出番が欲しいハコ
戦いのあと。
仲間たちは焚き火を囲み、戦果や新しく生まれたゴリゴリスケルトンの話で盛り上がっていた。
「すげえな……。まさか神様がイタズラであんな骨を作るとはな」
敬人が呆れたように言えば、ジンザもひげを撫でる。
「うむ……しかし戦力が増えるのは悪いことではない。ふふ、まるで軍勢じゃ」
その横で、くもりんが誇らしげに鋼糸を揺らす。
「罠に面白いくらいかかったな。これで街のやつは恐れててでこれまい。
アリリマートも地響きを立てて鼻を鳴らす。
「ツヨイ! オレ、ツヨイ! ゴリゴリ、ナカマ!」
――しかし。
少し離れた岩陰で、ぽつんとひとつの木箱が揺れていた。
中からかすれた声が漏れる。
「……俺…ぜんぜん出番なかった……」
そう、それはアリリマートの子分にして、変幻自在のミミック――コロスハコであった。
仲間たちが戦いや力の話で盛り上がる中、自分はほとんど話題にもならず、岩陰で小さくガタガタ震えている。
「くもりんは罠スゴイって言われる……。アリリマートはツヨイって褒められる……。スケルトンはカッコイイって人気……。俺…ただのハコ……」
コロスハコの声はだんだん涙声になっていった。
すると、巨体の影が近づいてくる。
アリリマートだった。
「ハコ。ナンデ、スネテル」
「……だって俺…役立たずだもん……」
アリリマートはしばらく考え込んでから、ごつん、と自分の大きな触角でコロスハコを軽く叩いた。
「コロスハコ。オマエ、イル。敵ノ剣、飲ンダ。オマエ、敵ノ矢、食ッタ。オマエ、ナイト、仲間、ケガスル」
「……あ」
「オマエ、役立タズ? ウソ。オマエ、オレノ子分。大事。仲間」
ミミックはしばらく黙っていたが、やがて小さな声で笑った。
「……へへ。俺ちょっとだけ……自慢してもいい?」
「ウン」
その夜。
仲間たちの輪に、ひとつの木箱がちょこんと混ざっていた。
口を大きく開けて、中にしまった剣を得意げに見せびらかしている。
「見て!敵の剣、丸呑みしたんだ! ねえ、すごいでしょ?」
みんなが笑い声をあげ、ジンザも「うむ、なかなかやるではないか」と頷いた。
コロスハコの蓋は、嬉しそうに何度もパカパカと開閉した。




