第14話 フレンドorリリー
バッジ争奪戦の決勝の様子を巨大モニターで見ていたジア達も、最後のメリアの行動が理解出来ずにいた。
「メリアが掴んだのって、ジアがアイバーンにやったペンダントだよな?」
「そ、そうね」
「何でバッジじゃなくて、ペンダントを掴みに行ったんだ?」
「あたしに聞かれても分かんないわよ」
「バッジと間違えた、とか?」
「まさか。いくらどっちも丸いからって、付けてる場所の区別ぐらいつくでしょ?」
「タイミング的に、ペンダントじゃなくてバッジを掴んでいたら、メリアが勝ってたよな?」
「アイ君に何も策が無かったなら、おそらくね」
ジアとブレンがそんなやりとりをしていると、納得の行かない表情のアイバーンが帰って来る。
「よお、アイバーン! やったな」
「あ、ああ」
煮え切らない反応のアイバーンに、ジアが尋ねる。
「どうしたの? 優勝したのに、嬉しくないの?」
「結果的には勝ったけどな……最後のメリアの不可解な行動が無ければ、負けていたのは俺の方だった」
「やっぱそうだよなー? こうなりゃ、メリアに直接聞いてみるか?」
そこへ、明らかに落ち込んだ様子のメリアが帰って来る。
「よお、メリ……」
メリアを問い詰めようとしたが、余りの暗い表情に声をかけられないブレン。
そのまま無反応でアイバーン達の横を通り抜けて行くメリア。
「ありゃ相当凹んでんな」
「という事は、やっぱりペンダントを掴みに行ったのは、メリアの本意じゃ無かったって事よね?」
「そうみたいだな。今はそっとしておいてやろう」
「そうね」
「だな」
アイバーン達が気をつかって声をかけないでいると、ひとりの女子生徒がお構い無しにメリアを問い詰める。
「お待ちなさい、メリアさん!」
決勝戦でメリアに敗れたフロイラである。
「あなた! わたくし達を倒しておきながら、あの体たらくは何ですの⁉︎」
「そう……だな。まったく……返す言葉も無い……」
弱々しい声で、絞り出す様に答えるメリア。
「まさかバッジとペンダントを見間違えるだなんて、信じられませんわ!」
「いや……間違えた訳では無く、思わず手が伸び……あいや、何でもない」
「何なんですの? まったく。とにかく、もし次の最終試験で当たる事があれば、今度はちゃんと闘ってくださいまし!」
「あ、ああ……勿論だ」
言いたい事を言って去って行くフロイラ達。
残されたメリアをじっと見つめているジア。
「メリア……」
凹んだまま固まって動けないでいるメリアに声をかけるジア。
「ねえメリア」
「……」
項垂れたまま、無言でジアの方を見るメリア。
「もし、だけど……アイ君が付けてたペンダントが気に入ったのなら、メリアにも作ってあげようか?」
「なん……だと⁉︎ あ、あのペンダントは君が作ったのか?」
「ええ。まだ始めたばかりだから、あまり上手くはないけどさ」
それを聞いたメリアの表情が急に明るくなる。
「とんでも無い! 凄くキャワ……上手く出来ていた! 是非私にも作ってくれないか⁉︎」
「キャワ? え、ええいいわ。じゃあ、何の形にする? アイ君は名前のイメージからひまわりにしたんだけど……」
「では、プルメリアの花を型取ってほしい。私のメリアという名も、母上がプルメリアの花から取って付けたらしいからな」
「そうなんだ? うん、分かったわ。まだ不慣れだから一週間ぐらいかかると思うけど、待ってて」
「そうか! ではよろしく頼む!」
すっかり元気を取り戻した様子のメリア。
「君の心遣いに感謝する。ありがとうジア!」
「フフッ。どういたしまして」
「もし最終試験で君と対戦する事があったなら、敬意を表して全力でお相手しよう!」
「うん、そこはお手柔らかにね」
復活したメリアを後に、アイバーン達の元に戻って来るジア。
「オイ、ジア。メリアの奴、急に元気になったみてぇだけど、何言ったんだ?」
「ん? ちょっとした約束をさ」
「何だそりゃ?」
「何であれ、メリアが元気になってくれたのなら良かった。ありがとう、ジア」
「何でアイ君がお礼言うのさ? あたしはただメリアが気になっただけよ」
ジアの言葉に、やましい想像をするブレン。
「ジア、お前まさか……メリアに惚れたのか⁉︎」
「ふざけた事言ってるとぶっ飛ばすわよ?」
ジアがそう言った時、ブレンは既に腹を押さえて蹲っていた。
「お、お前、口より先に手が出るの、いい加減直せよな」
「あんたが悪いんでしょ⁉︎」
ブレンをKOしたジアが、メリアの事を想う。
(フフッ、それにしても……普段は凛々しくて男前なメリアだけど、中身はやっぱり女の子よね。可愛いっ!)
その時、メリアの背中に悪寒が走っていた。
(な、何だこの寒気は⁉︎ 誰かの魔法攻撃か⁉︎)