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第21話 シーブック・アノーとは関係ございません

 メリアのパンチを食らったブレンが、左頬を押さえながら起き上がって来る。


「いってーなー⁉︎ いきなり何すんだよー?」


(私の一撃を受けて、平然としているだと⁉︎)


 ブレンの打たれ強さに驚いているメリア。


「お、お前がいきなり私の胸に、か、顔を埋めたからだろう‼︎」


「胸? さっきのはお前の胸だったのか? 埋めるどころか、余りに固かったから、板か何かにぶつかったのかとグフゥ‼︎」


 ブレンが言い終える前に、メリアの左拳がブレンの腹に突き刺さっていた。


「すまないメリア君! 私の息子がとんだ無礼を……」


「あ、いえ……普段なら避けられるのですが、私も少々油断していましたので」


 状況がよく分からないアイバーンがパドレーに尋ねる。


「パパ、この人は?」


「ああ、そうだったね。紹介しよう、この娘はメリア・ラウルス。お前達が通う騎士団養成学校の校長の娘さんだ」


「メリア・ラウルスだ。お互い立派な騎士になれるよう、共に精進しよう!」


「以前に話したが、お前達の養成学校への招待状をわざわざ届けに来てくれたのだ。お前達も自己紹介しなさい」


「ハイ。わざわざありがとう。僕はアイバーン。よろしく」


「私も一度君達に会ってみたかったからね。君がアイバーンか。噂には聞いているよ。君と手合わせ出来る日を楽しみにしているぞ」


 そう言ってアイバーンと握手をするメリア。


「あたしはジアよ。よろしくね」


「君がジア君だね。何でも魔獣を操るとか? いつかその技を見せてくれ」


 ジアとも固い握手を交わすメリア。

 だが、ブレンはふてくされてあいさつをしようとしない。


「ほら! ブレンもちゃんと自己紹介をしないか!」


「今パパが名前言ったんだからいいだろ⁉︎」


「こらブレン! 何だその態度は⁉︎」


「いいえ、構いません。こんな男では、入学したところでどうせすぐに逃げ出すでしょうからね」


「何だとテメェ‼︎」


「やるかっ⁉︎ この無礼者が‼︎」


「やめんかっ‼︎」


 出会って早々険悪なムードになる、ブレンとメリアだった。



 そしてアイバーン達は14歳になり、いよいよ王国騎士団養成学校の入学式の日となった。


 孤児院の前に並んだアイバーン、ジア、ブレンの3人に、みんなが声をかけて行く。


「みんな寮に入っちゃうんだよね?」


「そうだな。養成学校は全寮制だからね」


「たまには帰って来る?」


「ああ! 休みの日には帰って来るぜ!」


「3年も居ないの寂しいよ〜!」


「大丈夫よ。ブレンだけは退学させられてすぐ帰って来るから」


「帰らねーよっ‼︎」


 そして最後に、パドレーが3人に言葉をかける。


「養成学校に入れば、お前達とは親としてではなく、騎士団の団長として接する事になる! 今までのように甘くはないぞ⁉︎」


 だがアイバーン達には、パドレーのある言葉が引っかかっていた。


「えっ⁉︎ 今パパ、団長とか言った⁉︎」


「断腸の思いと言ったんだろう?」


「そうか! パパは俺達がここを出て行くのが、そんなに辛いんだなー⁉︎」


「いや、私は王国騎士団の団長だぞ⁉︎」


「「「…………」」」


「「「ええええええー‼︎」」」


 一斉に驚くアイバーン達。


「パパって団長さんだったのおおっ⁉︎」


「そりゃ確かに強い強いとは思ってたけどよー⁉︎」


「せいぜい小隊長ぐらいだと思っていた……」


「うん。お前達、失礼!」



 アイバーン達が落ち着きを取り戻した所で、改めてパドレーが言葉をかける。


「かなり脱線してしまったが、旅立つお前達に私から贈り物をしようと思う」


「贈り物⁉︎ 食いモンかっ⁉︎」


「宝石とかなら嬉しいな!」


「ランク上位の魔装具とか⁉︎」


「形の無いものっ‼︎」


 まくし立てるアイバーン達に、つい可愛らしく否定するパドレー。


「今までお前達にはファーストネームしか無かっただろう? 今日、この孤児院から自立する事を祝い、私からお前達に相応しいファミリーネームを贈ろうと思うのだ」


「ファミリーネームって何だ?」


「苗字の事だ」


「でも、あたし達はパパの子供よ⁉︎ だったらあたし達のファミリーネームはみんなアノーじゃないの⁉︎」


 黙って首を横に振るパドレー。


「お前達は今日、ここから巣立って行くのだ。ちゃんと一人前の人間として、それぞれがちゃんとファミリーネームを持つべきだ。いいね?」


 黙って頷く3人。


「うむ。ではアイバーンから」


「ハイ!」


「お前には、アイバーン・サン・クルセイドの名を授けよう」


「アイバーン・サン・クルセイド……」


「サンは太陽を意味する。お前は氷使いだが、太陽のように力強く、みんなを守れる男になってほしい!」


「ハイ‼︎ ありがとうございます‼︎」


「次はブレン」


「おう‼︎」


「お前には、ブレン・プロージュの名を与えよう」


「ブレン・プロージュ⁉︎ めちゃくちゃカッコイイ響きじゃねーか‼︎」


「お前は炎使いのままに、熱く! 常に正義の為に心を燃やす男になってほしい!」


「俺様の存在そのものが正義だぜー‼︎」


「最後にジア」


「あ、まって! パパ!」


 何故かパドレーの言葉を遮るジア。


「どうした? ジア」


「できればあたしの名前は、雪に関する名前にしてほしいの!」


「雪? お前は風使いなのにか?」


「うん。お願い!」


「うーむ。お前には風使いらしく、風に関する名前を考えていたのだが……」


 ジアの急な申し出に、腕組みをして考えるパドレー。


「うむ! では、ネイジュ、というのはどうだ? ネイジュとは、とある国の言葉で雪を意味する」


「ジア・ネイジュ……うん、素敵! パパありがとー‼︎」


「気に入ってもらえて良かったよ」


(本当は、みなを癒す優しい風のような女の子になってほしいと願いを込めて、ジア・ブリーゼにしようと思っていたのだが、もはやそよ風どころか暴風になりつつあるからな……)


 失礼な事を考えているパドレーであった。







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