悪夢は続く
俺が何をしたって言うんだ……。
目が覚めると、俺はアリになっていた。
いや、正確には「なっているはず」だ。視界の低さ、植物より細い足、そして身体の使い方がなぜかわかる。
そもそもアリって戦えるのか?
最後のチャンスがアリって、どんな物語でも聞いたことないぞ。
あいつは神様なんかじゃない。絶対に悪魔だ。悪魔が俺に意地悪しているんだ。
……まあ、こんなことばかり言って他責にして逃げてきたから、こうなったのかもしれない。
そんなことを考えながら餌を探して山を散策していると、目の前に……黒い鎧を纏った四足の化け物が現れた。
……いや、アリだ。自分よりでかいアリだ。
なんか言ってる気がするけど、全く何を言ってるかわからない。
でも不思議と、敵意は感じない。直感で「ついてこい」と言っている気がした。
そのアリは踵を返し、勢いよく歩き出す。
俺も、とっさに踵を返し、勢いよく逃げ出す。
ふざけんな!あんなテカテカした厳ついアリに誰がついていくか!
着いて行ったら絶対奴隷だ。悪魔が俺に何か企んでるに違いない。
はあ……はあ……
距離は取れた。いや、実際には息は切れてない。でも気分だけは全力で疲れてる。
ぽすっ。
振り返ると、何かにぶつかった。
目の前には、とんでもないデカさの鋭利な鎌を持った生物――カマキリがいた。
デカっ!?なんでアリから逃げたらさらに強いカマキリに出会うんだよ!?
俺、運だけはいいんじゃなかったのかよ!?
くそ……このカマキリも何言ってるかわかんねぇ。
鎌を構え、こちらをにらみつける。
俺は逃げた。必死に、死に物狂いで逃げた。
あーもう無理だわ……
諦めよう。めんどくさい。目を閉じよう、楽になろう。
しかし、時は来ない。
いつもならあのクソ神様が半笑いで嫌味を言ってくるはずなのに……。
ああ、本当に俺は消滅したのか。
つまんない生き方をしてきた俺は、転生してもつまんない死に方をするんだな。
それにしても……臭い。なんだこの刺激臭は。
目を開けると、デカいアリが俺の前を立ち塞がっていた。




