第2話 炭といえば備長炭
入学式が終わり、とりあえず仮のクラス分けをされ、いくつかの教室に分かれて待機しているアイバーン達。
アイバーン、ジア、ブレン、メリアの4人は、同じ教室に居た。
ブレンが、事情を知ってそうなメリアに尋ねる。
「でもよー。俺達入ったばっかだってのに、何を試験するってんだ?」
「クラス分けの為だ」
「クラス分け?」
「ああ。私達は個々の能力によって、3つのクラスに分けられる。成績優秀者を集めたファーストクラス。ファーストに入れなかった者達のセカンドクラスだ」
「あれ? あとひとつは?」
「そのどちらにも入れなかった者達。つまり強制退学組だ」
「いきなりかよ⁉︎」
「だが案ずるな。みな厳しい入学試験を通過してこの学校に入っているのだ。オルガの塔創設以来、クラス分け試験での退学者はひとりも出ていないからな」
それを聞いて、ブレンを茶化すジア。
「あら、良かったじゃないブレン。初の退学者になれるわよ?」
「ならねーよっ‼︎」
「試験ってどんな事するの?」
「詳しい内容は勿論私も知らないが、教室に集められたということは、まずは筆記試験からだろう」
「げえっ! いきなり頭使うのかよー⁉︎」
「いや、筆記試験といっても、あくまで各々の自己分析力を見る為のものだ。学力は関係無いから安心しろ」
「そ、そうか⁉︎ なら良かったぜ!」
安堵するブレンに、冷静にツッコミを入れるアイバーン。
「ブレン。その物言いは、自らバカだと証明しているようなものだぞ?」
「うるせー! 俺様は勉強が出来ねぇんじゃねぇ! やらなかっただけだ!」
「どの道バカな事に変わりは無いわよ」
ひと通りブレンいじりが終わった所で、試験官が問題用紙を抱えて入って来る。
「ハイ、静かに! 今から君達には簡単な筆記試験をやってもらう!」
「ええ〜っ⁉︎ 入学試験を受けて入ったのに、また筆記試験かよ〜⁉︎」
「てっきり戦闘能力とかを見る試験だと思ったのになー!」
「心配するな! そういう試験もこの後ちゃんと受けてもらう。これはその為の自己分析表でもある。では、答案用紙を配るぞ!」
そして全員に答案用紙が配られる。
「いくら自己分析表とはいえ、当然カンニング行為は禁止だ! まあもっとも、誇り高き王国騎士団を目指している君達が、そんな卑怯な真似はしないと確信しているがね。では、制限時間は50分だ! 始めっ!」
[第1問・校長先生に惚れた人は、恥ずかしがらず正直に手を挙げなさい]
(いや、まだ言ってんのかよっ⁉︎)
みんなが心の中でツッコンでいる中、メリアだけがまたしてもスッと手を挙げていた。
そんなメリアに試験官が声をかける。
「どうした? 何か質問かね?」
「いえ! 私は書かれていた問題に、正直に答えただけです!」
「何だって⁉︎ 何を言って……」
不思議そうにメリアの問題用紙を覗き込んだ試験官の顔が、怒りの表情に変わる。
「み、皆は試験を続けていなさい!」
そう言い残して教室を慌てて飛び出して行く試験官。
するとしばらくしてから、1問目のふざけた問題が普通の問題へと変わって行く。
(何だあ⁉︎ 文字が変わってくぞ⁉︎)
(これは……幻術の一種、か?)
そしてまたしばらく経ってから、試験官が教室に戻って来る。
「まったく……あの校長ときたら……ああ、済まなかった。問題は解決したから、気にせず試験を続けなさい」
試験官の呟きにより、校長の悪ふざけだという事を全員が悟った。
本来の1問目はこうである。
[あなたの性格を、四字熟語で答えなさい]
(いや、これはこれでどうなのよ⁉︎)
改めて、解答を書き込んで行くアイバーン達。
ーーアイバーンの場合ーー
(俺の性格かー。まあ、『冷静沈着』かな?)
ーーメリアの場合ーー
(やはり騎士らしく、『威風堂々』だろう)
ーージアの場合ーー
(四字熟語……風使いらしく、『疾風怒濤』ってとこかしら?)
四字熟語には違い無かったが、性格を表現する言葉では無かった。
ーーブレンの場合ーー
(四字熟語……て何だ⁉︎ まあ、四字って言うぐらいだから、4つの漢字で表せって事だよなー⁉︎ 俺様は炎を使うから、炎、火……火と言えばやっぱ炭火だろ? 炭火と言えばこれしか無ぇだろ⁉︎ 『炭火焼肉』っと)
完全に意味を履き違えているブレンであった。
その後は魔法属性であったり、自分の属性と相性の良い属性、悪い属性等、いかに己の属性について理解しているかの、まともな問いが続いた。
そして第10問。
[本日の学食のメニューを予想して答えなさい]
再び教室を飛び出して行く試験官。
しばらくすると、また問題が姿を変える。
「校長め……終わったらぶっ飛ばす」
(何なんだいったい?)
その後も普通の問題が続き、遂に最終問題となる。
[第20問・もし制服のサイズが合っていなかったり欠陥があれば、本日の放課後職員室まで来なさい]
「「「いや直接聞けええっ‼︎」」」
その後オーク校長は、試験官達にこっ酷く怒られたそうな。