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第20話 男なら、一度は経験してみたいラッキースケベ

 アイバーンに呼ばれてやって来たパドレーや王国騎士団により、密輸団は再び全員捕縛された。


 ブレンはすぐに治療が施され大事には至らなかったが、無断で街の外に出た件に関しては、3人仲良く叱られたのだった。


 しかし、王国騎士団数十人を倒した用心棒を含めた密輸団を、僅か3人の子供達が壊滅させたというこの事件は瞬く間に王都中に広まり、アイバーン達は一躍有名人となった。


 そしてある日の夜、とある酒場にやって来たパドレーが、カウンターの奥に座っていた白髪で眼鏡をかけた男性の隣に座る。


「久しぶりだな、オーク」


「全くよ! パドちゃんったら、最近ちっとも会ってくれないんだから」


 いきなりオネエ口調で喋り出した男性と、親しげに話すパドレー。


「すまないな。例の件で色々事後処理に追われていてね」


「聞いたわよ〜? 騎士団さえ手玉に取られた密輸団の連中を、あんたんとこの子達が倒したんですってね?」


「複雑な心境だよ。騎士団の面子は丸つぶれだが、あの子達の成長は素直に嬉しいからな」


「当然、その子達も騎士団に入れるつもりなんでしょ?」


「あの子らがそれを望んでいるからね。年齢的にもちょうどいいから、14歳になる来期に、入団試験を受けさせるつもりだ」


「その必要は無いわ」


「何⁉︎ どういう事だ?」


「その子達の実力は既に証明されてる。だから騎士団訓練校校長の権限において、その子達3人の入団試験を免除するわ!」


「職権乱用じゃないのか?」


「そんな事無いわよ。なんたって王国騎士団の団長であるあなたが直々に鍛えた子達なんでしょ? だったらその実力を疑う余地は無いわ」


「たまに指導している程度だがな」


「それに噂では、3人共凄く可愛いって言うじゃないの⁉︎ そんな子達に入団試験なんか受けさせて、万が一落ちでもしたら、アタシの楽しみが減るじゃないの〜!」


「やはり入団の話は考えさせてくれ!」


「いやん! 大丈夫よ〜! 別に直接手を出したりはしないわよ〜! ただ遠くから優しく愛でるだけよ〜!」


「全く……何故貴様のような変態が訓練校の校長で居られるのか、未だに疑問だよ」


「あなたと同じで、アイリス様に実力を認められてるからよ」


「そういえば、貴様の娘もそろそろ訓練校に入れる時期なんじゃないのか?」


「ええ。ウチの子も来期から入れるつもりよ。勿論アタシの特権で無条件にね」


「やはり職権乱用じゃないか!」


「違うわよ〜! メリアは子供の頃からアタシが鍛え続けて来たんだから、きっとあんたんとこの子達より強いわよ⁉︎」


 オークの言葉にイラッとするパドレー。


「そ、そんな訳無いだろう? 貴様のような変態の娘が、私の子供達より強いなどあり得ない!」


「なによ〜⁉︎ メリアはアタシの血を引いた、れっきとしたアタシの娘なんですからね! あんただって子供を作ればその強さは引き継がれるはずよ⁉︎」


「人の強さは、血筋だけで決まるものでは無いよ」


「だとしてもよ。あんた程の実力者が子供を残さないなんて勿体無いわよ! いい加減結婚して、子供作ったらどう?」


「私には大勢の子供達が居る。それだけで十分さ」


「ホント、あんたって人は……ねえ⁉︎ 何ならアタシがあんたの子供を産んであげましょうか⁉︎」


「いや、貴様は男だろう⁉︎」


「身体は男でも心は乙女なんだから、産もうと思えば産めるわよ!」


「産めるかっ‼︎」



 パドレーがオークと会ったその数日後、青い髪でポニーテールのひとりの美少女が、アイバーン達の居る孤児院に向かっていた。


「一体どんな人達だろう? 楽しみだ」


 その頃孤児院では、子供達が仕掛けたトラップをいかに早くすり抜けて目的地へ向かえるかの訓練、と称した障害物競走が行われていた。


「ジアちゃん、空飛ぶなんてズルーイ‼︎」


「能力の使用は自由なんだから、別に問題無いでしょ?」


「そうだけど〜。せっかく一杯トラップ仕掛けのにさ〜」


「心配無い。どうせ全部、ブレンが引っかかってくれるからな」


「いや、さすがに俺様でもバナナの皮には引っかからねーよ‼︎」


 そんな中先程の少女が、孤児院の前で庭木の手入れをしていたパドレーと出会う。


「こんにちは、パドレー様!」


「む? 君は?」


「ハイ。申し遅れました。私はメリア・ラウルスと申します」


「ラウルス? という事は、君がオークの?」


「ハイ。娘です。いつも父がお世話になっております」


(あのオークの娘にしては、何と礼儀正しい……)


「本日は父より預かった、騎士団養成学校への招待状を持って参りました」


「そうか。わざわざすまないね」


「いえ。私も入学前に一度、例の3人に会ってみたかったので……」


「そうか。ちょうど3人共中に居るから、是非会って行ってくれたまえ」


「ハイ。ありがとうございます!」


「ところでメリア君?」


「ハイ。何でしょう?」


「私は君と会ったのは初めての筈だが、何故私がパドレーだと分かったのかね? 他にも職員が居る可能性もあっただろうに?」


「あ〜、それはですね。父の部屋に、私や母上の写真の他に、パドレー様の写真も大量に貼られているからです」


「うむ。聞かなかった事にしよう」


 ゲンナリした顔のパドレーが、アイバーン達を呼びつける。


「アイバーン‼︎ ジア‼︎ ブレン‼︎ ちょっとこっちに来なさい‼︎」


 アイバーン達がその声に反応する。


「パパが呼んでる⁉︎」


「またブレンが何かやらかしたんじゃないの?」


「お前らも呼ばれてるだろうがっ⁉︎」


「行ってみよう」


「あっ! なら、誰が一番最初に玄関に辿り着けるか競走しようぜ! ヨーイドン!」


 アイバーンとジアの準備が整う前に、いきなり走り出すブレン。


「あーっ‼︎ ズルいわよブレン‼︎」


「あっ、待てブレン‼︎ 玄関の近くにもトラップが‼︎」


「へっ! その手に乗るかよ! あっちはコースから外れてる事ぐらい知ってるぜ!」


 先頭で走って行くブレンだったが、トラップ用に準備されていた大量のバナナの皮で足を滑らせ、豪快に廊下を滑空して行くブレン。


「うおおおー‼︎ 何でこんなとこにバナナの皮があああー⁉︎」


 その先の玄関には、パドレーと楽しそうに話をしているメリアが居た。


「ど、どいてくれええー‼︎」


「えっ⁉︎」


 その勢いのまま、メリアと激突するブレン。


「キャアア‼︎」


 遅れてやって来たアイバーンとジアが、ブレンの姿を見て呆れていた。


「ブレン……貴様という奴は、遂にそこまで落ちたか⁉︎」


「ずっと見損なってたけど、更に見損なったわ!」


 何とブレンは、メリアを押し倒したような格好となり、メリアの胸に顔を埋めていた。


「こ、こ、こ……この不埒者おおー‼︎」


 押し倒された状態のまま、グーパンチで思いっきりブレンの左頬を殴りつけるメリア。


「グハアアー‼︎」



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