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第3話 フィギュアスケートの選手は、何故目が回らないんだろう?

 そして、ジア対アイバーンのエキシビションマッチが行われる。


「行くわよ! アイ君!」


「いいよ〜」


「でやっ‼︎」


 開始早々ジアが連続攻撃を仕掛ける。

 しかし、その全てを大剣の腹でガードして行くアイバーン。


「アイ君凄い! ジアちゃんの攻撃が全然当たらないよ⁉︎」


「だけどアイ君も守ってばっかりで攻撃出来ないじゃん」


 だが、ジアの連撃をガードしながら、ジッとジアの動きを見ているアイバーン。

 

(ここ!)


 ジアの攻撃が大振りになった瞬間、一気に踏み込んでジアの腹に大剣を薙ぎ払うアイバーン。


(なっ⁉︎)


 咄嗟に風を発生させて後ろに飛び、ギリギリでアイバーンの斬撃をかわすジア。


「残念、逃げられちゃったか〜」


「や、やるじゃないのさ、アイ君。あたしが風魔法を使えなかったら、入ってたかもね」


「フフ〜。ジアちゃんってば、連撃の最後はいつも大振りになるクセがあるからね〜」


 そんなアイバーンの洞察力に驚いているパドレー。


(確かにジアは最後の一撃の前には無意識に力が入り、大振りになるクセがある。だがそれは、この私でさえ殆ど気が付かない程の僅かな物だ。それをいつも見ていたとはいえ、実戦でいきなりその一瞬の隙に踏み込んで攻撃をするなど、容易く出来る事ではない。もっとも、その一瞬の斬撃に反応して咄嗟に風魔法で回避したジアの戦闘センスも、相当な物だがな)


「正直ちょっとナメてたわ。ここからは本気で行くからね‼︎」


「じゃあ僕も頑張る!」


《ウインドカッター‼︎》


 風の刃を飛ばすジア。


「あ、マズ〜イ」


 剣で受けきれないと判断したアイバーンが、横っ飛びで風の刃をかわす。

 だがそこには、既にジアが待ち構えていた。


「いらっしゃい!」


 体勢が不十分なアイバーンに短剣を振り下ろすジア。

 それを片膝をつきながら、何とか大剣で防御するアイバーン。


「くっ!」


「まだまだ!」


 更にその場で風をまとい、スケートのスピンの様に激しく横回転をしながら斬撃を繰り出すジア。

 大剣でガードしながら隙を伺うアイバーンだったが、風で巻き起こった砂埃に目を閉じるアイバーン。


「痛っ!」


 痛みで一瞬目を閉じたアイバーンがすぐに目を開き前を見るが、そこにジアの姿は無かった。


「え⁉︎ どこ⁉︎」


「ここよ!」


 いつの間にか背後に回っていたジアが、アイバーンの背中に肘打ちを食らわせる。


「グウッ!」


 前のめりになるアイバーンだったが、倒れる前にくるりと体勢を入れ替え、片膝をついてジアと正対する。


「痛たた。凄いな〜、ジアちゃん。身体の回転に合わせて風魔法を使ってくるなんて、あんな攻撃見た事無いよ〜」


 身体をフラつかせながらドヤ顔のジア。


「見た事のある技は対応されるって言うなら、まだアイ君に見せた事無い技なら通じるって事よね?」


「理屈ではそうなるね〜。僕はずっとジアちゃんを見てたつもりだったけど、知らない所で頑張ってたんだね〜?」


「何か上から目線みたいで腹立つけど、そうよ! あ、あたしは……」


 何だか顔が青ざめ、様子のおかしいジア。


「パ、パパとの……訓練以外にも……陰で……うぷっ……特訓……ゔえええー!」


 遂に戻してしまうジア。


「あー! ジアが吐いたー!」


「ジアちゃん汚ーい!」


 四つん這いで戻しているジアを、心配そうに覗き込むアイバーン。


「ジ、ジアちゃん大丈夫〜?」


 何事も無かったようにスクッと立ち上がるジア。


「な、何でも無いわよ! ちょっと調子に乗って回り過ぎただけよ! 逆回転すれば治るわ!」


「いや、余計に気持ち悪くなると思う……」


「ごちゃごちゃ言ってないで、行くわよ!」


 アイバーンに向かって走り出したジアだったが、フラつきが収まらずアイバーンと全く違う方向に行き、遂に転んでしまう。


「フニャッ‼︎」


 うつ伏せでバンザイ状態で倒れているジアを、また心配そうに覗き込むアイバーン。


「ジアちゃん、本当に大丈夫〜?」


「隙ありよ‼︎」


「えっ⁉︎」


 近付いて来たアイバーンの頭部を、逆立ちとなり前後に大きく開いた足を交差させるように挟み込むジア。

 だが、素早く反応したアイバーンが防御を捨て、無防備状態のジアの顔に蹴りを放つ。


「‼︎」


 アイバーンの蹴りが一瞬早くジアの顔をとらえようとした時、アイバーンの足がピタリと止まる。

 次の瞬間ジアの大きく開いた足が、まるでワニが獲物に食らいつくようにアイバーンの頭部に炸裂する。


「ムギュ‼︎」


 ジアの蹴りをもろに食らったアイバーンがダウンすると同時に、パドレーが決着を告げる。


「それまで‼︎ この勝負、ジアの勝ちとする‼︎」


「やったー‼︎ ジアの勝ちだー‼︎」


「これでこの孤児院での最強はジアに決定だー‼︎」


「いやでも、アイ君の動きも凄かったよ!」


「また2人のバトルが見たいー‼︎」


 だが、勝利したにもかかわらず、不服そうな顔のジア。


「アイ君。何で最後、攻撃を止めたのさ?」


「ん〜? 止めてないよ〜? ジアちゃんの蹴りの方が早かっただけだよ〜」


 怒りに震えているジア。


「アイ君の……アイ君のバカああー‼︎」


 目に涙を浮かべながら、どこかへ走って行くジア。


「ああ〜‼︎ アイ君がジアちゃんを泣かせた〜‼︎」


「アイ君酷〜い!」


「男の子が女の子泣かせちゃいけないんだ〜‼︎」


 全員から非難されるアイバーン。


「ええ〜っ⁉︎ 何で負けた僕の方が非難されてるの〜⁉︎」

 







 

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