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奇術師、興味本位で追跡する

 すでに日は落ち星が見え始めたころ、エスはゆっくりと立ち上がった。


「さて、夜景も捨てがたいがそろそろ夕食だろう。戻らねばな…」


 エスはそのまま両手を広げ、屋根から飛び降りる。落下する最中、開いている窓へとエスは飛び込んだ。エスの体はまるで重力が壁に向かってかかっているかの様な軌道を描いていた。


「うわっ!」

「おや、リーナか。こんなところで奇遇だな」

「なんて所から入ってくるのよ!危ないじゃない!」


 飛び込んだ先の廊下では、もう少しタイミングがずれていたらぶつかっていたかもしれない、そんな距離にリーナは立っていた。


「やれやれ、私が蹴飛ばしたところでリーナなら怪我もせぬだろうに…」

「そういう問題じゃない!」


 思わず殴りかかるリーナを軽く躱しエスは周りを見る。


「おや、ここは書庫のある階か。こんなところでリーナは何をしていたのだ?」

「暇だったから、ちょっと書物を読んでただけよ」


 不貞腐れた表情で答えるリーナを、エスは苦笑いを浮かべ見ていた。


「とりあえず、食堂に行くか。ターニャの見舞いはその後だな」


 エスはリーナを伴い食堂へと移動する。すでに食堂では準備が整っており、チサトとアリスリーエル、マキトたちが話をしていた。


「ふむ、待たせてしまったかな?」

「いいえ、大丈夫ですよ。冷めないうちに食べましょう」


 エスの言葉にチサトが笑顔で答える。そのまま、他愛のない会話をしつつ、食事を済ませるとエスはターニャがいる部屋へと向かった。

 目的の部屋の前に辿り着いたエスはふと考える。


「ふむ、流石に唐突に開けては失礼か…」


 仕方がないと、エスは扉をノックする。しばらくして、サリアが扉を開いた。


「あら、エスさん。チサト様の言った通りお見舞いにきたのぉ?」

「ああ、ターニャは起きてるか?」

「起きてるぞ」


 部屋の奥からターニャの声が聞こえ、エスが覗くとベッドに座り元気そうなターニャの姿が見えた。エスが部屋へと入るとサリアがそのまま扉を閉める。


「どうだ?具合の方は」

「もう大丈夫だ」

「まあ、少し衰弱していたから明日くらいは療養しないといけないけどね」

「ベッドの上はつまんないんだけど…」


 サリアの言葉にターニャはそっぽを向く。


「どうせグアルディアが戻ってくるまでは暇なのだ。のんびりすればいい。それで、ターニャはどうするつもりだ?嫌なら契約の解除をするが…」

「このままでいい。どうせ『色欲』の悪魔のところへ乗り込むんだろ?」

「アリスのこともあるからそのつもりだ」

「なら、私はこのままがいい…。アリスのためにも私も戦いたい」

「そうか。まあ、不都合があったら言いたまえ、いつでも解除してやろう。サリアもな。では、お大事に」


 そう言って背を向け手を振りながら、エスは部屋を出て行った。


「ほんとに、何考えてんのかわかんないな…」

「ふふふ、今更よ。さぁ、今日は私もこの部屋で寝るから準備してくるわね」

「うん、わかったよ姉さん」

「それにしても…」


 部屋を出ようとしたサリアが足を止め、ターニャを見る。


「昔は、自分のことをぼくって言ってたのに、いつから私って言うようにしたのぉ?」

「言わないで!…せっかく気づかれないようにしてたのに…」


 自分の手で顔を覆ったターニャを見て、クスクスと笑うサリアだった。ターニャは、姉に揶揄われることがわかっていたから、なるべく一人称を使わないように話していたのだが、先程は気を抜いていたため口にしてしまい、そのことを後悔する。サリアが部屋を出ていったのを確認し、ターニャはベッドに横になるとうつ伏せになり枕に顔を埋めた。

 お見舞いを終え、エスは自分の部屋へと戻ると、いつもの日課にしている魔法の訓練をする。自分の適性が分かった今、手始めにと適性のある魔法を試し始めると、そのまま夜を明かした。

 翌朝、朝食を済ませたエスは教会の入口に来ていた。ターニャは今日一日は休養、サリアはその付き添い。そして、リーナは再び一人で書庫へと向かい、アリスリーエルは治療術の勉強ということで、エスは一人で街でも見て周ろうと思ったのだった。いざ街へ行こうと教会を出ようとしたところで声をかけられる。


「エスさん、どちらに行かれるのですか?」


 声のする方へと視線を移すと、チサトが立っていた。


「なに、暇なのでな。神都の街並みでも見て周ろうかと思ったのだ。なんだ、教会内で大人しくしていろと言いに来たのかね?」

「いいえ、そんなことは言いませんよ。街に行くのなら、これを渡そうと思ってきたのです」


 チサトはエスに近づくと、青白い名刺くらいの大きさをしたカードを手渡す。手にした感触から、何かしらの金属であることはわかった。


「これは?」

「昨日の報酬です。それを見せていただければ、飲食代など教会が代わりに支払います」

「ほう、便利なキャッシュカードみたいだな」

「そんなものです」


 エスはカードを懐へとしまうと街へと歩き出した。その後ろ姿をチサトは手を振り見送りながら、再び声をかける。


「そうそう、行く当てがないのでしたら、南西の商店街へと行ってみてください。もしかしたら、面白いものが見れるかもしれませんよ」


 それにエスは手を振り応えると教会を後にした。


「南西の商店街ね…。最高司祭様のオススメだ。とりあえず、行ってみるとするか」


 ひとまず、エスはチサトが言っていた商店街を目指すことにした。

 しばらく歩くと、目的の商店街らしき場所へと到着する。人が多く賑わっている大通りを歩きつつ、エスは周囲の店の商品を眺める。見たことない造形の置物やアクセサリー類、中には魔法というより呪いと言えるようなものが宿った物すら売られていた。


「呪物のようなものか?教会に止められたりしないのかアレは…」


 それらの商品を興味深げに眺めつつ歩いていると、かなり遠くにマキトが歩いているのが見えた。その横にはフードを被った小柄な人物が付き添っている。服装からフィリアであろうと予測はできたが、もう一人のエルフの少女が見当たらなかった。


「おや?勇者君はデート中かな。エルフっ娘はフラれたのか?」


 マキトたちの仲の良さはエスも理解していた。恋仲になっていたとしても不思議ではないとも思っていた。もしかしたら、どこかにエルフの少女が居るのではないかと周囲を見渡すと、マキトたちの後をつけているその姿を発見する。エルフの少女は、建物の影からマキトとフィリアを見ているようだった。


「なにをやっているのだ?」


 そう思ったエスの脳裏に、先程のチサトの言葉が思い出される。「面白いものが見れるかもしれない」、その面白いものとは、もしかしたらこのマキトたちの事かと思い、エスはどちらに接触するべきか思案する。


「ふむ、この場合は…。エルフっ娘に接触した方が面白そうだな」


 行き交う人々がエスの姿を隠すと、その一瞬でエスの姿はその場から消えていた。

 当のエルフの少女は、苛立ちながらも気配を殺し仲間であるマキトとフィリアの様子を見ていた。


「なによ!私に黙って二人だけで…」


 呟くように吐き捨て、マキトとフィリアを見るその眼には嫉妬心が見てとれた。


「お困りの様ですね?」

「誰!?ってこの声、奇術師!」


 突然声をかけられ動揺するエルフの少女は辺りを見渡すが、エスの姿は見つけられない。そして、少女は勢いよく上を見上げる。


「まさか、上?」

「残念!不正解!」

「ひゃぁ!」


 エスの声と同時にエルフの少女の近く、すぐ背後にあった樽の蓋部分が勢いよく押し上げられ、中からエスが腕を組んで現れる。その音に驚き、エルフの少女が声をあげ飛び跳ねた。


「フハハハハ、可愛らしい悲鳴が聞けた。うむ、満足だ!もう帰ってもいいな」

「喧しい!」


 声をあげ笑うエスにエルフの少女は怒りを露わにするが、慌ててその手でエスの口を押さえる。


「ってちょっと、バレるじゃない!」


 恐る恐る、大通りを覗き見るとフィリアが振り返ろうとしていたため咄嗟に頭をひっこめた。


「どうしたんだフィリア」

「ん、奇術師、声が聞こえた」

「気のせいだろ?行こうぜ」


 首を傾げたフィリアだったが、マキトと共に再び正面を向き歩き始めた。流石のフィリアでも、これだけの人がいる中から悪魔としての気配を消しているエスを察知することはできなかった。

 歩き出した二人の様子を確認しほっと息をつくエルフの少女の手をそっと退け、エスが小声で質問する。


「何故二人をつけているのかは、まぁだいたい察しはついてるのだが、なんでかな?」

「…私に黙って二人で出掛けたのよ」

「なんだ、やはりただのエルフっ娘の嫉妬だったか…」

「うるさいわね!」


 話しながらもチラチラとマキトたちの様子を窺うエルフの少女、エスは笑みを浮かべエルフの少女に提案する。


「私も一緒に勇者君たちをつけてもいいか?」

「なんでよ…」

「折角知り合った君たちが仲違いしているのを見るのは心苦しいのだよ」


 そう言って悲しむ素振りを見せるエスの姿に白々しさを感じつつも、どうせ追い返しても勝手についてくるだろうと頭を抱えるエルフの少女だった。


「ふむ、ここからでは何を話してるかわからんな」


 エルフの少女と共に壁から顔を出し様子を見ながらエスは呟く。そして、ポンッと手を叩いた。


「よし、近くまで行こう」

「ハァ!?何言ってんの?」

「こうすれば、周囲に【鑑定】でもかけなければバレることはないだろう?」


 エスはエルフの少女の頭に手を置くと、自分とエルフの少女に幻惑魔法を使い姿を見えないようにする。夜な夜な何度も練習してきた姿を消す魔法、それは探知できるほどの魔力を発することなく二人を包み込んだ。


「なんでこんな高度な魔法を簡単に使えるの…。理不尽だわ」

「まあまあ、エルフっ娘よ。見失う前に近くまで行くぞ」

「そのエルフっ娘て言うのやめてくれない?私にはアイリスって名前があるのよ!」

「わかったわかった、ほら行くぞエルフっ娘」

「こんのぉ…」


 拳を握り締め、唸るアイリスを他所にエスは堂々と大通りへ出るとマキトたちの後を追った。その後ろを慌ててアイリスが追う。エスは自分だけでなくアイリスの気配も消し、二人の会話と足音がマキトたちに聞こえないよう【強欲】の力を利用する。力の発動時の僅かな気配にマキトが辺りを見渡すが、すぐに消えてしまった気配からエスとアイリスの存在に気づくことはできなかった。


「確かに、エスの奴が近くにいるのかもしれないな…。ほんの一瞬だけ悪魔の気配がしたぞ」

「やっぱり」

「まあ、出歩いてるだけだろ?あいつは放っておいても大丈夫さ」


 頷くフィリアに微笑み、マキトは大通りを歩いていく。その僅か数メートル後ろをエスとアイリスが歩いているとは気づかずに…。


「仲良くしちゃって…」

「フィリア君の方が無口っぽいからか、会話という会話がないな。もっとこう、手でも握ってくれたら面白いのに」

「ふざけないで!」

「ほら、騒ぐと気づかれるぞ。一応対策をしたから、こちらの会話は聞こえないとは思うが用心したまえ。それにしても、流石にあの二人に気づかれないようにするのは骨が折れるな」

「なら、やめればいいじゃない」

「何を言っている。こんな面白そ…。ゴホンッ、仲間の心配を他所に楽し気にしている、その理由を知りたいではないか」

「面白そうって言いやがったな!」


 怒るアイリスを無視して、エスはマキトとフィリアの様子を窺う。時折、覗くショーウィンドウに並ぶ物を確認する限り、女性物を探していると予想できた。とある店の前でフィリアがショーウィンドウを覗くと、しばらくしてマキトを手招きで呼び、二人はその店の中へと入っていった。


「おや、店に入ったぞ」

「えっ!」


 拗ねたように俯きエスについていくだけだったため、店に入るところを見ていなかったアイリスが辺りを見る。確かに二人の姿がなかった。


「ちょっと、どこの店?」


 エスはそのまま歩いていき、二人が入った店の前に立つ。


「ここだ」

「ここは、宝飾店?」


 入口にある看板を見る限り、宝飾店であるのは間違いなかった。


「とりあえず私たちも入ってみるか」

「扉が開いて人がいなかったら流石に不審がられるんじゃない?」


 エスは少し考えながら、ショーウィンドウ越しに店内を見る。数人の客の姿が見え、マキトとフィリアが店員と何かを話している様子が見てとれた。二人の注意が別のところに向いていることを確認したエスは小さく頷く。


「ふむ、これなら…。あまり声を出すなよ」


 エスは素早く【強欲】と【奇術師】の力を切り替えると、徐にアイリスの腕を掴みそのまま扉へと体をぶつけた。


「えっ!?ちょっと!」


 アイリスの目の前で、エスの体は扉をすり抜け中へと入ってしまう。そして、腕をそのまま引っ張られ、アイリスの体もそのまま扉をすり抜けてしまった。素早く力の切り替えを行い流れるように壁抜けと気配を消す動作を行う。僅かに漏れた悪魔の気配も、別の事に集中していたせいか、マキトとフィリアは気づくことはなかった。

 店内へと入ったエスは、入口付近からマキトとフィリアの様子を窺う。二人は奥のカウンターらしき場所で店員と思われる女性といくつかのアクセサリーを見ながら話をしていた。


「ここからでは何を話しているか聞こえんな…」

「ちょっと!どこ行く気!?」


 アイリスを無視し、エスはマキトとフィリアの間から見下ろすように覗き込む。すぐ近くにいるにも関わらず、二人はエスの気配に気づいていなかった。あまりに近づけばマキトとフィリアに気づかれる恐れはあったものの、買い物に集中しているためか二人がエスに気づく様子はなかった。

 これは…、女性物のアクセサリーか?魔道具、といったわけではないな…。

 二人が見ていたのは女性物のアクセサリーであった。宝飾店らしく、着飾るためだけのアクセサリー類だ。


「どれがいいかな…。フィリアはどれがいいと思う?」

「これ、似合うと思う」


 フィリアの指差した如何にも貴族が好みそうな豪華なネックレスを見てマキトは考える。


「もっと、シンプルな方がいいんじゃないか?こっちの緑色のやつとか」


 マキトが選んだのはチェーン部分が蔦のようなデザインのペンダントで、トップには緑色の宝石が嵌っている。


「うぅん…」


 再び考え込んでしまったマキトを、エスは背後から興味深げに見ていた。

 今の会話から察するに、フィリアのために選んでいるとは思えんな。となると…。

 ここまでの会話は少し離れたところにいるアイリスには聞こえていない。アイリスの方へと視線を移すと、心配そうな表情でこちらを見つめ立っているのが見えた。

 やれやれ、ではここは私からサプライズだ!

 エスは姿を現すと同時に、マキトとフィリアの肩を叩く。


「うわぁっ!」

「ッ!?」

「やあ、お二人さん。こんなところで奇遇だな。誰かへのプレゼントでも探しているのかな?」


 二人がビクッと体を震わせたリアクションを楽しみつつ、自分の方へと向いたマキトとフィリアにエスは声をかける。突然、何もない空間から現れたエスを目の当たりにした店員の女性は、驚いた表情のまま固まってしまっていた。店内に数人いた他の客も、突然現れたことに驚きエスを見ていた。その背後では、驚いたアイリスがエスの服の裾を引っ張っている。


「何してんのよ!二人の邪魔しちゃダメじゃない!」


 アイリスの声はエスにしか聞こえていない。エスが自分の力を利用しマキトとフィリアに聞こえないようにしたままだったからだ。いくら服を引っ張ってもびくともしないことに苛立ちながらも、アイリスはエスを止めようとする。エスはそんなアイリスを無視し、さらに二人に告げる。


「どうかな?私から提案なのだが…。本人に聞いてみるというのはどうかね?」

「「「はぁ?」」」


 マキト、フィリア、アイリスの三人が同時に声をあげる中、エスは右手を上げると指を鳴らした。すると、エスの背後にいたアイリスの姿が現れる。その手はエスの服の裾を引っ張ったままだ。


「えっ!?」


 自分にかかっていた魔法が解けたことに気づいたアイリスがエスの服から手を放し声をあげる。


「ア、アイリス!」

「なんで、ここに?」


 突然現れたアイリスを見て、マキトとフィリアが驚く。マキトたち三人が顔を合わせ黙ってしまったので、エスがやれやれと首を振りながら説明を始めた。


「エルフっ娘は自分に黙って二人が逢引していると思ったのだよ。ダメじゃないか、仲間を悲しませては…」

「いや、だってそれは…」


 何かを言おうとしたマキトをエスは手で制してさらに続ける。


「だいたい事情は理解したが…。勇者君、サプライズのつもりだったのかもしれないが、気づかれては逆効果だぞ?」

「クッ…。ってなんで俺の考えを!?」

「いやぁ、タネ明かしをすると、さっきまで君らの会話は聞いていたからな。フハハハハハ」

「あの気配がした時からか!」


 顔を僅かに赤らめながらマキトがエスに殴りかかるが、エスは軽くそれを受け止める。いつもなら躱しているところだが、後ろにはアイリスがいるし、何より店内ということも考慮し受け止めることにした。


「落ちつきたまえ。まずはエルフっ娘の誤解を解いたらどうかな?」


 ハッとした表情でマキトはアイリスを見る。未だ理解していないアイリスは俯いて立っていた。マキトは頭を掻きながらアイリスへと話しかける。


「アイリス、すまなかった。驚かそうと思ってたんだけど、気づかれてるとは…」

「えっ?」

「もうじき誕生日だったろ?だからプレゼントをと思ってさ。女性物のアクセサリーなんて選んだことなかったから、フィリアにも意見を聞こうと思って。誤解させて悪かった。」

「そこは、ごめんなさい、だろ?」

「うるせぇよ!あんた、面白がってるだけだろ!」


 笑みを浮かべ口を挟んだエスに、マキトは怒って声をあげる。他の客が見ている手前、迂闊に力は使えないエスは再び殴りかかってきたマキトの拳を受け止める。


「やれやれ、そんなに照れなくてもいいだろう?仲間の女性にプレゼントを買おうと悩む勇者。うぅん、実に絵になるではないか。しかし、些かテンプレじみた展開だったな。本当に逢引だったほうが面白かっただろうに…」

「クソッ!なんでこいつに気づかれ…」


 エスに揶揄われ悪態をつくマキトだったが、次のエスの言葉に驚愕する。


「それにしても、こちらに行けば面白いものが見れると教えてくれたチサトには感謝だな」

「チサト様が!?」


 エスの口からチサトの名前が出て、アイリスが驚く。


「ふむ、そうか。私が干渉することまで見越して、教えてきたのだな…。はぁ、すべてチサトの掌の上だったか…」

「何言ってんだ?」

「まぁ、とりあえず三人仲良く相談したまえ、仲良くな」

「ちょっと待てよ!」

「そうそう、エルフっ娘。勇者君のオススメはそこの緑の宝石の嵌ったペンダントだそうだ」

「おいっ!」


 エスはマキトの制止も聞かず、手を振りながら店を出て行った。


「やれやれだ。チサトめ、勇者君たちのわだかまり解消に私を利用したな?まあ、実に面白いモノも見れたし良しとするか」


 店内を覗くと三人が仲良く並んでアクセサリーを選んでいるのが見えた。それをエスは苦笑いを浮かべながら眺めると、大通りを歩き始める。


「しかし、本当にやれやれだ。さて、次は何処へ向かおうかね」


 道沿いに並ぶ店を眺めながら、目的もなくエスは歩き始めた。


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