷がメリアを貫いた。
「ガハッ⁉︎ バ、バカな……」
薄れ行く意識の中、アイバーンの言葉を聞くメリア。
「メリア……君は3つの間違いを犯した」
1本ずつ指を立てながら説明するアイバーン。
「ひとつ……純度の高い氷は電気を通さない。ふたつ……雷の放電現象は、雲の内部で氷同士のぶつかり合いによって起こる。みっつ……この俺に、先に技を見せるべきでは無かったな」
「せ……聖◯士か……ガクッ」
メリアが気を失った事により、バトルトーナメント優勝はアイバーンとなる。




