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骨のクーデター

領主館。

 豪奢な椅子に腰掛けた領主は、青ざめた家臣を前に怒声を放っていた。


「五十の兵が戻らぬだと!? たかが蜘蛛一匹にだぞ!」


「し、しかし領主様……生き残りの話では、“筋肉騎士”が後方から討伐隊を襲ったとか……」


 その名を聞いた瞬間、領主の顔は凍り付いた。

 街の人気者――筋肉騎士の噂は、すでに子どもから老人にまで浸透している。

 兵の全滅も致命的だが、彼の存在が自分の権威を脅かす日が来たことの方が恐ろしかった。


「……よい。民には“討伐は順調、まもなく蜘蛛も討たれる”と触れ回れ! 余の威光に泥を塗らせるな」


 しかし、その欺瞞は長く続かなかった。


 ◆


 その頃、ダンジョン。

 敬人たちは火を囲み、次の一手を練っていた。


 狡猾なくもりんが糸で床に地図を描く。

「……領主館、見張りは夜に薄い。兵は討伐で減ってる。今なら……揺さぶれる」


 アリリマートが触角を鳴らし、興奮した声をあげる。

「ヤル? コロス? ツブス?」


 ジンザは静かに首を振った。

「正面から潰しても、我らは“怪物”としか映らん。民の支持を得ねばならん」


 その言葉に敬人は息を呑む。

「つまり……領主を人前で晒すってことか?」


 ムキムキスケルトンが拳を握りしめた。

「オレ、出ル。街ノ前デ、領主、ウソ、暴ク」


 天界の神が大爆笑する。

「出たー! 骨のクーデター! スケルトン領主爆誕イベントじゃん!」


 くもりんは冷ややかに告げる。

「……舞台は広場。群衆の前で領主を引きずり出す」


 こうして計画は動き出した。


 ◆


 翌朝、街の広場。

 ざわめく群衆の中、縄で縛られた領主が無様に引きずり出される。

 壇上に立ったジンザが声を張り上げた。


「この男こそ、民を食い物にし、討伐を口実に兵を使い潰した元凶だ!」


 民衆から怒号が飛ぶ。

「税を搾り取っておきながら……!」

「筋肉騎士さまが正しかったんだ!」


 必死に領主は叫ぶ。

「ち、違う! 私はこの街を守ろうと――!」


 だが、その言葉を遮るようにムキムキスケルトンが進み出る。

「ウソ、許サヌ。裁キ、下ス」


 その拳が振り下ろされ、領主は地に沈んだ。

 歓声と怒号が広場を揺るがす。


 ジンザは振り返り、群衆へ告げた。

「新たな領主を選ぶのは、民であるお前たちだ。筋肉騎士はこの街を守ると約束しよう」


 ムキムキスケルトンは胸を叩き、低く響く声を放った。

「悪意ニハ悪意ヲ。善意ニハ善意ヲ。ソレガ我ラノ掟ダ」


 その言葉に、民衆はどよめき、やがて歓声が広場を埋め尽くす。


 こうして旧領主は失脚し、住民の合意によって新たな統治体制が築かれた。

 ――名ばかりの領主はムキムキスケルトン。

 実際の政務はジンザが担い、その方針を陰から導くのは敬人。


 骨のクーデターは成功し、街は新しい時代を迎えたのだった。

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