第13話 無視されるのって一番辛いよね
「アイ君とブレンは下がってて! 雑魚はあたしが片付けるから!」
そう言って前に出るジア。
「待てジア! 今さっきひとり15人ずつ倒すって言っただろ?」
「アイバーンまで俺様を数に入れてねぇのかっ⁉︎」
「そうなんだけど、あたしよりもこの子達の方があいつらに怒ってるみたいだからさ。まずはこの子達にやらせてあげたいのよ」
ジアの言う通り、明らかに殺気立っている魔獣達。
「それに、この子達が暴れてる間近くに居たら、アイ君も危ないからさ」
「やっぱり俺様は数に入って無いのか……」
段々凹み始めるブレン。
「そうか……分かった。だけど、危ないと思ったらすぐ助けに入るからな?」
「うん。その時はよろしくね!」
そう言って近くに居たユニコーンの背に乗り、魔獣達を解放するジア。
「さあみんな‼︎ 相手が悪党なら遠慮する事は無いわ! おもいっきりやっちゃって‼︎」
「グオオオオー‼︎」
「ピイイイー‼︎」
「クエエエエー‼︎」
待ってましたと言わんばかりに、一斉に男達に襲いかかる魔獣達。
「ヒィッ‼︎」
魔獣達の気迫に後ずさりする男達。
「こんな下位ランクの魔獣共どうってことねぇ‼︎ 行け‼︎」
「くっ! うおおおー‼︎ グハァッ‼︎」
「オイ‼︎ ガハァッ‼︎」
何とか己を鼓舞して魔獣に立ち向かう男達であったが、ジアにより統率のとれた魔獣達に次々に倒されて行く男達。
「な、何だこいつら⁉︎ 並の魔獣の動きじゃねぇ⁉︎」
「こっちの攻撃が全部かわされちまう‼︎」
「バカなっ⁉︎ あのガキは召喚士じゃねぇ筈だ! 魔獣を操れる訳が……ギャアッ‼︎」
大勢居た男達は瞬く間に倒され、残すはかつてアイバーン達に暴行を加えた売人と仲介人を含めた数人のみとなった。
その男達の前に来たジアが、ユニコーンから降りる。
「みんな下がって! こいつらだけはあたしがやるわ!」
ジアの言葉を受け、スッと後ろに退がる魔獣達。
「ケッ! 魔獣共の後ろに隠れてりゃいいものを、のこのこ前に出て来やがって、バカがっ!」
ひとりの男がジアに斬りかかるが、男の剣をあっさりと左手の短剣で受け流し、右手の短剣で斬りつけるジア。
「グハァッ‼︎」
「ハイ次!」
「このガキ‼︎」
槍を構えて突進して来る男。
ふわりと飛んで男の頭を飛び越え背後に降り立ったジアが、振り向きざまに男の背中を斬りつける。
「ギャアッ‼︎」
「次!」
「随分やるようになったじゃねぇか⁉︎ なら、俺が相手してやるよ!」
兄貴分の男が前に出て来る。
「あんた! あの時あたしを後ろから蹴った奴よね?」
「ああ? そうだったか? そんな細けぇ事、いちいち覚えてねーよ!」
「そっ? ならあたしもあんたを瞬殺して、あんたの顔なんかすぐ忘れてやるわ」
「ガキがっ! やれるもんならやってみや、グホォ‼︎」
男が言い終わる前に、ジアの前蹴りが男のみぞおちに突き刺さっていた。
そのまま右足で男の顎を蹴り上げ、返す刀で男の後頭部にかかと落としを食らわせるジア。
「グハッ‼︎ ウグゥ‼︎」
「瞬殺するって言ったよね? あんたもあの時不意打ちしたんだから、文句無いでしょ?」
「グフゥ」
ジアの右足一本で瞬殺された男が、前のめりに倒れる。
「あんたも見覚えあるわね?」
次のターゲットを、2年前もっともジアを痛めつけた仲介人の男に定めたジア。
「ヘヘッ、強くなったじゃねぇかテメェ。どうだ? それだけの強さがあるなら、正式に俺に雇われてみねぇか?」
ジアの強さを目の当たりにした仲介人の男が、ジアの勧誘を始める。
「はあ? 何言ってんのあんた? あの時あんたがあたしに何をしたのか忘れたの?」
短剣を構えて、ジリジリと間合いを詰めるジア。
「ま、まあ待てよ‼︎ ああ、あの時は悪かったよ! 勿論あの時の慰謝料だって払うし、それでも納得行かねぇなら気の済むまで殴ってくれてもいい! な? だ、だからどうだ? 俺の専属のボディガードにならねぇか? ギャラはオメェの好きなだけやるぜ?」
立ち止まり、少し考えるジア。
「……そうね。じゃあ一発だけ殴らせてちょうだい」
「あ、ああいいぜ! ヘヘッ、じゃあ契約成立って事だな?」
魔装具をペンダントに戻したジアが、右拳を力一杯握りしめ大きく振りかぶる。
「絶対にお断りよ‼︎ このクソ野郎ー‼︎」
ジア渾身のコークスクリューブローが、男の左頬にめり込んだ。
「ぐぶぼびばべやあああー‼︎」
顔が歪む程の衝撃を受けた男が激しく回転しながら吹っ飛び、その勢いのまま壁に激突して気絶してしまう。
「ふー! やっとスッキリしたわ!」
その光景を見たアイバーンとブレンが青ざめていた。
「ジアは絶対に怒らせないようにしような、アイバーン」
「そうだな……」
そしていよいよ残すは、明らかに他の連中とは違う空気をまとった、3人の男だけとなった。
「ジア!」
その男達から漂うただならぬ気配を感じ取ったアイバーンとブレンが、ジアの元へとやって来る。
「その3人は並じゃない。僕も手伝うよ」
「アイ君⁉︎ ならアイ君にひとり任せるわ。残りの2人はあたしが片付ける!」
「いやどっちも3人なんだから、いい加減数に入れろよ‼︎」
未だ仲間外れのブレンであった。




