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ふりかえるぽんぽこ

——本日は、よろしくお願いします。

「忙しいところよく来てくれた。そう硬くならないでくれ、俺の方が緊張しちまうよ」

——すみません、目の前に大英雄がいると思うと、つい力んでしまいまして。

「はは、俺も随分偉くなったもんだ。ま、大した話はできねぇと思うが、なんでも聞いてくれ。俺もあの頃の話は楽しい。あ、喉乾いてないか?」

——ありがとうございます、いただきます……不思議な味のお茶ですね。

「うちのメイドがな、気に入ってんのよこれ。そうそう、後ろで控えてるアイツ。変だが美味いだろ。いや、年寄りの無駄話に付き合わせるのも悪い。何から話せばいい?」

——お気遣いもうしわけありません、では、出会ったところからお願い出来ますでしょうか。

「出会い、出会いな。うんうん。初めから順当にってわけだ。あンた、真面目な性質たちだろう。いいねいいね、あの時うちにもそんぐらい真面目な……まあいいや。時の主神は螺旋を進む。いやー、あの頃は随分暗い時代だった。神樹の種が見つからなくなって、それなのに神樹は普通に寿命がくれば枯れるもんだから、世界中あらゆる国や種族がピリピリしてたよ。神樹の役割は、今はちゃんと学校で教えてるのか?」

——はい、初等教育で習います。神樹は感情生命体が微量に発する瘴気を取り込んで、浄化するんですよね。

「はぁー、ちゃんと仕事してるじゃねえか神官ども。いや、時代は進んだねぇ。ああそう、俺たちの時代にそれを知っているのはごく少数だった。あの頃は神樹もそれなりに生えてて、種だってあちこちに落ちてたからな。俺たちが異変に気付いたのは、種が殆ど見つからなくなって神樹が減って、瘴気の量が格段に増え始めた頃だったのよ。そこでやっと協力を仰ぐ気になった古代種エンシェントたちが、俺たち近代種モダンに事情を教えてくれたってわけ。神樹がなければ困るのは、この世界の生命全体だからな。もちろんウチの国も協力することになった。騎士団の一部から、神樹の種捜索隊を用意した」

——それが、伝説の《第八師団探訪分隊》ですか。

「ケツが痒くなるな。伝説ってのは俺たちが死んでからでっち上げてくれ。残念ながら我が国は、古代種たちより楽観的だった。瘴気は増えているが、王都では大した被害もなかったし、人里近くの魔物はまだまだ可愛い方だったからな。というわけで、探訪隊に対する熱意はそんなでもなかったんだよ……あ、この辺明かすのはもーちょい後にしとけ?具体的には、現国王がいる間は多分検閲くらう。だから探訪隊には、大した人数は割かれなかった。最低限単独で行動できる程度の人数の、みすぼらしい小隊だったよ。主なメンバーは、もう調べてあるんじゃないか?」

——あ、はい。隊長リーダーと、神官殿クレリックと、斥候スカウト兵站コック衛生兵メディック……

「上等上等、全部言ってりゃ日が暮れる。探訪隊全部で60名、分隊は各15名程度のしょーもないチームが用意されたわけ。俺たちが属してたのは、ネネロア分隊。本国の南の方をうろちょろしてた。あれは……そうだな、ノーリ第三地区のあたりをうろついてた頃だった。世界は滅びに向かってるってのに、呑気に晴れた日だったよ。あの時出会ったあいつと、同じくらいな」

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